比例代表制
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/21 08:19 UTC 版)
比例代表制の例
日本
衆議院議員総選挙では拘束名簿式比例代表制が採用されている。拘束名簿式とは、あらかじめ政党側が順位を決めた候補者名簿を確定しておく方法で、政党の獲得議席数に応じて名簿登録上位順に当選者が決まる[55]。拘束名簿式は衆議院選挙(比例区)で1996年から採用されているが、小選挙区での重複立候補者を同一順位とすることを認めており、小選挙区での当選者の得票数に応じた得票率(惜敗率)によって当選順位が決められる方式となっている。なお、参議院選挙(比例区)として1983年から1998年まで行われていた選挙は、拘束名簿式のうち立候補者名簿に重複なく順位を記載する厳正拘束名簿式であった(全国1つのブロックで選挙を行った)。
一方、参議院議員通常選挙では非拘束名簿式比例代表制が採用されている。非拘束名簿式とは、候補者名簿はあるものの順位は決められておらず、各政党の当選議席数に対し、各候補者個人としての得票数の最も多かった者から順に当選人が決まる方式をいう[55]。この方式は参議院選挙(比例区)で2001年から採用されている。
なお、日本では2000年以降の国政選挙から、比例当選議員は当選時に当該比例区に存在した他の名簿届出政党に移籍する場合は所属政党が他党への合流を決定した場合を除いて議員辞職となることになった(公職選挙法第99条の2、国会法第109条の2)。
2016年に結党した民進党では旧みんなの党の比例代表選出議員ゆえに国会法第99条の2の規定により改選まで国会議員職を維持したまま民進党に参加できない旧維新の党の参議院議員5名は共同会派所属国会議員の地位に関する経過規定(党規約附則2条2項[56])により、2019年9月まで小野ら5名は無所属でありながら党役員への就任や両院議員総会での議決権行使を許されて民進党所属国会議員に準ずる地位を有するものとされたが(政党助成法上の政党交付金配分に絡む議席分にはカウントされない)、産経新聞から『「無所属議員を党所属議員として扱う」という政党政治の根本が問われるような異常な事態』と批判された[57]。
参議院選挙区(旧地方区)における一票の格差の問題から2つの参議院合同選挙区が創設されたことにより、参議院に選出されない可能性がある県の代表者を参議院に確実に輩出することを意図した自民党の意向が国会で反映されたことにより、2019年7月の第25回参議院選挙から参議院比例区で政党等の判断で拘束名簿式の「特定枠」として設定することが可能となり(なお、特定枠に掲載された候補者は候補者名を冠した選挙運動を行うことができず、特定枠に掲載された候補者は政党票としてカウントされる)、これによって参議院比例区では拘束名簿式と非拘束名簿式の両方が混合することになる。なお、この参議院比例区の特定枠は「候補者とする者のうちの一部の者」と定められており具体的に何人までという規定はなく、1人を除いて特定枠とすれば、全候補者に順位付けするという事実上の厳正拘束名簿式にすることも可能である。
欧州議会
欧州議会選挙法では比例代表制が選挙の原則の一つになっている[58]。しかし、欧州議会選挙法は選挙制度の大枠のみを定めるだけで、各加盟国が個別の欧州議会選挙細則を定めているため国ごとに比例代表選挙の方法は異なる[58]。
多くの国は政党だけでなく候補者も選べる非拘束名簿式(open list)を採用しているが、フランスやドイツなどは政党内の名簿順位が決定されている拘束名簿式(closed list)を採用しており、アイルランドやマルタなどは単記移譲式(Single Transferable Vote system)を採用している[58]。
なお、比例代表の議席配分は国別に行われるが、議員は国家横断的に政治会派(political group)を形成して政治活動を行っている[58]。
- ^ a b c d e f g h i j k 堀江湛、岡沢憲芙『現代政治学』法学書院、2002年、202頁。
- ^ a b 堀江湛、岡沢憲芙『現代政治学』法学書院、2002年、201頁。
- ^ a b 久米郁男ほか『政治学』有斐閣、2003年、453頁。
- ^ 堀江湛、岡沢憲芙『現代政治学』法学書院、2002年、201頁。
- ^ 堀江湛、岡沢憲芙『現代政治学』法学書院、2002年、200頁。
- ^ 堀江湛、岡沢憲芙『現代政治学』法学書院、2002年、198頁。
- ^ 森口 1925, p. 111.
- ^ a b c 森口 1925, p. 112.
- ^ 森口 1925, p. 113.
