踊る大捜査線
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企画経緯
「織田裕二主演の刑事もの」という企画[5]。当時は『あぶない刑事』などのバディものが流行っていたが、亀山千広プロデューサーは、「それをやってもまがい物で勝てないし、刑事部屋が動くというと『太陽にほえろ』を越えられない」と考えた[5]。また当時、高村薫の『マークスの山』などの小説が話題になり、作品中、"管理官"という言葉をはじめ警視庁の中に色々な役職があり、初めて世の中の人がそれを知った。そうした流れの中で、組織論をやるのはどうかなと考え、脚本の君塚良一に伝えたら、君塚が自宅の書棚から笠原和夫の本を持って来て「『仁義なき戦い 代理戦争』って何も起こらず、ただ組のメンツをかけて役者同志が喋ってる。それだけ。それでいいんだ」と言った[5]。亀山は「警視庁のメンツと所轄のメンツ、それが本作のテーマ。だから私と君塚さん二人の間では『踊る』は半分『仁義なき戦い』なんです。ダメな署長は金子信雄さんです」などと述べている[5]。
ストーリー
元敏腕営業マンの青島俊作は脱サラして警察官となり、交番勤務を経てようやく念願の刑事課勤務となる。だが、青島の配属された警視庁湾岸署は「空き地署」と陰口される東京の僻地。配属直後に管内で事件が発生し、青島は意気込んで現場に向かうものの、「所轄刑事」として現場検証すらさせて貰えない。青島は強行犯係の大先輩で定年間際のベテラン刑事和久平八郎から所轄刑事の心得を叩き込まれる。それは青島が思い描いていた理想の刑事像と大きくかけ離れた地味で冴えないものだった。
管内で殺人事件が発生した場合には所轄署に「帳場が立ち」(捜査本部設置)、本庁刑事部の腕利きと共に国家公務員一種(キャリア)の管理官が送り込まれる。聞き込みや取り調べ、犯人確保といった事件捜査の主役はあくまで彼らの仕事だった。青島が初めて出会った警察官僚が室井慎次管理官だった。青島は室井の指名で運転手役をやらされ、徹底的に冷たくあしらわれる。室井は被害者の娘で通報者の柏木雪乃にも詰問口調で迫る。雪乃は父親を失ったショックで失語症に陥っていた。青島は室井の乱暴さに反感を覚え、雪乃を優しくフォローする。
一方、湾岸署は個性派揃い。俗物で昼行灯の神田 総一朗署長を筆頭に、署長の腰巾着秋山 春海副署長。そして、事なかれ主義の刑事課長袴田 健吾などなど、良くも悪くも青島にとっては営業マン時代とそう変わらぬ人間関係となる。同じ強行犯係には東大卒のキャリアで年齢は青島より下だが階級は遙かに上、親の七光りまで持つ真下正義が昇進試験の「腰掛け」として在籍中。そして盗犯係には小さい体に似合わず男勝りの迫力を持つ紅一点恩田すみれが居た。熱血が空回りすることの多い青島は和久、真下、すみれら仲間たちに励まされながら奮闘することになる。
やがて、すみれの過去が明らかになる。逮捕した犯人からの逆恨みでストーカー被害に遭い、体にも心にも大きな疵を抱えていた。「正しいことをしたければ偉くなれ」和久のその言葉は重い意味を含んでいた。青島は仲間たちや自分を頼ってくれる人々を守る為、強くなろうと胸に誓う。また、鉄面皮の冷血漢に見えた室井も秋田出身で東北大卒という異色のエリートで、優秀であるが故に身内に敵も多い孤独な男だった。室井は次第に青島を認め、目を掛けるようになるがそれはお互いにとって辛く険しい道程となってゆく。
雪乃は青島やすみれの励ましを受け、父親の事件を乗り越えて、日本で生活していた。ところがそんな彼女に麻薬密輸の重要参考人という嫌疑がかけられる。雪乃を本庁の手に渡してはならない。青島は咄嗟の機転で雪乃を口汚く侮辱し、怒った雪乃から平手打ちを食らう。「公務執行妨害による逮捕」その場合、勾留権は所轄署が優先される。真下やすみれの協力により「取り調べと称する時間稼ぎ」で雪乃を保護する一方、青島は和久と共に真犯人を追う。そこで和久が見せたのはグレーゾーンに生きる人間たちと繋がりを持ち、彼らから巧みに情報を引き出す所轄刑事ならではの裏技だった。青島は和久から継承者に指名される。二人の活躍により被疑者は確保され、本庁刑事に引き渡された。だが、本庁や警察上層部の間で青島は悪名高き存在となる。 雪乃は、この事件をきっかけに警察官を目指すようになる。
管内で発砲事件が発生。職質しようとした真下が銃撃され、重体に陥る。仲間の窮地に湾岸署は結束し全力をもって捜査に尽力する。そして、室井と青島のコンビにより事件は無事解決する。だが、室井は警備部に左遷され、青島は交番勤務に戻される。「市民に信頼されるお巡りさん」という自身の原点に立ち戻った青島はやがて再起することになる。
この物語は、異色の経歴と特技を持つ青島刑事を軸に、彼を取り巻く人々が時代の変化により起きる数々の難事件と対決する、壮大なドラマとなってゆくのだった。
