熱交換器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/21 05:29 UTC 版)
媒体の流れによる分類
- 対向流式
- 加熱媒体と冷却媒体が向かい合わせに接して流れるもの。効率がよい反面、熱交換器内の温度差が大きくなるため、加熱媒体と冷却媒体の温度差が小さい場合や熱交換器の小型化が必要な場合に用いられる。
- 並流式
- 加熱媒体と冷却媒体が同じ向きに接して流れるもの。効率が悪いが、熱交換器内の温度差や最高温度を小さくできるため、加熱媒体の温度が高く、材料の劣化を緩和する必要がある場合に用いられる。
- 直交流式
- 加熱媒体と冷却媒体が直交して流れるものである。
管理
熱交換面の粉塵やスケール・スライムなどは、熱交換効率の低下・媒体の通過量の低下・差圧の上昇を招く。そのため、各種フィルタ・ストレーナでの流体の前処理や、薬品注入が行われる。伝熱面の温度管理を適切に行わないと腐食や汚損が激しくなる。
また、定期的な清掃が必要である。粉塵の場合は、水蒸気や圧縮空気での吹き飛ばし(ボイラーの場合はスートブロワという)、高圧水噴射などが行われる。スケール・スライムの場合はスポンジボール・ブラシなどによる物理的洗浄のほか、薬品洗浄などが行われる。
設計
熱交換器の設計においては以下のことが求められる。
- 所定の伝熱/流動特性を、所定の運転期間実現できる型式(経験あるいは新規の着想から決定)、大きさ(製作工場から設置施設までの搬送と取り付けが可能)であること。
- 取り扱う流体が毒性であったり、高圧であったりすると、流体の漏洩防止、経済設計の観点から、フランジ構造よりも溶接構造による組み立て方式の採用が優先される。
- 胴と伝熱管の両端が相互に固定される構造の場合、高温側/低温側の流体が接する金属の温度に差が生じる為、その伸び差に起因する熱応力に耐える構造が必要である。
- 両流体の運転期間中、その流動起因の伝熱管(装置)振動による損傷が無く、また騒音トラブルも起こさないこと。
- 熱交換器の最適設計に関する考察
- 経済性(製作・納入・据付・運転・維持・互換性の各フェーズにおいて)に優れること。
- 型式は様々(二重管式/多管円筒式/スパイラル式/プレート式/空冷式 等)だが、まずは異なる2つの流体それぞれの設計圧力、設計温度に耐えられるものから選定される。
- 特に相変化が無い場合、流体の伝熱(金属)面への汚れ付着度合やその除去要求から、採用する水力直径(構造)が定まってくる。これが小さいほどコンパクトな設計になりやすい。
- 伝熱量は、異なる2つの流体それぞれの境膜伝熱係数の大小に依存する。両流体側の改善が重要になる。劣等側改善目的で、その伝熱(金属)面へのフィン取り付け、管内に乱流促進用の挿入物(インサート)を考慮する場合がある。
- 複数の直列に連結する熱交換器の設計にすることで、温度効率、流体速度/伝熱性能の向上が図りやすくなり、高温流体を扱う場合には、低温側の熱交換器に低価格な金属材料の選択が可能になったり、高圧流体を扱う場合には、個別の熱交換器サイズを小さく出来て耐圧部材の厚さと重量、即ち熱交換器の価格を減じる効果も期待出来たりする。
- サーモサイフォン(サイフォンの原理を利用した)蒸発器では安定運転および高沸点成分残留/有効温度差漸減回避の為の蒸発量の割合設定が重要である。
- 流下液膜式(フォーリングフィルム)蒸発器では伝熱管壁面が乾いてしまわない十分な量の液の循環/供給を確認する。
- mv2 値(運動エネルギー参照)に指針を設定/管理することで、流動に起因する摩耗の発生、不適切な流路設計を回避する。 尚、飽和蒸気が導入管路で放熱/冷却/凝縮した液滴ミスト(高密度)を同伴することになると、それが高速で飛来するので用心が必要である。
- 気相/気液二相流の音速流域設計でも、処理量の僅かな変動があっても運転困難に至らないことを確認する。可能であればマッハ数を小さく採る。
- 熱交換器の設計判断項目例
- 伝熱余裕(熱通過率)
- 流体の流動制限(流速、圧力損失)
- 流れの方位(対向/並行/直交/上向き/下向き/横向き)
- 据付(横置き/縦置き)
- 問題回避確認(偏流起因性能低下、気液二相流の不安定運転、局所の異常流速による摩耗や汚れ付着の加速)
法的規制
- エネルギーの使用の合理化等に関する法律
- 省エネルギーを行うために熱の段階的利用や回収を積極的に行うとともに、熱交換器を適切に管理し効率的に使用することが定められている。
- ボイラー及び圧力容器安全規則
- 内部圧力が高くなるものは、圧力容器として設置・運用に関して規制がある。
- 高圧ガス保安法
- 高圧ガスを使用するものの取り扱い。
- ^ 意匠分類定義カード(K6) 特許庁
- ^ カーエアコン用熱交換器の最新技術 - (株)デンソー
- ^ 社団法人 日本アルミニウム協会編、『現場で生かす金属材料シリーズ アルミニウム』、工業調査会、2007年5月1日初版1刷発行、ISBN 9784769321880
- ^ 竹中他『機械工学必携』、460頁。
- ^ 瀬下裕; 藤井雅雄『コンパクト熱交換器』日刊工業新聞社、1992年、39-46頁。ISBN 4-526-03165-8。
- ^ 尾花英朗『熱交換器設計ハンドブック』(2版)工学図書、1982年、7-13, 169-171頁。
- 熱交換器のページへのリンク