阪急2800系電車 車種

阪急2800系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/15 13:37 UTC 版)

車種

本系列は基本となった2300系と同様に、以下の4形式で構成される。

  • 2800形(2801 - 2807、2811 - 2817)
梅田寄り制御電動車(Mc)。パンタグラフを2基搭載。
  • 2850形(2851 - 2857、2861 - 2867)
河原町寄り制御車(Tc)。2860番台は新製時、2830形への給電用にパンタグラフを2基搭載していた(1966年製の2867は当初からパンタグラフ未設置[7])。
  • 2830形(2831 - 2837、2841 - 2847)
中間電動車(M)。パンタグラフは搭載しない。2840番台は1968年製。
  • 2880形(2881 - 2887、2891 - 2897)
増結用に製造された付随車(T)。2880番台は1966年製、2890番台は1973年製で本形式唯一の新製冷房車。

形式番号は、新造計画が進む神宝線の本格的な昇圧即応車で形式を2500・2600とすることを考慮し、神戸線の2500に300を加えた2800系で先行した[7]。その後、昇圧即応車は製造両数が相当数増加する見通しから2500・2600番台は採用されず、3000系・3100系となっている[7]

編成

編成はMc-Tcの2両編成を最小単位としたが、当初Mc-Tcの2両編成とMc-M-Tcの3両編成を組み合わせた5両編成で登場し、乗客の増加に合わせて3両編成用T車、2両編成用M車、T車と徐々に1両ずつ増結し、1973年に全7編成が4両編成+4両編成による8両編成となっている。

そのため、実際にはMc-Tc+Mc-Tcの4両編成[注 7]以上で運用され、1971年から開始された後述の冷房改造[注 8]までは、事故検査等のやむを得ない場合に、2800形と2850形に挟まれた2・3・4両編成単位でシステムが同一の2300系編成と差し替えて[注 9]、同系との連結にて営業運転が実施されるケースがあった[注 10]

5両編成時代には梅田方に2両編成が来るように連結されており、2800形0番台車が先頭に立っていたが、1966年の6両編成化に際し、梅田駅の構造の影響で編成前部に乗客が集中する傾向があったことから、少しでも収容能力の向上を図るために編成を組み替えて、梅田からMc-Tc+Mc-T-M-TcをMc-T-M-Tc+Mc-Tcとする作業が実施された[10]。この結果2800形2810番台車が梅田方の先頭に立つようになり、トップナンバーである2801が先頭に立つことは以後なくなった。

なお、この編成組み替えに伴う増結順序の関係で、運転台付き車両と中間車の番号は4両単位で一致しておらず、例えば8両編成時代の第4編成の場合、梅田方から2814-2884-2834-2864+2804-2894-2844-2854となっていた[注 11]

5両編成 2801F - 2806F
2800
(2800)
2850
(2850)
2800
(2810)
2830
(2830)
2850
(2860)
Mc Tc Mc M Tpc
6両編成 2811F - 2817F(ユニット入替実施)
2800
(2810)
2880
(2880)
2830
(2830)
2850
(2860)
2800
(2800)
2850
(2850)
Mc T M Tc Mc Tc
7両編成 2811F - 2817F
2800
(2810)
2880
(2880)
2830
(2830)
2850
(2860)
2800
(2800)
2830
(2840)
2850
(2850)
Mc T M Tc Mc M Tc
8両編成 2811F - 2817F
2800
(2810)
2880
(2880)
2830
(2830)
2850
(2860)
2800
(2800)
2880
(2890)
2830
(2840)
2850
(2850)
Mc T M Tc Mc T M Tc
7両編成 2811F - 2817F(格下げ後)
2800
(2810)
2830
(2830)
2850
(2860)
2800
(2800)
2880
(2890)
2830
(2840)
2850
(2850)
Mc M Tc Mc T M Tc
4両編成 2811F・2815F(嵐山線)
2800
(2810)
2850
(2860)
2800
(2800)
2850
(2850)
Mc Tc Mc Tc
8両編成(さよなら運転)
2811 2861 2801 2851 2815 2865 2805 2855
Mc Tc Mc Tc Mc Tc Mc Tc
7両編成(2300系2305F組込)
2305 2831 2377 2327 2841 2885 2378
Mc M' Tc Mc M' T Tc

