血圧計 血圧計の概要

血圧計

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/02 09:04 UTC 版)

ヒトの血圧は、被測定者の精神状態や健康状態の影響を受け変動するので、頻繁に測定することが望ましい。心理的影響により、医療機関で測定した値と家庭や職場で測定した値とが、大きく異なる場合もある(白衣高血圧仮面高血圧[1]。24時間血圧計を使用すれば、1日の変動を検査し記録できる。

歴史

血圧、特に動脈血圧の存在は、古くから知られていた。歴史上最初の血圧が計測された時は、頚動脈に管を差し込み、血液が上昇する高さを直接計測した。これは血液循環説が発表されてからほぼ百年後の1727年、イギリス帝国の医師スティーヴン・ヘールズによって行われた[2]。 1828年にはフランスの医師ジャン・ポアズイユが、血管に適用したカテーテルと呼ばれる細い管を介して水銀柱に圧力を導き、人間の血圧を測定した[2]

1876年にドイツ帝国の医師ザムエル・フォン・バッシュが人体を傷つけずに測定できる血圧測定装置を設計したが、カフを組み合わせた現代的な水銀血圧計は、イタリアの医師シピオーネ・リヴァロッチが1896年に発明した[2]。しかし当時の測定方法では、心臓が収縮するときの拍動しか測定できない欠点があった。1905年、ロシア帝国軍医ニコライ・コロトコフコロトコフ音を発見し、聴診器と血圧計を組み合わせた血圧の測定方式の基礎理論(コロトコフ音法)を提起した[3]

日本においては、1960年代半ばから後述する間接法(非侵襲式)の血圧計を作ろうという動きがあったものの、コロトコフ音を自動認識するための回路設計などに苦戦した[3]。1966年には日本光電工業から非観血自動血圧計「ナースコーダ MBM-50」が発売されたものの、総重量は打点記録器込みで70kgと大がかりだったうえ、高価だったため、あまり普及しなかった[3]。また、1970年代にはコロトコフ音の代わりに音波を用いた血圧計も登場したが、こちらは拡張期血圧の測定が不得意だったうえ、商品寿命が短かったため、あまり普及しなかった[3]。その後、振動法と呼ばれる別の計測手法の登場により自動血圧計が実現し、家庭用の機種も登場した[3]。1980年代後半には、オムロンから指先で測るタイプの血圧計が登場して注目を集めたが、不正確さが指摘され、最終的には衰退した[注 1]

種類

水銀式の血圧計。日本では水俣条約の発効に伴い2021年1月をもって製造および輸出入が禁止され、その後も利用は可能だが早期の処分が適当として、環境省から回収のお願いが出されている[5]
アネロイド式の血圧計。

血圧計は、血管内にセンサーを挿入して動脈圧を直接測定する方式(直接法、侵襲式または観血式ともいう)のものと、間接的に測定する方式(間接法、非侵襲式または非観血式ともいう)のものに大別される。

前者は、手術室や集中治療室の患者に使われる。後者が一般的に普及しているものでタイプとしては、病院診療所で診察や検査の際に使われる手動式(送気球で加圧)のものと、家庭用や病院の待合室に設置されている自動式(機械の自動制御で加圧)のものがある。

日本工業規格(JIS)では、直接法に関し「血圧計 JIS T 4203:1990」、間接法に関し「非観血式電子血圧計JIS T 1115:2005」が制定されている。

構造

本項では、日常的に使用する間接法(非侵襲式)の血圧計の構造について記す。

血圧を感知するカフ(腕に巻きつけるベルト。環状帯、マンシェットともいう)及び、表示部からなる。表示部は古くから水銀柱の高さが用いられ、その歴史的経緯及び国際単位系に移行した場合に、数値が激変し混乱が大きいため、血圧に関しては国際単位系の例外として、mmHgで表される。

カフ

現在、ヒトの血圧を測定する場合は、主に上腕にカフと呼ばれる袋状のベルトを巻き付けて上腕動脈の血圧を測定する。同様にして、前腕・大腿部の動脈圧を測定する場合もある。「カフ」とは、カフス(袖口)を語源とした単称で医療機関でも「カフ」と呼ばれている。

表示部

電源を必要としない表示装置としては、水銀柱(細かい値まで測定可能)またはアネロイド式気圧計のように、時計状の文字盤を使用するもので、主に往診の際などの携行用に用いられる)の圧力計が用いられる。歴史的に最小目盛りは2mmHgである。


注釈

  1. ^ この血圧計を取り上げたテレビ番組『神田伯山のこれがわが社の黒歴史』(2023年8月30日放送)によると、オムロンに寄せられた苦情の大半は間違った使い方(例:計測中に動き回る)に由来しており、メディアが利便性を強調するあまり適切な使用方法を周知していなかったことが背景にあったという[4]
  2. ^ 空気が混じってしまった場合、水銀は粘性はあまり高くないので、軽くショックを与えれば、それを上部に逃がすことが可能である。

出典

  1. ^ 今井潤『血圧をいかに測るか :日米欧血圧測定ガイドライン集』ライフサイエンス出版〈東北大学21世紀COEプログラム「CRESCENDO」叢書〉、2005年。ISBN 4897752132全国書誌番号:21174625https://id.ndl.go.jp/bib/000008401582 
  2. ^ a b c アン・ルーニー『医学は歴史をどう変えてきたか:古代の癒やしから近代医学の奇跡まで』立木勝訳 東京書籍 2014年 ISBN 9784487808748 pp.92-93.
  3. ^ a b c d e 久保田博南「特集< 血圧計のすべて > 血圧測定の歴史」『医療機器学』第80巻第6号、日本医療機器学会、2010年、615-621頁、CRID 1390001205296229504doi:10.4286/jjmi.80.615ISSN 18824978NAID 130004696009 
  4. ^ "オムロン ヘルスケア 苦闘!指式血圧計". 神田伯山のこれがわが社の黒歴史. Episode 9. 30 August 2023. 2023年8月31日閲覧
  5. ^ 水銀血圧計等の回収促進に向けた御協力について(依頼) 環境省環境再生・資源循環局
  6. ^ Publishing, Harvard Health. “Arm yourself to get better blood pressure readings”. Harvard Health. 2021年4月16日閲覧。
  7. ^ a b c クエスチョン・バンク 医師国家試験問題解説2016 vol.7 必修問題 Z-2 P19 2015年7月9日発売 メディックメディア社 ISBN 978-4896325898
  8. ^ Shirasaki, Osamu (2010). “Roles and Advancements of Blood Pressure Monitors in Cardiovascular Medicine [循環器分野における血圧計の役割と進化]”. Iryou kikigaku (The Japanese journal of medical instrumentation) (Japanese Society of Medical Instrumentation) 80 (6): 622-631. doi:10.4286/jjmi.80.622. ISSN 18824978. https://doi.org/10.4286/jjmi.80.622. 
    (日本語版)白崎修「循環器分野における血圧計の役割と進化」『医療機器学』第80巻第6号、2010年、622-631頁、doi:10.4286/jjmi.80.622 
  9. ^ 大塚邦明「循環器 24時間血圧計(特集 内科医が知っておくべき最新医療機器(1))『診断と治療』 100(1), 53-57, 2012-01-00


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