講談社BOX新人賞 講談社BOX新人賞の概要

講談社BOX新人賞

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/31 05:57 UTC 版)

2006年のレーベル創刊時より、講談社BOX新人賞“流水大賞”として全7回実施され、その後2009年4月より講談社BOX新人賞“Powers”として全18回実施されたが、第18回“Powers”(2013年11月末日締切、2014年2月結果発表)を最後に賞は廃止となった。その後は講談社文芸シリーズ出版部で主催されているメフィスト賞へ統合され、講談社ノベルスおよび講談社BOX向けの原稿を募集しているとされたが、講談社BOXは新レーベル・講談社タイガが創刊された2015年以降、新作刊行がほとんどなくなっている。

募集する作品のジャンルに指定はなく、すべての応募作を編集者が直接読むことと、枚数に上限がないことが特徴だった(下限は400字詰め原稿用紙換算350枚)。そのため、講談社文芸図書第三出版部系の新人賞には珍しく、ミステリ色が希薄で、青春小説、ホラー、SFなどが多く投稿されていた。また、受賞者はほとんどいなかったが、イラスト部門も存在していた。

なお、講談社BOX編集部が電子雑誌『BOX-AiR』(2011年2月創刊)で行っていたBOX-AiR新人賞は、講談社BOX新人賞(“流水大賞”および“Powers”)廃止後も継続するとされたが、こちらも2014年の第25回を最後に終了している。

概要

2006年11月の「講談社BOX」レーベル開始時より、清涼院流水の冠を付けた「講談社BOX新人賞“流水大賞”」という名称で実施された。流水大賞は、「小説部門」、「イラスト部門」、「批評・ノンフィクション部門」の3つがあり、2009年の年初まで全7回の募集が行われた。流水大賞には大賞・優秀賞・あしたの賞があった。

2009年4月、公式サイトで名称が「講談社BOX新人賞“Powers”」に変更されることが発表された。またその際、批評・ノンフィクション部門はなくなり、募集は「フィクション部門」と「イラスト部門」の2つになった。清涼院流水はこの年以降、講談社での執筆が途絶えているが、一方でこの年に枝分かれした星海社への執筆もなく、関係性は失われた。

小柳粒男(第1回受賞)、泉和良(第2回受賞)、針谷卓史三田文学新人賞受賞後、講談社BOXから単行本デビュー)の3人は“危険な新人”のキャッチフレーズで呼ばれていた。また、天原聖海黒乃翔(ともに第3回受賞者)、鏡征爾(第5回、初の大賞受賞者)の3人は“最強新人”と呼ばれており[1]、2009年5月には3人のデビュー単行本が同時に刊行された。

講談社BOX新人賞“Powers”は当初、受賞が“Powers”(パワーズ)・“Talents”(タレンツ)・“Stones”(ストーンズ)の3つに分かれていた。これは“流水大賞”の大賞・優秀賞・あしたの賞をほぼ踏襲したもので、“Powers”受賞作は「1年以内に書籍出版」、“Talents”受賞者は「担当編集とともに、書籍出版を目指す」、“Stones”受賞者は「担当編集とともに、“Powers”受賞を目指す」とされていた[2]。しかし、2011年10月末日締め切りの第11回講談社BOX新人賞“Powers”を最後に、TalentsとStonesは廃止となり、イラスト部門も廃止された。イラスト部門の受賞者は流水大賞時代も含め、5年間で1人(第3回流水大賞・あしたの賞受賞のN村)だけだった。

従来年4回の募集をしていたが、2013年に年3回の募集(3月末、7月末、11月末締切)に変更となった。しかし、2013年の募集分では受賞作は出ず、2014年4月、メフィスト賞との統合が発表された。

2015年には新レーベル・講談社タイガ創刊に伴い、講談社BOX作家陣の整理が行われたが、ミステリ色の希薄な賞だったことから、京都大学推理小説研究会出身の円居挽森川智喜を除き、大半の受賞作家は講談社に残らず、他社へ流出している。

受賞者一覧

「イラスト部門」、「批評・ノンフィクション部門」では大賞(Powers)・優秀賞(Talents)の受賞者は出なかった。あしたの賞/Stonesについては後述。

フィクション部門

初期の4作品は、『パンドラ』に全文掲載された後に単行本化された。

流水大賞作品は通常の銀のボックスだが、パワーズ以降は「Powers BOX」として、銀の箱ではなく、箱に開いた穴から表紙の一部が見える、ミステリーランドに似た装丁で刊行された。