- ^ 森口 1925, pp. 113–114.
- ^ 森口 1925, pp. 114–115.
- ^ a b c 森口 1925, p. 115.
- ^ 森口 1925, pp. 116–117.
- ^ 森口 1925, p. 117.
- ^ 森口 1925, pp. 117–118.
- ^ a b c 堀江湛、岡沢憲芙『現代政治学』法学書院、2002年、202頁。
- ^ a b c d e f 堀江湛、岡沢憲芙『現代政治学』法学書院、2002年、204頁。
- ^ a b c d e 野中俊彦ほか『憲法2』有斐閣、1997年、33-35頁。
- ^ a b c “ペルー国会議長が大統領に就任 抗議の中、政治混乱に懸念(共同通信)”. Yahoo!ニュース. 2020年11月11日閲覧。
- ^ 森口 1925, p. 125.
- ^ a b 森口 1925, p. 129.
- ^ 森口 1925, pp. 129–130.
- ^ 森口 1925, p. 131.
- ^ 森口 1925, pp. 131–132.
- ^ a b 森口 1925, p. 133.
- ^ 森口 1925, pp. 133–134.
- ^ 森口 1925, pp. 136–137.
- ^ a b 森口 1925, p. 139.
- ^ 森口 1925, pp. 141–143.
- ^ 森口 1925, p. 143.
- ^ a b c 森口 1925, p. 144.
- ^ 森口 1925, p. 145.
- ^ 森口 1925, p. 146.
- ^ a b c 森口 1925, p. 147.
- ^ 森口 1925, p. 148.
- ^ a b c d 森口 1925, p. 167.
- ^ 森口 1925, pp. 167–168.
- ^ a b 森口 1925, p. 168.
- ^ a b 森口 1925, p. 173.
- ^ a b c 森口 1925, p. 174.
- ^ 森口 1925, pp. 175–176.
- ^ 森口 1925, p. 176.
- ^ a b c d 森口 1925, p. 181.
- ^ 森口 1925, p. 184.
- ^ a b 森口 1925, p. 185.
- ^ 森口 1925, p. 186.
- ^ 森口 1925, pp. 186–188.
- ^ 森口 1925, p. 188.
- ^ a b 森口 1925, p. 189.
- ^ 森口 1925, pp. 190–191.
- ^ 森口 1925, p. 191.
- ^ 森口 1925, pp. 191–192.
- ^ a b 森口 1925, p. 193.
- ^ a b 森口 1925, p. 194.
- ^ a b “比例代表選挙の「拘束名簿式・非拘束名簿式」って、なんのこと?”. 厚木市 2021年11月1日閲覧。
- ^ 『民進党規約』(プレスリリース)民進党、2016年3月27日 。2016年3月27日閲覧。
- ^ 無所属なのに党役員ってどういうこと? こんな脱法行為を是とする民進党に立憲主義を掲げる資格があるのか 産経新聞 2016年4月12日
- ^ a b c d “欧州議会選挙について教えてください”. 駐日欧州連合代表部. 2018年8月3日閲覧。
- ^ 堀江湛、岡沢憲芙『現代政治学』法学書院、2002年、203頁。
- ^ 伊藤暁, 井上克司「議席配分法に対する線形時間アルゴリズム (計算機科学基礎理論の新展開)」『数理解析研究所講究録』第1375巻、京都大学数理解析研究所、2004年5月、85-91頁、CRID 1050001201690201344、hdl:2433/25579、ISSN 1880-2818。
- ^ a b c “ハイテクの国イスラエルで、戒律と伝統に生きる 「超正統派」とはどんな人たちなのか:朝日新聞GLOBE+”. 朝日新聞GLOBE+ (2021年5月19日). 2023年7月27日閲覧。
- ^ “スウェーデン次期首相が辞任 選出から数時間後”. www.afpbb.com. 2021年11月26日閲覧。
- ^ “スウェーデン国会、アンデション氏の首相選出を29日に再投票”. www.afpbb.com. 2021年11月26日閲覧。
- ^ “イスラエル総選挙2年で4度目、ネタニヤフ氏の続投が焦点(写真=ロイター)”. 日本経済新聞 (2021年3月21日). 2022年1月14日閲覧。
- ^ a b 久米郁男ほか『政治学』有斐閣、2003年、454-455頁。
- ^ https://jetro.org/biznews/2017/11/ea48959e7ea28de7.html
比例代表制と同じ種類の言葉
- 比例代表制のページへのリンク