阪急2800系電車 廃車

阪急2800系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/15 13:37 UTC 版)

廃車

2800系は特急車として京阪間を走行し続けたため走行距離が格段に多く、制御装置の老朽化、冷房化改造の試作要素が強いことなど保守上の不利点が多いことから、早期の置換え対象となった[22]。制御器の更新も見送られ、冷房化の関係で冷房装置駆動用電動発電機を通常のものとは独立した形で搭載していたことも、廃車が早まる要因となった[11]

1988年6月、2817Fの7両編成と神戸線に転属していた2883が廃車となり、2000系以降の阪急の新系列高性能車で初の廃車となった(能勢電鉄譲渡車や事故廃車を除く)[23]。2817Fには1973年製造の最終増備車2897が含まれており、同車の製造から廃車までの期間は最短の15年9か月であった[23]

その後も8300系に代替(同時に3300系の7両編成化)される形で廃車が進み、1989年に2816F、1993年に2814Fと順次置換えが進められ、1995年には2813F、そして2812Fの廃車で7両編成グループの置換えが完了し、嵐山線用の2811F・2815Fの4両編成2本も同年中に廃車となり、編成としての本系列は消滅となった。

また、神戸線に転用され5000系などに組み込まれた2880形も、8000系の新製開始で余剰となった2000系のT車に順次置き換えられ、廃車となっていった。

なお、1995年の阪神・淡路大震災で被災した3109の代替として3022が3072Fから外された際、廃車待ち状態にあった2842が3022の補充用として活用され、主電動機や電動発電機を3000系用のものに交換の上で3072FにM'車として組み込まれ、今津線で短期間運用されていた[11]。2代目3022の竣工に伴い、2842は同年11月に廃車となっている。

本系列の廃車に際しては、程度の良い中古車を探していた富山地方鉄道から車体の譲渡が打診されていたが、これは同社が計画していた2扉クロスシート車への復元に必要な転換クロスシートの調達がネックとなった。丁度同時期に廃車が始まった京阪3000系(初代)の座席を流用するという案も出されたが、それならば現役の2扉クロスシート車であるそちらの方が改造に要する手間が少なく低コストで済み、またその状態も良好であったことから、同系列が譲渡されることとなり、本系列の譲渡は実現しなかった。

1995年以降も、5200系5203Fに中間車2両(2881・2887)と、2300系2305Fに中間車3両(2831・2841・2885)の計5両が残存し、2831・2841は制御器を撤去のうえM'車となった[22][注 15]。前者は8040形の増備により、1997年3月27日付けで廃車、後者は2001年(平成13年)3月24日の京都線ダイヤ改正を前に運用を離脱し、同年5月25日付で廃車となり、2800系は全廃となった[11]


注釈

  1. ^ 運用上特に区別されなかったため、1300系や710系のロングシート車編成も使用された。特に1307編成は2300系に先んじて3扉だった。また710系では、2両ずつクロス・ロングの混成となる場合と4両すべてロングシート(716編成と717編成の組み合わせ)となる場合もあった。さらに車両が不足した時には、当時すべてロングシート化されていた100形(P-6)までもが使われることもあった。
  2. ^ 日中の特急運用にロングシート車が使用される場合は、車内に折りたたみ式のパイプ椅子が積み込まれていた。
  3. ^ 所要時分では京都線特急が梅田 - 河原町間38分、京阪特急が淀屋橋 - 京阪三条間49分であるが、大阪のミナミと京都の繁華街の間を移動する場合、梅田での乗り換えを考慮するとほぼ京阪一択となった。
  4. ^ 大阪環状線~大阪~(阪急)梅田~河原町…(京阪)三条・四条~京橋~大阪環状線、大阪市営地下鉄~(京阪)淀屋橋~四条…(阪急)河原町~梅田~大阪市営地下鉄など。
  5. ^ ナニワ工機は1970年10月1日付で社名をアルナ工機に変更した。このため本系列では1971年12月20日以降竣工の2880形2891 - 2897がアルナ工機名義での製造となる。
  6. ^ のちに嵐山線に転用され4両編成化されたと同時に、2851・2855には再度D3NHA形コンプレッサーを搭載した。
  7. ^ 最末期の嵐山線運用時に組成。
  8. ^ この改造により、本系列と2300系の相互互換性は喪われた。
  9. ^ そのため、この差し替えが実施された場合は1両単位での車両入れ替えは行われず、必ず編成中間で2800形と2350形、あるいは2850形と2300形が運転台寄り妻面を突き合わせて連結されることになる。
  10. ^ これは編成全部をロングシート車で代走することを避け、クロスシート車サービスを少しでも多く乗客に提供することを目的として実施されたものである。
  11. ^ 2840番台の車両を製造する際、これを2820番台として製造する計画もあったが、形式(2830形)より若い番号を付けるのはどうかとの異論があり、結局2840番台として製造された。なお、組み込まれる編成に番号を合わせた例としては、2300系の2380形(2391 - 2396)が挙げられる
  12. ^ 上述のとおり編成中6両がシンドラー式空気ばね台車装着車であったため最後まで格下げされず、特急運用に充当されていた。
  13. ^ 神宝線は車体側に標識板を差し込む方式。京都線は引掛ける方式であった。
  14. ^ 編成の中に封じ込まれた2801~2807及び2861~2867は未改造のままだった。また先頭車のうち2816・2856はL字金具の先端に袋状のアダプタを取り付けた神宝線・旧京都線仕様の両用型が使われていた。
  15. ^ 早期の廃車を想定して応急処置的な内装更新が施工され、退色したアルミデコラを交換せずマホガニー木目調の壁紙を貼り付けた。同時期に嵐山線の2301F・2303F・2309Fにも施工されている。屋根肩部は白塗装の焼き付けを行った。

