瑞宝章 意匠

瑞宝章

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/08 13:23 UTC 版)

意匠

勲五等瑞宝章を佩用した1941年昭和16年)頃の吉岡彌生。綬は女性用の蝶結状の小綬(2003年の制度改正で廃止)

章のデザインは、宇摩志麻遅命神武天皇に奉った瑞宝(十種神宝)に基づいているとされるが、実際は伊勢神宮の御神体であるをモチーフにしていると言うのが一般的な見解である。章の中央部に、青色七宝に浮くように鏡のモチーフが浮き出して取り付けられ、連珠が丸く囲む。その外側は四方に伸びる光線が白七宝によって施され、中央の鏡のモチーフを囲む部分には赤の連珠が配される。基本的にご神体である鏡に強く光が当たった状態をデザインに起こしていると言って良い。デザインは勲一等から勲六等までは基本的に同一であるが、等級により金鍍金の施される範囲や章の大きさが異なる。また大綬章(勲一等)の副章と重光章(勲二等)の正章のみ、外側に伸びる光線は八方である。かつて制定されていた七等と八等の正章の意匠は光線が省略され、連珠で八芒星をかたどった地板を七等は金、八等は銀として、中央に鏡を据えるものであった。

綬は(淡藍)藍の織り地に黄の双線と定められているが、時代によって色味には非常にバラツキがある。明治の制定時には公文書の定めに等しく「淡藍地(極めて薄い灰青色)に黄の双線」であったが、大正時代の一時期には綬は染料の経年変化により「淡藍地に桃色双線」になる綬が採用されていた。大正末期から太平洋戦争末期頃に掛けては、靖国神社に展示されている物のように織り地の「淡藍」が非常に濃く、金鵄勲章と見まごうばかりの灰緑の物も存在していた。戦後は元の通り、極淡い淡藍の地に黄色の双線に戻り、栄典制度改訂まではそのままの色味であった。また制度改訂まで、女性に授与する場合は、勲三等以下の綬は勲二等以下の宝冠章と同様に蝶結状の小綬で統一され、左胸に佩用することが定められていた。

全ての瑞宝章は章の裏面に「勲功旌章」の刻印が施される。

栄典制度改正による意匠の変更

瑞宝中綬章を佩用した菅原寛孝

瑞宝章は、各種勲章及び大勲位菊花章頸飾の制式及び形状を定める内閣府令(平成15年内閣府令第54号)の施行に伴い、大きく意匠が変更された。まず、それまで旭日章の格下であった瑞宝章を同章と同格に昇格させるにあたり、勲章の体型(正章・副章などのセット)が旭日章と完全に同等に改められた。これにより瑞宝重光章は新たに瑞宝中綬章の正章を副章として持つこととなった。加えて同時に全ての勲章に、旭日章と同形である桐紋の鈕(ちゅう・綬と章をつなぐ金具)が備えられることとなり、また赤色連珠の固定も、これまでのカシメ留めではなく、プラスネジによる固定となった。

綬の色も変更され、それまでの「淡藍に黄の双線」が「藍の地に黄の双線」に改められた。「藍」といっても比較的薄いもので、縹色(皇室の瑞祥の色として用いられている日本の伝統色)や水色に近い。綬の結び方も従来は性別で異なっていたが、栄典制度改正を機に男性用の方式に統一された。

高位勲章の調製は完成までに時間がかかるため、制度改正による意匠や細部の造りの変更が間に合わない場合がある。そのため、瑞宝章においては大綬章の副章ならびに重光章の正章が法令の許容範囲内で旧制度の在庫品から授与されていった。平成20年頃より完全な新制度版の物に切り替わり、裏面の佩用ピンが以前の縦方向に差し込む物で無く、横方向に向いてそのまま礼服の生地に差し込めるブローチピンのような形態に変更された。 また裏面も以前の鏡面仕上げから梨地仕上げに変更され、赤い連珠の部品は以前の4個のネジ留めから2個のネジ留めに変更された。


  1. ^ 1895年(明治28年)、西園寺公望が授与された物。国立公文書館所蔵(請求番号:寄贈02112100)。
  2. ^ a b 勲章の授与基準 (PDF) (平成15年(2003年)5月20日閣議決定)、内閣府
  3. ^ 勲章および褒章の英訳名”. 内閣府. 2019年11月3日閲覧。
  4. ^ a b 写真の蝶型略綬は大正10年4月26日閣令第4号による改定前のもの。
  5. ^ a b 栄典制度の概要. p.6 内閣府
  6. ^ 栄典制度の概要. p.5、p.10、p.11 内閣府





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