講談社BOX新人賞“流水大賞”
回(発表年月) 受賞者 タイトル 刊行年月 ISBN 備考
第1回(2007年4月) 優秀賞 小柳粒男 くうそうノンフィク日和 2008年6月 ISBN 978-4-06-283666-1 Vol.1Aに全文掲載後、単行本化
第2回(8月) 優秀賞 泉和良 エレGY 2008年7月 ISBN 978-4-06-283668-5 Vol.1Bに全文掲載後、単行本化
優秀賞 Switch 2009年6月 ISBN 978-4-06-283716-3 Vol.2Aに全文掲載後、単行本化
第3回(2008年1月) 優秀賞 黒乃翔 マッドドリーム・アンド・マジカルワールド 2009年5月 ISBN 978-4-06-283714-9 Vol.2Bに全文掲載後、単行本化
優秀賞 天原聖海 ファイナリスト/M 2009年5月 ISBN 978-4-06-283707-1
第4回(5月) 大賞、優秀賞なし
第5回(8月) 大賞 鏡征爾 白の断章 2009年5月 ISBN 978-4-06-283708-8 鏡賢司『機械仕掛けの泡』改名改題
第6回(12月) 優秀賞 岩城裕明 ようこそ、ロバの目の世界へ。 2009年9月 ISBN 978-4-06-283727-9 第4回流水大賞「あしたの賞」受賞者
優秀賞 辻鷹佑 P.C.~ペアレンタル・コントロールド~
こんなに近くで
極彩色虚言泡沫絵巻
-
第7回(2009年2月) 大賞 至道流星 雷撃☆SSガール 2009年8月 ISBN 978-4-06-283722-4
大賞 杉山幌 R.I.P. レスト・イン・ピース 2009年10月 ISBN 978-4-06-283725-5 杉山輝征『World系NIPPON』改名改題
大賞 ウノサワスバル さよなら彦 2010年2月 ISBN 978-4-06-283740-8
講談社BOX新人賞“Powers”
回(発表年月) 受賞者 タイトル 刊行年月 ISBN 備考
第1回(2009年5月) Talents 井上スナ 僕の中の君が、君の中の僕に挨拶をする -
Talents 西陽武十 総理探偵 -
第2回(8月) Powers 新沢克海 コロージョンの夏 2010年11月 ISBN 978-4-06-283746-0 第1回Powers「Stones」受賞者
Powers 神世希 神戯―DEBUG PROGRAM― Operation Phantom Proof 2010年12月 ISBN 978-4-06-283747-7
第3回(11月) Talents 架神恭介 戦闘破壊学園ダンゲロス 2011年2月 ISBN 978-4-06-283759-0
Talents 紅蓮櫻 黒式セーラー - のちに千石サクラに改名
第4回(2010年2月) Powers 湊利記 マージナルワールド 2011年1月 ISBN 978-4-06-283760-6  
Talents 十町長雨 きれいな自殺手 - 第5回流水大賞「あしたの賞」受賞者
第5回(5月) Powers 森野樹 レッドアローズ 2011年3月 ISBN 978-4-06-283770-5 下剋上ボックス出身
Talents 千石サクラ ネジマキチョウチョ - のちに第1回BOX-AiR新人賞受賞
Talents 蜺河識夢 syojo -
第6回(8月) Talents 鳥居なごむ シャングリラ - のちにKAエスマ文庫境界の彼方』でデビュー
第7回(11月) Talents 木村強 狼の恋人 -  
Talents 四季剣一 僕と彼女と母の死体 -
第8回(2011年2月) Powers 円山まどか 自殺者の森 2011年6月 ISBN 978-4-06-283775-0
第9回(5月) Talents 手代木正太郎 柳生浪句剣(やぎゅうろっくけん) 2012年6月 ISBN 978-4-06-283804-7 『カランノケンシ』より改題
第10回(8月) Talents 靖子靖史 そよかぜキャットナップ 2012年4月 ISBN 978-4-06-283795-8 『どのこ』より改題
第11回(11月) Powers 管野ユウキ 昨日の蒼空(そら)、明日(あした)の銀翼(つばさ) 2012年8月 ISBN 978-4-06-283810-8 『昨日の空、明日の翼』より改題
Talents 沢田学人 碧眼のペテン師 -
第12回(2012年2月) Powers 歩祐作 ティーンズライフ 2012年9月 ISBN 978-4-06-283816-0
第13回(5月) Powers 浅倉秋成 ノワール・レヴナント 2012年12月 ISBN 978-4-06-283820-7
第14回(8月) Powers 織守きょうや 霊感検定 2013年1月 ISBN 978-4-06-283825-2
第15回(11月) Powers コタニ夕多 ステレオjct(ステレオジャンクション) 2013年6月 ISBN 978-4-06-283843-6
第16回(2013年5月) 該当作なし
第17回(9月) 該当作なし
第18回(2014年2月) 該当作なし
以降、講談社ノベルスの原稿を募集する「メフィスト賞」と統合
  • 岩城裕明(第6回流水大賞、優秀賞受賞) - 第4回流水大賞で「僕等が愛に笑いに勇気に希望に暴力に自殺に虚構に頼る理由」があしたの賞を受賞している。
  • 新沢克海(第2回Powers、Powers受賞) - 第1回Powersで、「ダンスモンキーの虚と実」がStonesを受賞している。
  • 十町長雨(第4回Powers、Talents受賞) - 第5回流水大賞で「しじみ蝶と侘助」があしたの賞を受賞している。
  • 森野樹(第5回Powers、Powers受賞) - 『パンドラ』Vol.3(2009年4月)の下剋上ボックスで短編を掲載している。