※編成各形式の括弧内は車両の番台を示す。また、2811Fなどの「F」はFormationの略記号で、編成を示す。つまり、この場合は「2811を先頭とする編成」を意味する。

製造

当初は2両+3両の5両編成で登場した。2両編成の0番台が大阪寄り、3両編成の10番台が京都寄りに連結された。

← 大阪
京都 →
竣工
Mc Tc Mc M Tc
2801 2851 2811 2831 2861 1964年5月[7]
2802 2852 2812 2832 2862 1964年7月[7]
2803 2853 2813 2833 2863 1964年9月[7]
2804 2854 2814 2834 2864 1965年7月[7]
2805 2855 2815 2835 2865 1965年7月[7]
2806 2856 2816 2836 2866 1965年7月[7]
2807 2857 2817 2837 2867 1966年7月[10]

1966年には6両編成化のための増結車が製造され、2810番台の編成に組み込まれた。この段階で、4両編成となった2810番台編成が大阪寄りに来るよう連結順序が変更された。

← 大阪
竣工
T
2881 1966年8月[10]
2882
2883
2887
2884 1966年10月[10]
2885
2886

1968年からは、2800番台編成用の2830形が増備され7両編成となった。形式番号より若い2820番台とする意見もあったが、最終的には30番台以降の2840番台となった[8]

← 大阪
竣工
M
2841 1968年11月[8]
2842
2843 1968年12月[8]
2844
2845
2846 1969年1月[8]
2847

1971年より付随車の最終増備が行われ、8両編成となった。全車とも冷房車である。

← 大阪
竣工
T
2891 1971年2月[11]
2892
2893 1972年8月[11]
2895
2896
2897
2894 1973年3月[11]

注釈

  1. ^ 運用上特に区別されなかったため、1300系や710系のロングシート車編成も使用された。特に1307編成は2300系に先んじて3扉だった。また710系では、2両ずつクロス・ロングの混成となる場合と4両すべてロングシート(716編成と717編成の組み合わせ)となる場合もあった。さらに車両が不足した時には、当時すべてロングシート化されていた100形(P-6)までもが使われることもあった。
  2. ^ 日中の特急運用にロングシート車が使用される場合は、車内に折りたたみ式のパイプ椅子が積み込まれていた。
  3. ^ 所要時分では京都線特急が梅田 - 河原町間38分、京阪特急が淀屋橋 - 京阪三条間49分であるが、大阪のミナミと京都の繁華街の間を移動する場合、梅田での乗り換えを考慮するとほぼ京阪一択となった。
  4. ^ 大阪環状線~大阪~(阪急)梅田~河原町…(京阪)三条・四条~京橋~大阪環状線、大阪市営地下鉄~(京阪)淀屋橋~四条…(阪急)河原町~梅田~大阪市営地下鉄など。
  5. ^ ナニワ工機は1970年10月1日付で社名をアルナ工機に変更した。このため本系列では1971年12月20日以降竣工の2880形2891 - 2897がアルナ工機名義での製造となる。
  6. ^ のちに嵐山線に転用され4両編成化されたと同時に、2851・2855には再度D3NHA形コンプレッサーを搭載した。
  7. ^ 最末期の嵐山線運用時に組成。
  8. ^ この改造により、本系列と2300系の相互互換性は喪われた。
  9. ^ そのため、この差し替えが実施された場合は1両単位での車両入れ替えは行われず、必ず編成中間で2800形と2350形、あるいは2850形と2300形が運転台寄り妻面を突き合わせて連結されることになる。
  10. ^ これは編成全部をロングシート車で代走することを避け、クロスシート車サービスを少しでも多く乗客に提供することを目的として実施されたものである。
  11. ^ 2840番台の車両を製造する際、これを2820番台として製造する計画もあったが、形式(2830形)より若い番号を付けるのはどうかとの異論があり、結局2840番台として製造された。なお、組み込まれる編成に番号を合わせた例としては、2300系の2380形(2391 - 2396)が挙げられる
  12. ^ 上述のとおり編成中6両がシンドラー式空気ばね台車装着車であったため最後まで格下げされず、特急運用に充当されていた。
  13. ^ 神宝線は車体側に標識板を差し込む方式。京都線は引掛ける方式であった。
  14. ^ 編成の中に封じ込まれた2801~2807及び2861~2867は未改造のままだった。また先頭車のうち2816・2856はL字金具の先端に袋状のアダプタを取り付けた神宝線・旧京都線仕様の両用型が使われていた。
  15. ^ 早期の廃車を想定して応急処置的な内装更新が施工され、退色したアルミデコラを交換せずマホガニー木目調の壁紙を貼り付けた。同時期に嵐山線の2301F・2303F・2309Fにも施工されている。屋根肩部は白塗装の焼き付けを行った。

