神格化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/21 16:52 UTC 版)
キリスト教
「神格化」に関連する、英語における"apotheosis"、"theosis"、"deification"は、キリスト教ではそれぞれ別概念として扱われる。それぞれの語彙にどのような日本語訳を当てるかについては、時代・文献によって様々なやり方がある。
"apotheosis"(アポテオーシス)は神格化と訳される他、古い文献には「神化」と訳されているものもある。しかしながら近年は「神化」は"theosis"の訳語に用いられる事が多い。"apotheosis"は皇帝等を神々とする異教的慣習とされ、キリスト教においては否定される概念である[7]。
他方、"theosis"(テオーシス・神成・神化)は正教会の神学や、西方教会の神秘主義において重要な概念である[7]。
正教会の神学において、救世主イエス・キリストが藉身(受肉)した事により、神が人を創造した際に意図した完璧な人間像を神化したと説明される事があるが[8]、こうした説明に際して用いられる語彙は"apotheosis"、"theosis"のいずれでもなく、"deification"である[9]。
日本
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近代
近代の芸術家はこの概念を、故人への敬意を表すため(例えばアメリカ合衆国議会議事堂のドームに描かれたコンスタンティノ・ブルミディのフレスコ画「神格化されたワシントン」)、芸術的コメントとして(例えばダリやアングルの「ホメーロス礼賛 (The Apotheosis of Homer)」)、喜劇的効果を生み出すためなど、様々な動機で活用してきた。
近代の為政者の多くは神学的な「神格化」のつもりはなくとも、アポテオーシス的な肖像を利用してきた。例えば、ルーベンスがバンケティング・ハウスの天井画として描いたジェームズ1世の肖像(王権神授説を表している)、同じくルーベンスのアンリ4世の肖像、アンドレア・アッピアーニの描いたナポレオンのアポテオーシスなどがある。アポテオーシスという用語は、亡くなったリーダー(暗殺されたとか殉教したということが多い)を超人的に描くことを比喩的に表し、その人物の生涯に付きまとっていた全ての過ちや批判を帳消しにする効果がある。例えば、アメリカでのエイブラハム・リンカーンやイスラエルでのイツハク・ラビンなどが例として挙げられる。
文学
ジョゼフ・キャンベルの『千の顔を持つ英雄』では、monomyth から生まれた万能の英雄は神格化の段階を経なければならないと説く。キャンベルによれば、神格化とは敵を打ち破った英雄が経験する意識の拡張である。
アーサー・C・クラークの小説『幼年期の終り』では、オーバーロードが人類の子供たちに起きつつある現象を "apotheosis" と称した(ポストヒューマン参照)。
ダン・ブラウンの小説『ロスト・シンボル』では、"apotheosis" が物語の重要な鍵となっており、合衆国議会議事堂の「ジョージ・ワシントンの神格化」も登場する。
- ^ 『キリスト教大事典 改訂新版』33頁、教文館、昭和52年 改訂新版第四版
- ^ Robin Lan Fox, Alexander the Great (1973:20)
- ^ a b c ヨウ・シンチュウ ジョン・ボウカー(編)「中国の宗教」『ヴィジュアル版 ケンブリッジ 世界宗教百科』 原書房 2006 ISBN 4562040343 pp.120-122,139-141.
- ^ Liu, James T. C. "Yueh Fei (1103-41) and China's Heritage of Loyalty." The Journal of Asian Studies. Vol. 31, No. 2 (Feb., 1972), pp. 291-297, pg. 296
- ^ Wong, Eva. The Shambhala Guide to Taoism. Shambhala, 1996 (ISBN 1570621691), p. 162
- ^ 毛沢東観光 - 国立民族学博物館、2017年10月8日閲覧
- ^ a b 『キリスト教大事典 改訂新版』556頁、教文館、昭和52年 改訂新版第四版
- ^ 高橋保行『ギリシャ正教』275頁、講談社学術文庫 1980年 ISBN 9784061585003 (4061585002)
- ^ "The Blackwell Dictionary of Eastern Christianity" Wiley-Blackwell; New edition (2001/12/5), p159, ISBN 9780631232032
- ^ Grove, Sir George (1962). Beethoven and his nine symphonies (3rd ed. ed.). New York: Dover Publications. pp. 228–271. OCLC 705665
品詞の分類
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