選考座談会

選考座談会は、当初は講談社BOXの文芸誌『パンドラ』に掲載された。第2回Powers(2009年8月発表)からは、公式サイトに掲載された。

(以下の応募総数には、小説以外にイラスト・批評等も含む)

流水大賞
  • 第1回 - 2007年4月発表。Vol.1Aに選考座談会。応募総数27。
  • 第2回 - 2007年8月発表。Vol.1Bに選考座談会。
  • 第3回 - 2008年1月発表。Vol.1Bに選考座談会。
  • 第4回 - 2008年5月発表。Vol.2Aに選考座談会。
  • 第5回 - 2008年8月発表。Vol.2Bに選考座談会。応募総数55。
  • 第6回 - 2008年12月発表。Vol.3に選考座談会。応募総数66。
  • 第7回 - 2009年2月発表。Vol.3に選考座談会。応募総数64。
Powers
  • 第1回 - 2009年5月発表。Vol.4に選考座談会。応募総数52。
  • 第2回 - 2009年8月発表。座談会・全作品講評は同年11月4日に公式サイト上に掲載。応募総数66(イラスト除く)。
  • 第3回 - 2009年11月30日発表。作品講評(受賞作品は除く)は翌日に、受賞作講評は翌年1月20日に公式サイト上に掲載。応募総数66(イラスト除く)。
  • 第4回 - 2010年2月26日発表。作品講評(受賞作品は除く)は同日に、受賞作講評は4月20日に公式サイト上に掲載。応募総数69(イラスト及び規定違反の作品除く)。
  • 第5回 - 2010年5月31日発表。作品講評(受賞作品は除く)は同日に、受賞作講評は7月20日に公式サイト上に掲載。応募総数54(イラスト及び規定違反の作品除く)。
  • 第6回 - 2010年8月31日発表。作品講評(受賞作品は除く)は同日に公式サイト上に掲載。応募総数78(イラストを除く)。
  • 第7回 - 2010年11月30日発表。作品講評(受賞作品は除く)は翌日に公式サイト上に掲載。応募総数78(イラスト及び規定違反の作品除く)。
  • 第8回 - 2011年2月28日発表。作品講評(受賞作品は除く)は同日に公式サイト上に掲載。応募総数76(イラストを除く)。
  • 第9回 - 2011年5月31日発表。作品講評(受賞作品は除く)は同日に公式サイト上に掲載。応募総数87(イラストを除く)。
  • 第10回 - 2011年8月31日発表。応募総数109(イラストを除く)。
  • 第11回 - 2011年11月30日発表。応募総数73(イラストを除く)。
  • 第12回 - 2012年2月29日発表・応募総数118。
  • 第13回 - 2012年5月31日発表。
  • 第14回 - 2012年8月31日発表。

  1. ^ メールマガジン「ファンタスティック講談社BOX」vol.83(2009年5月7日配信)や新刊の折り込みチラシで3人は“最強新人”と称されている。ただし、それ以前の同メールマガジンvol.81(同年4月17日配信)の段階では、3人は“脅威の新人”と呼ばれていた。
  2. ^ 公式サイトおよび『パンドラ』に掲載されている募集要項参照
  3. ^ この作品は、目次や冒頭では題名が伏されている。ここでは反転文字で示す。


「講談社BOX新人賞」の続きの解説一覧




固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「講談社BOX新人賞」の関連用語

講談社BOX新人賞のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



講談社BOX新人賞のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの講談社BOX新人賞 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS