状態密度 波数空間の位相幾何

状態密度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/09 00:50 UTC 版)

波数空間の位相幾何

図1: 三次元自由度を持つ電子の波数空間における球面

状態密度は対象の次元に依存する。次元の果たす役割は、DOS の単位 (Energy−1Volume−1) からも明らかである。系が二次元的になる極限において体積は面積となり、一次元的となる極限においては長さとなる。ここでいう体積とは波数空間上の、分散関係から導かれる等エネルギー面英語版で囲われる領域の体積であることに注意が必要である。固体中の電子の分散関係はバンド構造を成している。三次元的波数空間の例を図1に示す。系の次元そのものが系内の粒子の運動量を規定することが見てとれる。

波数ベクトル状態密度(球)

DOS を計算するにはまずある k に対して波数空間上の領域 [k, k+dk] 内に含まれる状態数 N を数える必要がある。これは、ある k に対する n 次元波数空間全体の体積 Ωn, kk で微分することで得られる。三次元、二次元、一次元波数空間の体積、面積、長さは次のように表わされる。

ここで、 cn は波数空間の次元 n に依存して位相幾何学的に定まる定数で、一次元、二次元、三次元ユークリッド波数空間に対してはそれぞれ以下のように定まる。

この式によれば、波数ベクトル状態密度 NΩn, kk で微分することにより次のように得られる。

これを一次元、二次元、三次元の場合に明示的に書き下すと次のようになる。

一つの状態は波長 λJ の粒子を含むことができる程度に大きい。波長と波数 k との間の関係式は以下のようになる。

長さ λ の量子系は粒子を閉じ込める系の大きさ L に依存する。最後に、状態密度 N に係数 s/Vk をかける。ここで、s はスピンや偏極などの物理現象に起因する内部自由度である。このような物理現象が無い場合は s=1 となる。Vk は波数空間上の、ある k よりも小さい波数ベクトルを全て含む体積である。

エネルギー状態密度

DOS の計算の最後として、あるエネルギー に対して 定まる区間 [E, E+dE] に含まれる体積あたりの状態数を計算する。一般的な系の DOS は次のような形式となる。

ここまでの式は、分散関係が単調増加する球対称な系に対してのみ成り立つ。 一般に、分散関係 E(k) は球対称ではなく、単調増加でもないことが多い。DE の関数として分散関係 E(k)逆関数を用いてここまでの式中に現われていた k の関数 Ωn(k) をエネルギーの関数 Ωn(E) に置き換える必要がある。これは分散関係が球対称でなかったり単調増加しなかったりする場合は容易ではなく、ほとんどの場合において DOS は数値的に計算される。より詳細な導出もある[2][3]


  1. ^ Walter Ashley Harrison (1989). Electronic Structure and the Properties of Solids. Dover Publications. ISBN 0-486-66021-4. https://books.google.com/books?id=R2VqQgAACAAJ 
  2. ^ Sample density of states calculation
  3. ^ Another density of states calculation
  4. ^ Charles Kittel (1996). Introduction to Solid State Physics (7th ed.). Wiley. Equation (37), p. 216. ISBN 0-471-11181-3 
  5. ^ Wang, Fugao; Landau, D. P. (Mar 2001). “Efficient, Multiple-Range Random Walk Algorithm to Calculate the Density of States”. Phys. Rev. Lett. (American Physical Society) 86 (10): 2050–2053. arXiv:cond-mat/0011174. Bibcode2001PhRvL..86.2050W. doi:10.1103/PhysRevLett.86.2050. PMID 11289852. 
  6. ^ Ojeda, P.; Garcia, M. (2010). “Electric Field-Driven Disruption of a Native beta-Sheet Protein Conformation and Generation of a Helix-Structure”. Biophysical Journal 99 (2): 595–599. Bibcode2010BpJ....99..595O. doi:10.1016/j.bpj.2010.04.040. PMC 2905109. PMID 20643079. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2905109/. 
  7. ^ Adachi T. and Sunada. T (1993). “Density of states in spectral geometry of states in spectral geometry”. Comment. Math. Helvetici 68: 480–493. 






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