発泡スチロール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/27 23:08 UTC 版)
PSP
ポリスチレンペーパー (PSP) は、EPSのように高温蒸気で加熱・発泡させるのでなく、熱を加えて融解させた原料に、発泡を行うためのガスや発泡剤を加え、液体から厚さ数ミリ程度のシート状に引き伸ばすと同時に発泡させる。発泡率は約10倍である。
食品トレーや、カップ麺の容器に使われる。食品トレー等に加工するには、必要な大きさに切り分け、加熱しながら金型でプレスして整形する。
先述したとおり、一部の食用油に溶解しやすく、また耐熱性が低いので、特に高温の油に触れると熱によって融解し、気泡構造が崩れて侵食されたようになる。このとき、泡内のブタンやペンタンが外気に放出されるが、これらに含まれる不純物により、俗に「発泡スチロール臭い」といわれる独特の臭気がする。この臭気は食欲を減退させるため、食品容器では問題となる。なおポリスチレンは一切消化・吸収されずに体外に排泄されるため、たとえ融解した樹脂を食べても、健康上問題ないといわれる。
カップ麺の容器は、強度や耐熱性を増すために、他の合成樹脂素材からなるシートが表面に接着されているものが多い。ポリ塩化ビニルやポリプロピレンなどの樹脂からなる保護シートを接着することで、耐衝撃性が増す(カップ麺では輸送中に落下させてもカップが破損しない)ため、大型の容器や過酷な輸送が予想される製品の容器に広く用いられている。接着前にシートに印刷することができるので、カップ麺では、店頭に並んだ際に人目を引くよう、さまざまな意匠が凝らされている容器も多い。
XPS
押出ポリスチレン (XPS) は、主に建材に使われる、堅くて難燃性の発泡スチロールである。建材であるため一般の目には触れにくいが、省エネルギーなどの観点から近代化された住宅の断熱材としては屋根材の下や外壁の下などにも良く使われている。
発泡スチロールの易燃性は建材として致命的なので、難燃剤などで難燃性を向上させている。なおEPSも、建材に使われるときは同様に難燃剤が添加される。
液化した原料と発泡剤と難燃剤を高温・高圧下でよく混ぜ、一気に通常気圧・温度の環境に吹き出させる事で連続的に発泡・硬化させ、これを必要な大きさ(大体高さ2m・幅1m・厚さ10cmほど)の板に切断する。この連続的に製造する方法のために「押し出しボード」とよばれる。製造方法から、EPSより気泡が大きいものが多い。一定の難燃性を備え、一般的な発泡スチロールと区別するためか、淡い青などで着色されることもある。
スタイロフォーム
スタイロフォーム、スチロフォーム (STYROFOAM)、スティロフォウム は、ダウケミカルによる、XPSの登録商標である。
XPSを指す一般名詞、あるいははなはだしくは、発泡スチロールの同義語のように使われることがあるが、適切ではない。
環境ホルモン
発泡スチロールの主原料はポリスチレンだが、微量含まれているスチレンダイマーとスチレントリマーが、日本で1998年に、環境庁(現環境省)によりSPEED'98(環境省関連ページ)で内分泌攪乱物質(俗に「環境ホルモン」とも)の疑いのある物質として上げられた。そのため、従来は最終処分場にて埋め立て処理されていた発泡スチロールが、環境汚染の一因と疑われた。 業界団体からの反発を受け、環境省は2000年11月にこのリストからスチレンダイマーとスチレントリマーを取り消した。
- ^ Its Not A Cup
- ^ a b c 日本放送協会. ““使われなくなる日を願って” 小さな黒い箱に込められた思い”. NHKニュース. 2021年7月22日閲覧。
- ^ 断熱工事のビル 再び火災――可燃材料が断熱工事の建材にとなる 新唐人 2010年11月23日放送
- ^ 東京農業大学 断熱材のシロアリ食害試験報告
- ^ 福田清春, 柏井伸二, 冨永洋二, 近江正陽. 2001. 発泡スチロール廃棄物の木質材料用接着剤への再利用. 木材工業 Vol56. No10. 458 -463
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