福岡市地下鉄空港線 延伸構想

福岡市地下鉄空港線

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/19 04:30 UTC 版)

延伸構想

空港線については、福岡空港駅から東方に延伸し、空港の北東側にあるJR九州篠栗線福北ゆたか線)の原町駅ないし長者原駅から同線への直通運転を実施する構想がある。これが実現すると同区間の所要時間が15 - 23分短縮され、原町駅や長者原駅のある粕屋町、および筑豊本線(福北ゆたか線)の直方駅まで空港への直行列車が運転される飯塚市直方市など筑豊地域からは福岡空港や天神地区、さらには筑肥線沿線への利便性が向上する。ただし、福北ゆたか線は交流電化のため現状の設備のままでは直流電化の福岡市地下鉄や筑肥線とは直通できず、単線であるため線路容量も十分とは言えない。

同構想については2021年令和3年)に福岡県が基礎調査を実施し、2022年(令和4年)に結果が公表された。途中駅の有無も含めた両駅接続の4ルート案について、以下の前提条件の下で建設費や需要予測、開業後の採算をそれぞれ予測した[27]

主な建設条件

  • 基礎資料は「日本の地域別将来推計人口(平成30年推計)」と「第5回北部九州圏パーソントリップ調査」
  • 準備期間を約9年、建設期間を約10年とし、2040年度に開業
  • 収支採算性は開業後40年間で試算
  • 接続区間(新線部分)の運賃は200円(JR九州並み)、300円(福岡市地下鉄並み)、400円(西鉄バス並み)で算出
  • 国・地方・事業主体の費用負担割合は2021年時点の制度に基づき試算(国は総額の3分の1を負担)
  • 運行本数については接続区間(新線部分)を1日75往復[注釈 6]とし、福北ゆたか線への直通運転は下記の2ケースを想定:
    • ケース1:現在の福北ゆたか線の運転容量上限まで運転本数を増発し、1日45.5往復が姪浜駅 - 直方駅を直通、29.5往復が姪浜駅 - 長者原駅を運転(原町駅接続でも長者原駅まで)
    • ケース2:現在の福北ゆたか線の運転本数を現状維持とし、1日29.5往復が姪浜駅 - 直方駅を直通、45.5往復が姪浜駅 - 長者原駅を運転(同上)
4ルートにおける調査結果
福北ゆたか線接続駅 長者原駅 原町駅
ルート案 Aルート Bルート Cルート Dルート
概要 長者原駅最短距離 長者原駅中間駅設置 原町駅最短距離 原町駅中間駅設置
距離 3.7 km 6.3 km 3.2 km 6.4 km
接続駅 長者原駅 長者原駅 原町駅 原町駅
途中駅数 0駅 2駅 0駅 2駅
所要時間

(長者原駅 - 空港駅)

4分

(23分短縮)

11分

(16分短縮)

7分

(20分短縮)

12分

(15分短縮)

概算事業費(億円) 870 1,480 720 1,420
国/地方/事業主体

費用負担額(億円)

290/200/380 490/390/600 240/150/330 470/370/580
ケース1需要予測

(人/日・往復)

15.200 - 16,500 15.700 - 17,000 14,400 - 15,700 15,300 - 16,700
同収支採算性(億円) ▲560 - ▲200 ▲1,080 - ▲680 ▲470 - ▲150 ▲1,060 - ▲660
ケース2需要予測

(人/日・往復)

12.900 - 14,000 13.500 - 14,700 12.100 - 13,300 13.200 - 14,500
同収支採算性(億円) ▲640 - ▲320 ▲1,160 - ▲830 ▲550 - ▲260 ▲1,140 - ▲810
建設投資の波及効果

(億円)

1,810

(9,800人)

3,020

(17,300人)

1,520

(7,800人)

2,900

(16,600人)

住宅等建設投資の波及効果

(億円)

- 510

(3,300人)

- 510

(3,300人)

新駅整備に伴う波及効果

(億円)

- 19 - 19

以上の通り、4案ともケース1と2の双方で建設投資の波及効果は建設費用を上回ったものの、開業後40年間の収支採算性では最良でも150億円の赤字として、どの場合でも採算が取れなかったと公表した。この結果を受け、福岡県では「ルートや事業主体、運転本数や需要喚起策などの精査・検討が必要」とする結論をまとめ、引き続き調査することとなった[27]


注釈

  1. ^ 祇園駅 - 博多駅間が循環線の博多駅前 - 祇園町間、姪浜駅 - 祇園駅間が呉服町線の祇園町 - 呉服町間と貫線の呉服町 - 天神 - 西新 - 姪の浜間。貫線と呉服町線が1975年(昭和50年)11月2日、循環線が1979年(昭和54年)2月11日にそれぞれ全線廃止された。
  2. ^ 都営地下鉄浅草線東京国際空港成田国際空港へ直通しているが、それぞれ京浜急行電鉄京成電鉄の路線に乗り入れる形で各空港へ直通している。
  3. ^ JR線と直通運転を行っている公営以外の地下鉄路線では、大手私鉄である東京地下鉄(東京メトロ)の東西線中央・総武緩行線と、千代田線常磐緩行線と相互直通運転を行っている。
  4. ^ 例外として、2015年(平成27年)までJR九州から乗り入れていた103系1500番台を使用する列車では運転士・車掌が乗務し、手動で運行していた。なお、福岡市交通局に職制としての車掌は存在しない。すなわち、車掌業務を専門に担当する職員はいないため、この場合は、通常運転士として勤務している職員が運転業務を行う職員とは別に乗務して車掌業務を行っていた。
  5. ^ 303系は製造当初はトイレが設置されていなかったが2003年より設置された。地下鉄線内で運用される車両にトイレが設置されるのは全国初であった。
  6. ^ 福岡空港駅 - 博多駅間は1日158.0往復、博多駅以西(以遠)は1日159.0往復の現行水準を維持。これにより、現行の福岡空港駅発着列車の半数弱(47%)が接続区間(新線部分)へ直通する。