出典

  1. ^ a b c d e f g 山口益生『阪急電車』137頁。
  2. ^ 寺本光照『国鉄・JR 関西圏 近郊電車発達史』JTBパブリッシング、2014年、74頁。
  3. ^ 藤井信夫「京都線特急車両の記録」『鉄道ピクトリアル』2010年8月臨時増刊号、197頁。
  4. ^ 『日本の私鉄7 阪急』1990年、104頁。
  5. ^ a b c 篠原丞「阪急電鉄 現有車両プロフィール2010」『鉄道ピクトリアル』2010年8月臨時増刊号、241頁。
  6. ^ 鉄道ピクトリアル編集部「京都線特急車2800系の生涯」『鉄道ピクトリアル』2019年10月号、53頁。
  7. ^ a b c d e f g h i j k 山口益生『阪急電車』138頁。
  8. ^ a b c d e f g h i j 山口益生『阪急電車』140頁。
  9. ^ a b c 篠原丞「阪急クロスシート車の系譜3」『鉄道ファン』2004年3月号、131頁。
  10. ^ a b c d 山口益生『阪急電車』139頁。
  11. ^ a b c d e f g h i 山口益生『阪急電車』141頁。
  12. ^ a b c 篠原丞「阪急クロスシート車の系譜3」『鉄道ファン』2004年3月号、132頁。
  13. ^ 鉄道ピクトリアル編集部「京都線特急車2800系の生涯」『鉄道ピクトリアル』2019年10月号、54頁。
  14. ^ a b 篠原丞「阪急京都線特急史」『鉄道ピクトリアル』2019年10月号、29頁。
  15. ^ a b 篠原丞「阪急クロスシート車の系譜3」『鉄道ファン』2004年3月号、133頁。
  16. ^ a b c 鉄道ピクトリアル編集部「京都線特急車2800系の生涯」『鉄道ピクトリアル』2019年10月号、55頁。
  17. ^ 『日本の私鉄7 阪急』1990年、135頁。
  18. ^ 篠原丞「阪急2300系の55年」『鉄道ファン』2015年5月号、107頁。
  19. ^ “阪急電鉄 2800系、来月引退 26、27日に「さよなら運転」”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1995年7月26日) 
  20. ^ 『日本の私鉄 阪急』1998年、25頁。
  21. ^ a b 交友社鉄道ファン』1996年1月号 通巻417号 p.128
  22. ^ a b 篠原丞「阪急電鉄 現有車両プロフィール2010」『鉄道ピクトリアル』2010年8月臨時増刊号、242頁。
  23. ^ a b 阪急電鉄同好会「私鉄車両めぐり (161) 阪急電鉄」『鉄道ピクトリアル』1998年12月臨時増刊号、216頁。
  24. ^ 雲原の山中に阪急電車が- 尼崎の男性のセカンドハウス 両丹日日新聞、2007年1月2日
  25. ^ 1996年春の阪急レールウェイフェスティバルで、カットした前頭部を搬出する様子が紹介されていた。






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