足袋
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/12 09:51 UTC 版)
歴史
足袋の起源は奈良時代には存在したとされるシタウズ(襪)と呼ばれるもので、富裕階級が用いた指の股の分かれていない鹿皮の一枚物から作られた外履きである単皮(タンピ)とも呼ばれた[2]。この単皮(タンピ)が足袋(たび)の語源とされている[2]。『倭名類聚抄』には多鼻(タビ)として記載がある[2]。
室町時代から安土桃山時代にかけて特に紫色の革足袋が流行し、今日の歌舞伎、舞踊、狂言の色足袋に名残がみられる[2]。
江戸時代になっても革製の足袋が多かった。革足袋の材料は正徳ごろまで外来ものが多かった。中国渡来の物を小人革と呼び、革うすく肌こまかに柔らかであった。他にシャムから来たシャム革があったが、小人革よりケバ立ちが早く厚いため、下品とされた。享保以降は国産の革が使われたが、ケバ立ちやすく質が悪かった。
それまで一般的だった革足袋は寛永16年(1639年)の鎖国令や明暦3年(1657年)の明暦の大火で次第に不足していき、それにかわって特有の臭いがなく履き心地の良い木綿足袋が男女ともに普及した[2]。その初期において木綿足袋は長崎足袋とも呼ばれていた。これは肥前国名物であったためとされ、白木綿・無地染のほかに、箔絵の足袋や、染分け足袋もあったと言う。寛永ころの足袋はうねざしにした足袋が当時の流行だったとみえる(「東海道名所記」より)。うねざしとはさらし木綿に絹糸で刺したものである。うねざしの足袋は寛文から元禄に至るまでも流行したと見え、西鶴の「一代女」にもその記述がある。当時の足袋は一般に足首の部分を覆うほど筒が長かった。元禄ごろになって、木綿足袋は勢州山田・上州高崎が名産地とされ、特に高崎産の足袋は筒短く、高崎足袋と呼ばれた。
当時の女性の内職に、足袋さしがあり、また足袋用木綿生地も別で生産されていた。アヤ織の厚い木綿地「雲斎織」などが出現した。西鶴の「一代男」には「雲斎織の袋足袋」との記述がある。袋足袋とは糸をさしてない足袋のことである。雲斎織は当時の伊達者たちに愛用されていたらしく、一般には、うねざしの木綿足袋を履いていたようだ。その他、贅沢な繻子足袋なども一部に広がった。また小紋の足袋もあったと言う。
享保になって、はじめて筒の短い足袋が一般化し、これを半靴と称した。また徳川吉宗は鷹狩りに紺足袋を履いたので、それが武家風俗に入り、やがて町人も真似することになった。当時の色調はまちまちであったが、次第に白と紺に落ち着く傾向にあった。晒の袋足袋や薄柿色の足袋はわるい好みとされ、まだ柿染めのような足袋も見られた。そのほかに薄鼠、千種染めなども見られたという。宝暦年間に夏足袋ができて以降、一年中履かれるようになったという[3]。製法も次第に精巧になり、表の生地や底の生地の耐久力も増してきた。底は雲斎や刺底によって、木綿底より強くなったが、なお破損しやすいので、信州から産出した信州裏が専用にされた。のちには江戸で作られるようになったが、なお信州裏と呼ばれた。
足袋の構造
足袋は甲と底に分けられ、甲はさらに親指側の内甲と4本指が入る外甲に分かれている[2]。
足袋の留め具も紐、ボタン、こはぜと変化した[2]。
初期の足袋は足首部分に紐が縫い付けてあり、紐を結ぶことで脱げ落ちないように留めていた。さらに木綿製足袋の普及と同時に、紐止め式からボタン止め式へと足袋を留める方式は変化していった。
現在の足袋は「小鉤(こはぜ)」(甲馳、牙籤、甲鉤、骨板)と呼ばれる金属製の金具(ホック)を「受け糸」(または掛け糸)と呼ばれる糸のループに引っ掛けて留めるようになっているが、この方式は江戸後期から明治前期にかけて普及したものである。
- ^ a b c 意匠分類定義カード(B2) 特許庁
- ^ a b c d e f g h i j k l m n 奥平志づ江, 原ますみ「足袋について」『家政研究』第14巻、文教大学女子短期大学部家政科、1982年1月、9-12頁、NAID 120006420950。
- ^ 『風俗辞典』 東京堂出版、p.448 足袋
- ^ 「別珍たび出回る」『日本経済新聞』昭和25年12月1日3面
- ^ 郷土史研究講座: 第15号 1933
- ^ 阿仁マタギの狩猟用具 サイト:北秋田市
- ^ “毛足袋;スベ”. khirin-a.rekihaku.ac.jp. 国立歴史民俗博物館. 2024年3月4日閲覧。
- ^ 日本遺産 足袋蔵めぐり - 行田市観光協会. 2018年2月3日閲覧。
- ^ 経済産業省
- ^ 徳島県
- ^ “外反母趾の予防に冷えの解消…足袋のすごい健康効果!” (2017年12月3日). 2017年12月16日閲覧。
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