長生殿 (戯曲) 長生殿 (戯曲)の概要

長生殿 (戯曲)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/29 08:40 UTC 版)

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白居易の「長恨歌」、および陳鴻の「長恨歌伝」の筋立てを逐いつつ、史実と仮構をないまぜた構成で、文辞もすぐれ、孔尚任の「桃花扇」(とうかせん)とともに、清朝を代表する二大戯曲として並び称されている[1]

概要

洪昇(1645年-1704年)は銭塘の人で、北京国子監監生であった。『長生殿』ははじめ『沈香亭』、ついで『舞霓裳』、最後に現在の名前へと変わり、十数年を費やして完成したという[2]。1688年ごろに上演され、康熙帝は高く評価して俳優に銀20両を下賜した[3]。ところが1689年、孝懿仁皇后(トゥンギャ氏)の服喪期間中に上演したとして洪昇は不敬罪で告訴され[4]、監生の身分を失って故郷に帰った。

玄宗と楊貴妃に関する文学作品として『長恨歌』と陳鴻『長恨歌伝』がよく知られるが、それ以降も伝奇小説『楊太真外伝』や、白仁甫雑劇梧桐雨』などに発展した。『長生殿』はこれらの文学の集大成となっている。『長恨歌』をそのまま引いている箇所もあるが、たとえば馬嵬の老女が楊貴妃の足袋を拾う話は『唐国史補』に[5]李亀年が江南に逃がれた話は杜甫の詩に[6]、郭従謹という老人が玄宗を批判した話は『資治通鑑』に[7]、楊通幽という道士の話は『仙伝拾遺』などに見えている[8]。各齣の末には関係する唐詩の句を引く。

各幕の名[9]

  • 第一幕 口上
  • 第二幕 はじめて恩沢を承くるとき
  • 第三幕 権臣に賄賂をおくる
  • 第四幕 春眠
  • 第五幕 禊の遊び
  • 第六幕 陰の噂
  • 第七幕 恩寵
  • 第八幕 黒髪を献上する
  • 第九幕 再度のお召し
  • 第十幕 疑わしき讖
  • 第十一幕 天上の楽を聞く
  • 第十二幕 楽曲を作る
  • 第十三幕 権力の争奪
  • 第十四幕 楽曲を偸む
  • 第十五幕 茘枝を進貢する
  • 第十六幕 霓裳羽衣の舞
  • 第十七幕 巻狩
  • 第十八幕 夜の怨みごと
  • 第十九幕 御殿をさわがす
  • 第二十幕 密偵の報
  • 第二十一幕 浴室を覗く
  • 第二十二幕 密かなる誓い
  • 第二十三幕 潼関陥落
  • 第二十四幕 謀反の報に驚く
  • 第二十五幕 貴妃を葬する
  • 第二十六幕 麦飯を献上する
  • 第二十七幕 貴妃の妄執
  • 第二十八幕 賊を罵る
  • 第二十九幕 鈴の音を聞く
  • 第三十幕 貴妃の悔恨 
  • 第三十一幕 叛軍を討つ
  • 第三十二幕 貴妃の像に哭く
  • 第三十三幕 神に訴える
  • 第三十四幕 逆賊を刺す
  • 第三十五幕 長安を回復す
  • 第三十六幕 貴妃の襪を見る
  • 第三十七幕 貴妃登仙す
  • 第三十八幕 琵琶うた
  • 第三十九幕 追善供養
  • 第四十幕 仙界にて追憶す
  • 第四十一幕 月を観て貴妃を憶う
  • 第四十二幕 馬嵬駅でのお迎え
  • 第四十三幕 貴妃を改葬する
  • 第四十四幕 執り成し
  • 第四十五幕 雨の夜の夢
  • 第四十六幕 魂を覓む
  • 第四十七幕 願いを叶う
  • 第四十八幕 情を寄せる
  • 第四十九幕 消息を聴く
  • 第五十幕 重円

主な登場人物

  • 唐明皇(玄宗)- 唐の皇帝。
  • 高力士 - 宦官
  • 楊貴妃 - 唐明皇の寵姫。名は玉環、前世は蓬莱の玉妃。
  • 永新、念奴 - 楊貴妃の侍女。
  • 虢国夫人 - 楊貴妃の姉。夫は裴氏。
  • 楊国忠 - 楊貴妃の兄で右相。
  • 梅妃 - 江采蘋。唐明皇の寵姫で楊貴妃のライバル。
  • 李亀年 - 宮廷の楽人の長。
  • 安禄山 - 軍人。
  • 郭子儀 - 軍人。安禄山の軍と戦う。
  • 陳玄礼 - 軍人。右龍武将軍。
  • 王嬤嬤 - 馬嵬で酒屋を営む老女。楊貴妃の足袋を発見し、持ち帰って客寄せに使う。
  • 李謩 - 楽人。
  • 楊通幽 - 道士。

  1. ^ 『長生殿 玄宗・楊貴妃の恋愛譚』岩城秀夫訳注、平凡社、2004年10月。ISBN 4582807313
  2. ^ 『長生殿』例言
  3. ^ 王応奎『柳南随筆』巻6。「康熙丁卯・戊辰間、京師梨園子弟以内聚班為第一。時銭塘洪太学昉思(升)著『長生殿』伝奇初成、授内聚班演之。聖祖覧之称善、賜優人白金二十両、且向諸親王称之。」
  4. ^ 『康熙起居注』康熙28年10月10日に記事あり。また『長生殿』の尤侗や毛奇齢の序ほかにも見える
  5. ^ 唐国史補』巻上。「馬嵬店媼收得錦靿一隻」
  6. ^ 杜甫「江南逢李亀年
  7. ^ 『資治通鑑』巻218「有老父郭従謹進言曰(後略)」
  8. ^ 『太平広記』巻20・楊通幽
  9. ^ 『長生殿 玄宗・楊貴妃の恋愛譚』岩城秀夫訳注、平凡社、2004年10月。


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