比較優位 産業内貿易

比較優位

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/05 23:38 UTC 版)

産業内貿易

比較優位に従って、分業が既述した様に進むと最終的にはいずれかの経済(国あるいは地域)が自身の比較劣位な財を全く生産しなくなるであろうことが導き出される。しかし、現実には、同種の財を互いに輸出・輸入し合う場合も見られる。これを産業内分業という。産業内分業は、ヨーロッパ諸国のような類似した国々の間で増大する傾向がみられる[11]

産業内貿易に関する実証的研究は、ベラ・バラッサにより始まり[12]グリューベル英語版とロイドによる1975年の本[13]の出版により多くの経済学者に注目された[14]ポール・クルーグマンは、なぜ産業内貿易が起こるかについて、需要者の多様性選好と生産者の規模の経済(収穫逓増)とにより説明する理論を提起した[15][16]

産業内貿易は、リカード型の比較優位(技術の違い)に基づく貿易とも、ヘクシャー・オリーン型(HOSモデル)の比較優位(要素賦存比率の違い)にもとづく貿易とも異なる論理によるものである。クルーグマンは、この理論を含む研究により2008年ノーベル経済学賞を受賞した[17]

議論

比較優位論の前提条件

比較優位論は、当初は極めて限定的な前提(仮定ないし条件)のもとに立っていた。理論の進展とともに、限定的な前提がより一般的なものに置き換えられるが、その過程で当初の概念自体に修正が迫られることもある。

2国2財以外の場合
リカードの貿易論は、2国2財を例題としていた[18]。2国多数財、あるいは2財多数国の場合には、比較優位の概念は容易に一般化され[19]。3国3財以上の多数国多数財の場合にも比較優位概念を拡張することはできる[20][8][6]。しかし本項比較優位の一般化に見るように、中間財貿易を含む場合の一般化は困難であり、新しいアプローチを必要とする。
一国内では生産要素の移動は完全に自由であるが、国際間のでは生産要素は移動せず、生産物のみが貿易される
リカードが仮定した前提である。多くの国際貿易論は、生産要素(労働力・資本・土地)が国・地域を越えて貿易されないと仮定してきた。移民や直接投資などにより生産要素も移動するため、1980年代以降、要素移動の貿易理論も展開された[21][要ページ番号]。また、中間財(投入財)は貿易されないというのが従来の前提であったが、最近では中間財貿易は、実証的にも理論的にも注目される対象となっている[22][23][24]
経済主体内外の輸送コスト
運輸業を財やサービスの一つとして組み入れて考慮しても比較優位は成立する。輸送コストをモデル化するには、しばしば氷山モデル(iceberg model)が用いられている[25]。このモデルは、クルーグマン[26]を含め多くの論文に踏襲されている。
貿易の利益と国家の追求目標
比較優位論は、貿易開始ないし自由化により、貿易の利益および不利益が各経済主体にどのように作用するかを明らかにする。中間財の貿易を含むM国N財の一般的モデルにおいては、雇用されている労働者にとって実質賃金の上昇という貿易の利益を生むが、世界最終需要が増大しないかぎり、短期的には貿易自由化が失業と廃業とを生むという指摘がある[24]。従って、貿易の利益は国家(国民)がどのような事態を望ましいと考えるかに依存するとされる。

出典・脚注

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