当初の踊る大ラブストーリー計画
初期の構想段階では、すでに引退したベテラン刑事和久の娘をすみれ(監察医)に設定し、和久宅に居候する青島との恋愛も一案にあった[6]。その後は、青島と雪乃、室井とすみれの二本立てでの恋愛路線、青島と雪乃とすみれの三角関係も構想されている。実際、青島・雪乃間での恋愛に発展しそうな伏線や、すみれが青島に惹かれてゆく描写もちりばめられており、室井とすみれの二人きりのシーンも幾度かあった[7]。
この恋愛ドラマ路線は、第1話が放映され視聴率が出た時点で取りやめが決定された[8] が、これは亀山プロデューサーの判断であった[注 2] と、脚本家・君塚良一は著書「テレビ大捜査線」にて語っている。このとき第4話までは脱稿していたので第5話からのプロットが恋愛の要素を排したものに変更され、以後は警察ドラマとしての視点に重点を置いていくこととなり、そこで雪乃の設定に大幅な変更が加えられている(血液型まで変更された[注 3])。
登場人物
- 青島俊作
- 演 - 織田裕二
- 湾岸署刑事課強行犯係係長・警部補(テレビシリーズ時は巡査部長)。
- 室井慎次
- 演 - 柳葉敏郎
- 警察庁長官官房審議官・警視監(テレビシリーズ時は警視)。
- 恩田すみれ
- 演 - 深津絵里
- 湾岸署刑事課盗犯係主任・巡査部長。
- 真下正義
- 演 - ユースケ・サンタマリア
- 警視庁湾岸警察署署長・警視正[9](テレビシリーズ開始時は警部補、途中で昇任試験を受け警部に、その後交渉人真下正義で警視に)。テレビシリーズ開始時は研修配置で刑事課強行犯係に、係長や課長代理を経て捜査1課や交渉課(準備室)を経て警察庁長官官房付(『THE MOVIE 3』開始時)その後、湾岸警察署署長となった。
- 柏木雪乃 → 真下雪乃
- 演 - 水野美紀
- 湾岸署刑事課強行犯係・巡査部長(テレビシリーズ開始時は一般人)。第1話で父を殺され、湾岸署の人々とかかわるうちに警察官を志し、途中で採用試験を受け、合格する。『容疑者 室井慎次』で真下と結婚して以降は真下姓で、「THE MOVIE 3」から産休中。
- 和久平八郎
- 演 - いかりや長介
- 元湾岸署刑事課指導員(現役時は同署同課強行犯係・巡査長)。「THE MOVIE3」時点で故人。
注釈
- ^ いかりや長介『だめだこりゃ』p.200-201に、いかりやがプロデューサーの亀山に尋ねたときの会話が掲載されている。
- ^ (同クールにフジテレビが放映していた恋愛ドラマ(月曜9時枠「バージンロード」のこと)の視聴率が比較的よかったため、同じ恋愛ものをぶつけるのは足の引っ張り合いになりかねない)
- ^ テレビシリーズのオープニングのプロフィールがB型になっている。現在のプロフィールではA型。
- ^ この回では、犯人確保時に犯人がバタフライナイフを出すシーンがある。このナイフを使った殺傷事件が発生して以降は再放送ではこのシーンでモザイク処理が掛けられていたが、事件が風化した2012年現在は特に処理は掛けられていない
- ^ 木村多江に関しては映画本編に出ているものの看護師役である。
- ^ 事件発生は1997年3月17日18時59分
- ^ 後半の一部はその数か月後の時間軸である。
- ^ 冒頭で12月21日の字幕が出るため、少なくとも同日を含めた数日間である。
- ^ 『危機一髪』自体はこの他、ドビュッシー『海』の一節を用いるなど様々な有名曲メロディの集合体のような曲である。
- ^ 権利の関係から、VHSやDVD等では別の曲へ変更されている。
- ^ 演じているのは元プロ野球選手・近藤昭仁と女優の北沢典子の次女で女優の近藤典子である。
- ^ THE MOVIE2ではすみれが青島に公務災害の申請書を渡していた。
- ^ 実際の東京湾岸警察署は東京水上警察署の機能を引き継いだため、東京都区部の沿岸地域全体や東京港、河川なども管轄する中規模警察署である。
出典
- ^ 君塚良一『「踊る大捜査線」あの名台詞が書けたわけ』朝日新書307、朝日新聞出版、2011年7月、p. 82。 ISBN 978-4-0227-3407-5
- ^ https://news.yahoo.co.jp/articles/9e113db0ee5ca15cf78db1552b9b0d7448f14996 難色示していた織田裕二もGO『踊る大捜査線』続編報道にSNS歓喜「今度はどんな名言が?」 2024年2月9日
- ^ 令和の時代に「踊る大捜査線」トレンド入り 公式サイト「映画『室井慎次』」に衣替え でファンどよめきJcastニュース、2024年3月18日
- ^ 「映画『室井慎次』公式サイト」2024年3月18日