出典

  1. ^ a b c d e f g 山口益生『阪急電車』137頁。
  2. ^ 寺本光照『国鉄・JR 関西圏 近郊電車発達史』JTBパブリッシング、2014年、74頁。
  3. ^ 藤井信夫「京都線特急車両の記録」『鉄道ピクトリアル』2010年8月臨時増刊号、197頁。
  4. ^ 『日本の私鉄7 阪急』1990年、104頁。
  5. ^ a b c 篠原丞「阪急電鉄 現有車両プロフィール2010」『鉄道ピクトリアル』2010年8月臨時増刊号、241頁。
  6. ^ 鉄道ピクトリアル編集部「京都線特急車2800系の生涯」『鉄道ピクトリアル』2019年10月号、53頁。
  7. ^ a b c d e f g h i j k 山口益生『阪急電車』138頁。
  8. ^ a b c d e f g h i j 山口益生『阪急電車』140頁。
  9. ^ a b c 篠原丞「阪急クロスシート車の系譜3」『鉄道ファン』2004年3月号、131頁。
  10. ^ a b c d 山口益生『阪急電車』139頁。
  11. ^ a b c d e f g h i 山口益生『阪急電車』141頁。
  12. ^ a b c 篠原丞「阪急クロスシート車の系譜3」『鉄道ファン』2004年3月号、132頁。
  13. ^ 鉄道ピクトリアル編集部「京都線特急車2800系の生涯」『鉄道ピクトリアル』2019年10月号、54頁。
  14. ^ a b 篠原丞「阪急京都線特急史」『鉄道ピクトリアル』2019年10月号、29頁。
  15. ^ a b 篠原丞「阪急クロスシート車の系譜3」『鉄道ファン』2004年3月号、133頁。
  16. ^ a b c 鉄道ピクトリアル編集部「京都線特急車2800系の生涯」『鉄道ピクトリアル』2019年10月号、55頁。
  17. ^ 『日本の私鉄7 阪急』1990年、135頁。
  18. ^ 篠原丞「阪急2300系の55年」『鉄道ファン』2015年5月号、107頁。
  19. ^ “阪急電鉄 2800系、来月引退 26、27日に「さよなら運転」”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 3. (1995年7月26日) 
  20. ^ 『日本の私鉄 阪急』1998年、25頁。
  21. ^ a b 交友社鉄道ファン』1996年1月号 通巻417号 p.128
  22. ^ a b 篠原丞「阪急電鉄 現有車両プロフィール2010」『鉄道ピクトリアル』2010年8月臨時増刊号、242頁。
  23. ^ a b 阪急電鉄同好会「私鉄車両めぐり (161) 阪急電鉄」『鉄道ピクトリアル』1998年12月臨時増刊号、216頁。
  24. ^ 雲原の山中に阪急電車が- 尼崎の男性のセカンドハウス 両丹日日新聞、2007年1月2日
  25. ^ 1996年春の阪急レールウェイフェスティバルで、カットした前頭部を搬出する様子が紹介されていた。






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