特定非営利活動法人 設立

特定非営利活動法人

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 21:22 UTC 版)

設立

法人の設立は、その主たる事務所が所在する都道府県知事、事務所の所在地がひとつの政令指定都市内の区域内のみであれば当該市の市長認証を得たうえで、設立登記を経てなされる(法第9条、第10条)。ただし一部都道府県では政令市ではない自治体に対しても独自に条例によって事務委託を行っている場合があり、その際は管轄者たる権限が都道府県知事から当該市町村長にそのまま移譲されているため、書類の提出先も当該市町村となる。従って、実際に設立申請を行おうとする際は、主たる事務所を設ける予定である市町村の役所に確認することが望ましい。

認証事務は、法及び各都道府県の示す「NPO法の運用指針」等に基づき行われる。設立申請者は、認証基準に合致していることを積極的に疎明する必要がある。都道府県知事もしくは市長は、申請者の提出した書類の内容が認証基準に合致しているときは、認証をしなければならない(第12条)。

設立条件

法律により法人格を取得することが可能な団体は、「特定非営利活動」を行うことを主な目的とし、次の要件を満たす団体である(第2条、第12条)。

  • 営利を目的としないこと
  • 社員(正会員など総会で議決権を有する者)の資格について、不当な条件をつけないこと
  • 報酬を受ける役員数が、役員総数の1/3以下であること(ただし無報酬と定めた役員が一般職員の職務を兼務し、一般職員としての給与を受けることに問題は無い)
  • 宗教活動や政治活動を主目的としないこと
  • 特定の候補者、政党を推薦、支持、反対することを目的としないこと
  • 暴力団、暴力団又は暴力団の構成員、若しくは暴力団の構成員でなくなった日から、5年を経過しない者の統制下にある団体でないこと(役員に就任しようとする者は、自身が暴力団に現に所属しておらず、なおかつ別途定められた犯罪行為による刑罰を最近2年以内に受けていないという趣旨の誓約書を提出しなければならない)
  • 10人以上の社員がいること(申請時の必要書類に社員の氏名及び住所の一覧表が求められる。法律上、社員の住民票提出の必要は無いが、表記する住所は住民票記載と相違があってはならない)

同族会社のような形態を取らせないことや反社会勢力の関与を防止することを目的として、理事(役員)の就任条件に関する規定は多岐にわたり定められている。例えば「役員の総数を3で割った商」が2未満である場合は、互いに3親等内にある者同士が同時に役員に就任することができない。「社員」は法人の業務に従事する者を指しておらず、営利企業にいう株主のような存在である。ただし社員となっている人物が法人の業務に従事することに法令上の規制はない。

以上の条件を満たし、その後定款を「発起人総会」で決定し、原則として活動拠点となる都道府県(複数の都道府県にまたがる場合は内閣府)に申請を行い、2か月から4か月間の審査期間中に市民にその定款や予算案などを公開し、異議がなければ認証される。この「市民への公開」をする手段や場所は、それぞれの申請を受ける地方公共団体が条例で定める。

設立の認証がなされた場合は、一般的な営利法人と同様に商業登記(設立の登記)を行い、登記が完了した時点で登記事項証明書と、成立時に作成した財産目録を自治体に提出しなければならない(第7条、第13条)。なお設立登記にあたっての登録免許税は免除される。財産目録は主たる事務所に常備しなければならない(第14条)。


注釈

  1. ^ すなわち、構成員に対して利益の還元をしてはならず、その目的の事業の更なる発展・強化を図るための資金へまわすことを目的としている。
  2. ^ 特定非営利活動促進法第2条第2項の定義参照。
  3. ^ 情報公開に関する規定として、第10条2項、第28条、第30条等がある。
  4. ^ 法改正後の根拠法及び一般法は民法第33条の第1項・第2項。
  5. ^ 詳しくは、特定非営利活動促進法のあとに中間法人法が制定され、非営利の団体が法人となる際に利用できる法制は公益法人制度改革の以前から既に複数化していたが、中間法人制度は公益法人制度改革に伴い一般社団法人制度に統合された。

出典

  1. ^ NPO法人の主な事務所の所在する地域の政令指定都市長、又は都道府県知事
  2. ^ 所轄庁一覧 | NPOホームページ”. www.npo-homepage.go.jp. 2024年1月12日閲覧。
  3. ^ 認証制度について | NPOホームページ”. www.npo-homepage.go.jp. 2024年1月12日閲覧。
  4. ^ 元職員が720万円を横領したNPO法人「神奈川子ども未来ファンド」に横浜市が不適正経理の是正勧告! ファンドの対応は? - はまれぽ.com 神奈川県の地域情報サイト”. はまれぽ.com (2024年1月13日). 2024年1月12日閲覧。
  5. ^ https://www.city.tsuchiura.lg.jp/data/doc/1395993381_doc_38_3.pdf
  6. ^ 森泉章『新・法人法入門』有斐閣、2004年、184頁
  7. ^ 内閣府・NPOホームページ「NPOを知ろう(NPOの基礎知識)」より
  8. ^ a b 佐藤眞一(編)『高齢者心理学』 北大路書房 2018年、ISBN 978-4-7628-3050-1 p.45.
  9. ^ https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/2020-kaisei-1.pdf
  10. ^ “NPO偽装、医療器メーカー脅した右翼幹部ら2人逮捕”. 読売新聞. (2004年10月3日) 
  11. ^ 市民への説明要請の実施について |東京都生活文化スポーツ局”. www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp. 2022年12月13日閲覧。
  12. ^ 神戸市:NPO法人に対する市民への説明要請の内容・結果”. www.city.kobe.lg.jp. 2022年12月13日閲覧。
  13. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2016年1月20日). “震災事業費横領に実刑判決 「被災者愚弄している」 岩手”. 産経ニュース. 2022年12月13日閲覧。
  14. ^ NPO法人 脱法売買 全国11法人売り出され、仲介業者も 口座乱造、詐欺に悪用 毎日新聞 2018年6月7日
  15. ^ 非営利法人「善意」の陰で:休眠NPO、看板悪用 東京、多重債務者集め詐欺/茨城、実態は違法風俗店”. 毎日新聞. 2022年12月13日閲覧。






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