- ^ a b c d 大高宏雄「『TOKYO JOE』公開特別対談 1988年。そこから日本映画は変わった! 時代を変えたプロデューサー、亀山千広×奥山和由が語る『TOKYO JOE』、そして日本映画」『キネマ旬報』2008年12月下旬号、キネマ旬報社、61–68頁。
- ^ 「踊る大捜査線 COMPLETE DVD-BOX 付属特製ブックレット」p. 1。
- ^ 「踊る大捜査線 COMPLETE DVD-BOX 付属特製ブックレット」pp. 9-10。
- ^ 君塚良一「各話解説第4話」『踊る大捜査線 湾岸警察署事件簿』p. 126。
- ^ 『THE LAST TV サラリーマン刑事と最後の難事件』TV 警視正 階級章
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “ついにファイナル!『踊る大捜査線』第4弾映画化が決定”. ORICON NEWS. (2011年12月29日) 2017年7月28日閲覧。
- ^ a b c d e f 「ススめる!ぴあ|踊るクロニクル年表」ぴあ株式会社p. 24-25、第39巻第12号通巻1312号、2010年6月17日発行
- ^ a b “「踊る大捜査線」最後のスペシャルドラマ 21・3%の高視聴率”. スポニチ (2012年9月3日). 2012年11月25日閲覧。
- ^ 日本国内歴代総合興行収入ランキング 1位 - 100位http://www.eiga-ranking.com/boxoffice/japan/alltime/total/
- ^ 日本映画の歴代興行収入一覧
- ^ “2003年(平成15年)興収10億円以上番組” (PDF). 日本映画製作者連盟 (2004年). 2013年11月15日閲覧。
- ^ ““香取両さん”映画で復活!シリーズ化も決定”. スポニチ (2011年3月4日). 2012年11月25日閲覧。
- ^ 一般社団法人 日本映画製作者連盟 (2011年1月27日). “2010年度(平成22年)興収10億円以上番組(平成23年1月発表)[邦画]” (PDF). 2011年1月28日閲覧。
- ^ “「踊る大捜査線」完結編製作が決定 15年の歴史に幕”. 映画.com. (2011年12月29日) 2011年12月31日閲覧。
- ^ “2013年記者発表資料(2012年度統計)” (PDF). 日本映画製作者連盟. p. 2 (2013年1月). 2013年2月1日閲覧。
- ^ 「君塚良一による踊る大捜査線 THE MOVIE解説」『踊る大捜査線THE MOVIE シナリオガイドブック』p. 116
- ^ a b 「3日間」『踊る大捜査線THE MOVIE 2レインボーブリッジを封鎖せよ!完全調書 お台場連続多発事件特別捜査本部報告書』p. 56。
- ^ 「踊る大捜査線 COMPLETE DVD-BOX 付属特製ブックレット」pp. 5-6。
- ^ 『『明星 踊る大捜査線 ザ・湾岸ラーメン 海鮮キムチ コク塩味』 2010年6月21日(月) 新発売』2010年5月25日 。2012年11月24日閲覧。
- ^ 『明星 踊る大捜査線 ザ・湾岸ラーメン ワンタン麺 エビ塩味 2012年8月27日(月) 新発売』2012年7月31日 。2012年11月24日閲覧。
- ^ 日本映画専門チャンネル編『「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか』幻冬舎、2010年9月、p.61。 ISBN 978-4344981867
- ^ “第40回 松本 晃彦 氏”. Musicman-NET (2003年12月18日). 2021年8月28日閲覧。
- ^ スマホ時代に着信メロディ復活元年 GIGAエンタメロディ「着信メロディ15年間ランキング」発表 歴代No.1アーティストはEXILE、PRTIMES(株式会社フェイス・ワンダワークス)、2015年1月20日。
- ^ "El Cacabel"の演奏例 YouTube
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- ^ 実績紹介/クロス・ウェーブ府中
- ^ 映画『イノセンス』公式サイト
- ^ 世界が注目する映像クリエイター 押井守の世界
- ^ 『東京テレポート駅“発車ベル音”の変更について|インフォメーション一覧 2008年|りんかい線』 。2012年11月24日閲覧。
- ^ 『りんかい線 東京テレポート駅発車メロディーは、踊る大捜査線のテーマ曲です|りんかい線』 。2012年11月24日閲覧。
固有名詞の分類
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