酸と塩基
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/04 13:54 UTC 版)
ブレンステッド・ローリーの定義
アレニウスの定義における欠点を補うため、ブレンステッドとローリーは、アレニウスの定義において中心的な役割を果たしている、すなわちプロトン(陽子)をベースとして、酸と塩基の概念を以下のように再定義した:
よってブレンステッド・ローリーの定義における酸と塩基をそれぞれプロトン供与体、プロトン受容体ともいうMF2(p320)。なおブレンステッド・ローリーの定義では通常の分子である場合はもちろん、イオン化した分子に対しても酸や塩基が定義できる。
アレニウスの定義との関係
アレニウスによる酸の定義は、ブレンステッド・ローリーによる酸の定義における「他の物質」が水分子であり、しかもを水分子に渡す原因が解離である場合に相当するので、ブレンステッド・ローリーによる酸の定義はアレニウスによる酸の定義を含意する。
一方ブレンステッド・ローリーによる塩基の定義はアレニウスによる塩基の定義と見かけ上大幅に異なるが、アレニウスによる塩基の中に存在するが「他の物質」である反応相手の酸からを奪って水分子を生成すると考えれば、ブレンステッド・ローリーによる塩基の定義がアレニウスによる塩基の定義を含意する事が分かる。
欠点の解消
アレニウスの定義と違い、定義の範囲を水溶液に限定していないので、アレニウスの定義にあった「水溶液にしか定義できない」という欠点は解消されている。
また、ブレンステッド・ローリーの定義は、アレニウスの定義と違い、アンモニアが水に対して塩基になる事を説明できる。実際、アンモニアが水分子と反応して加水分解する過程
において、アンモニアは水分子からを奪っているので、ブレンステッド・ローリーの定義における塩基であるMF2(p321)。
定義の相対性
アレニウスの定義と違い、ブレンステッド・ローリーによる酸と塩基の定義は、反応相手となる「他の物質」の存在があって初めて意味を持つものである。したがってある物質Aが「他の物質」Xに対しては酸であるにもかかわらず、Xとは異なる「他の物質」Yに対しては塩基であるという事も起こりうる。例えば水は塩酸に対して塩基であるがMF2(p321)、アンモニアに対しては酸として働くMF2(p321)。
共役塩基と共役酸
酸(acid)を HA、塩基(base)を B とすると、ブレンステッド・ローリーによる酸塩基反応は一般に次の化学反応式で表されるMF2(p321):
この式は、左辺から右辺への反応と、右辺から左辺への反応がともに起こる反応(可逆反応)であることを意味する(この化学平衡の平衡定数から酸解離定数を定義する)。
そこで逆に、右辺から左辺への反応過程を見てみると、(ブレンステッド・ローリーの定義における)塩基と酸が反応して、HAとBとを生成していると解釈できる。
こうした理由により、を酸 HAの共役塩基(conjugate base)と呼び、を塩基Bの共役酸というMF2(p321)。
注釈
出典
- 1 酸と塩基とは
- 2 酸と塩基の概要
- 3 概要
- 4 アレニウスの定義
- 5 ブレンステッド・ローリーの定義
- 6 ルイスの定義
- 7 参考
- 8 強度
- 9 代表的な酸・塩基
酸と塩基と同じ種類の言葉
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