出典

  1. ^ a b 寺田裕一『データブック日本の私鉄』ネコ・パブリッシング、2002年7月。 
  2. ^ 福岡市地下鉄事業概要 令和元年度” (PDF). 福岡市交通局. 2023年2月4日閲覧。
  3. ^ a b c d 日本トンネル技術協会『トンネルと地下』1987年5月、土木工学社、1987年。 
  4. ^ 福岡市および北九州市を中心とする北部九州都市圏における旅客輸送力の整備増強に関する基本的計画について”. 都市交通審議会 (1971年3月11日). 2023年2月4日閲覧。
  5. ^ 法人のお客様 地域ビジネス活動 地域の導入事例|福岡市交通局様 可動式ホーム柵”. 三菱電機. 2015年2月15日閲覧。
  6. ^ 「第4回 ホームドアの整備促進等に関する検討会」の結果について』(レポート)国土交通省鉄道局、2011年5月25日https://www.mlit.go.jp/common/000145491.pdf2014年12月4日閲覧 
  7. ^ 今尾恵介監修『日本鉄道旅行地図帳』12号 九州沖縄、新潮社、2009年、p.9
  8. ^ 最混雑区間における混雑率(令和2年度)” (PDF). 国土交通省. p. 3 (2021年7月9日). 2021年8月21日閲覧。
  9. ^ a b c d 福岡市地下鉄事業概要 令和四年度” (PDF) (2022年7月). 2023年1月4日閲覧。
  10. ^ a b 福岡空港駅時刻表”. 福岡市交通局 (2021年3月13日). 2023年1月4日閲覧。
  11. ^ 姪浜駅時刻表”. 福岡市交通局 (2021年3月13日). 2023年1月4日閲覧。
  12. ^ a b 貝塚駅時刻表”. 福岡市交通局 (2021年3月13日). 2023年1月4日閲覧。
  13. ^ a b 地下鉄空港線・箱崎線 新しい車両が決定しました!!』(PDF)(プレスリリース)福岡市交通局、2023年11月30日https://subway.city.fukuoka.lg.jp/subway_webapp/files/uploads/%E5%9C%B0%E4%B8%8B%E9%89%84%E7%A9%BA%E6%B8%AF%E7%B7%9A%E3%83%BB%E7%AE%B1%E5%B4%8E%E7%B7%9A%20%E6%96%B0%E3%81%97%E3%81%84%E8%BB%8A%E4%B8%A1%E3%81%8C%E6%B1%BA%E5%AE%9A%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F!!.pdf2023年12月2日閲覧 
  14. ^ 福岡市交通局向け地下鉄車両を受注 - 川崎車両、2022年2月7日
  15. ^ a b c d e f g 『鉄道要覧』(平成28年度版)電気車研究会・鉄道図書刊行会、175頁。 
  16. ^ 鉄道ファン』 20巻、10号、交友社、1980年10月、111頁。 
  17. ^ a b (PDF). 福岡市交通局. (2019). https://subway.city.fukuoka.lg.jp/subway/about/pdf/subway_12.pdf 
  18. ^ a b 福岡市地下鉄事業概要 令和二年度”. 福岡市交通局. p. 62-65. 2021年7月3日閲覧。
  19. ^ 福岡市地下鉄事業概要 令和3年”. 福岡市交通局. 2023年2月4日閲覧。
  20. ^ 駅ナンバリング(駅番号制)の導入について”. 福岡市交通局 (2010年10月1日). 2012年1月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月7日閲覧。
  21. ^ 駅ナンバリング表示作業のお知らせ』(プレスリリース)福岡市交通局、2011年1月24日。 オリジナルの2011年6月9日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20110609154447/http://subway.city.fukuoka.lg.jp/cgi-bin/topics/tpd.cgi?gid=104362022年1月7日閲覧 
  22. ^ 福岡市地下鉄の駅業務 90%超を民間委託化へ!!” (PDF). 2021年7月3日閲覧。
  23. ^ のりかえ駅変更に関するお知らせ”. 福岡市地下鉄. 2023年3月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月27日閲覧。
  24. ^ 会社概要”. 西鉄ステーションサービス. 2023年2月5日閲覧。
  25. ^ その他事業|事業紹介”. JR西日本中国メンテック. 2023年2月4日閲覧。
  26. ^ 鉄道駅業務”. JR九州サービスサポート. 2023年2月4日閲覧。
  27. ^ a b 福岡市地下鉄空港線とJR福北ゆたか線の接続に関する基礎調査について』(PDF)(レポート)福岡県、2022年7月12日https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/168622.pdf2022年10月15日閲覧 
  28. ^ 鎌倉淳 (2022年7月13日). “福岡地下鉄空港線延伸、調査結果を読み解く。福北ゆたか線へ直通乗り入れを構想”. タビリス. 2022年10月15日閲覧。





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