買米仕法 秋田藩

買米仕法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 21:47 UTC 版)

秋田藩

秋田藩では、宝暦5年(1755年)、天候不順から凶作を予想して、港からの米の移出を禁止するとともに、米や雑穀などを強制的に買い集めた。

仙北地方の穀倉地帯で有米調査や強制買い上げを行ない、その米を米座を通して配給するようにしたが、翌6年(1756年)2月には、久保田で玄米3斗が40匁から45匁に高騰した。この年は豊作であったが、米価の高騰によって諸物価も上昇し、諸人が迷惑するという理由で、物価の安定策として買米仕法を続行した。しかし、前年の米の買い入れに際して銀札を乱発したことが、米価高騰の理由でもあった[17]

天保4年(1833年)の天保の飢饉の際にも秋田藩は同様に有米調査と米の強制買い上げを実施した[17]。この買い上げは売却を目的としたものではなく、領民への食糧配給のためであったが、徴収に反発した農民たちによる北浦一揆が発生した[18]。小館役屋[注釈 7]に勤める郡方吟味役の次田五右衛門が、前北浦43ヵ村の肝煎を集めて「2月までは1人1日3合、3月から5月まで1人7合の見積りで米を保有させる」から1俵3貫300文で余剰米を藩が買い上げると説得した。しかし、米が思ったより集まらなかったため、郡方の役人を総入れ替えし、1人1日2合5勺、当分は3月までの保有米という条件で余剰米を買い上げるという藩庁の決定を言い渡した。農民たちは役人の言は信用できないと怒り、強訴におよんだ[19]。農民側の要求に対し、考慮し調査するので、後日改めて願い出るようにと告げ、農民の代表も引き下がった。一揆の情報は藩内に広がり、各地で小さな騒動が起き、その後も反発した農民たちによる一揆が発生した[20]


注釈

  1. ^ 土地制度の見直しによる、財政再建策。
  2. ^ 米の他領への密移出。
  3. ^ 180石積みから100石積みくらいの川船。
  4. ^ 藩が前金を渡して買い入れた米。
  5. ^ 買米本金を春から夏にかけて農民に貸し下げ、秋の収穫期に米を納めさせて決済するという方式だった。
  6. ^ 「御郡方御用留」。
  7. ^ 角館町
  8. ^ 「凶作石物高直散乱次第」阿刀田令造『郷土の飢饉もの』215-217頁。
  9. ^ 『明治三十八年宮城県凶荒誌』所収。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k 「買米仕法」『国史大辞典』第3巻 吉川弘文館、106頁。
  2. ^ 菊池勇夫『近世の飢饉』日本歴史叢書新装版、吉川弘文館、74頁。『宮城県の歴史』山川出版社、181頁、224頁。荒川秀俊『飢饉』教育社歴史新書、162頁。菊池勇夫『飢饉 飢えと食の日本史』集英社新書、123-124頁。河北新報社編集局編 『仙台藩ものがたり』河北新報社、125頁。
  3. ^ 『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、178頁、229頁。河北新報社編集局編 『仙台藩ものがたり』河北新報社、105頁。
  4. ^ 菊池勇夫・斎藤善之『講座 東北の歴史 第四巻 交流と環境』清文堂、72頁。『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、228頁、230頁。河北新報社編集局編 『仙台藩ものがたり』河北新報社、124-125頁。
  5. ^ 河北新報社編集局編 『仙台藩ものがたり』河北新報社、159頁。
  6. ^ a b c d e f g 「買米制」『宮城県百科事典』河北新報社、170頁。
  7. ^ 『宮城県の歴史』 山川出版社、206-207頁、224頁、231頁。『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、195頁、197頁。河北新報社編集局編 『仙台藩ものがたり』河北新報社、125頁。菊池勇夫『近世の飢饉』日本歴史叢書新装版、吉川弘文館、136-137頁。
  8. ^ 「買米の強化」『宮城県の歴史』 山川出版社、206-207頁。荒川秀俊『飢饉』教育社歴史新書、162頁。『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、195頁。
  9. ^ 『宮城県の歴史』 山川出版社、207頁。『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、37頁。
  10. ^ 『宮城県の歴史』山川出版社、231頁。菊池勇夫『飢饉 飢えと食の日本史』集英社新書、120-122頁。『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、196-197頁、249頁。大島晃一『シリーズ藩物語 一関藩』現代書館、157頁。
  11. ^ 菊池勇夫『近世の飢饉』日本歴史叢書新装版、吉川弘文館、137頁。『宮城県の歴史』山川出版社、202-203頁、224頁、226頁、231頁。菊池勇夫『飢饉 飢えと食の日本史』集英社新書、120-122頁。『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、196-197頁、246頁。河北新報社編集局編 『仙台藩ものがたり』河北新報社、191-192頁。
  12. ^ 『宮城県の歴史』山川出版社、231-232頁。菊池勇夫『飢饉 飢えと食の日本史』集英社新書、123-124頁。『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、37頁。
  13. ^ 『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、246頁。
  14. ^ 大島晃一『シリーズ藩物語 一関藩』現代書館、34頁。
  15. ^ 大島晃一『シリーズ藩物語 一関藩』現代書館、35頁、158頁、158-160頁。
  16. ^ 大島晃一『シリーズ藩物語 一関藩』現代書館、35頁。
  17. ^ a b 「買米仕法」『秋田大百科事典』秋田魁新報社、171頁。
  18. ^ 渡辺英夫『シリーズ藩物語 秋田藩』現代書館、142-143頁。『図説 秋田県の歴史』河出書房新社、176-177頁。『秋田県の歴史』山川出版社、272-273頁。
  19. ^ 『図説 秋田県の歴史』河出書房新社、176頁。
  20. ^ 『図説 秋田県の歴史』河出書房新社、177頁。『秋田県の歴史』山川出版社、272-273頁。
  21. ^ 『江戸時代の飢饉』雄山閣、97頁。
  22. ^ 河北新報社編集局編 『仙台藩ものがたり』河北新報社、125頁、193頁。
  23. ^ 菊池勇夫『近世の飢饉』日本歴史叢書新装版、吉川弘文館、142頁。同『飢饉 飢えと食の日本史』集英社新書、123頁。長谷川成一『弘前藩』吉川弘文館、115-116頁。
  24. ^ 『図説 宮城県の歴史』河出書房新社、248-249頁。
  25. ^ 荒川秀俊『飢饉』教育社歴史新書、162頁。菊池勇夫『飢饉 飢えと食の日本史』集英社新書、123-124頁、129頁。


「買米仕法」の続きの解説一覧




買米仕法と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  買米仕法のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「買米仕法」の関連用語

買米仕法のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



買米仕法のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの買米仕法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS