概型 古典的な代数幾何学との対応

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概型

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 20:45 UTC 版)

古典的な代数幾何学との対応

古典的代数幾何学における主要な研究対象であった、多項式の零点集合として定義されるような図形(アフィン多様体)は次のようにして(アフィン)スキームの文脈に再現される。 例として複素二次元空間 C2 上で定義される

という多項式関数の零点集合 S を考える。複素係数の2変数多項式環 C[x, y] は C2 上の多項式関数の代数系を表しており、この多項式環を f(x, y) で割ってできる剰余環 A = C[x, y]/(f) の元は C2 上の関数について S 上で区別できない差を無視したものと見なすことができる。したがって、この商環は S 上の関数全体の代数系をあらわすと考えられる。

一方で A極大イデアルf (x, y) = 0 の点と一対一に対応している。たとえば、上で定義した A の極大イデアル m = (x − 1, y) は S 上の点 (1, 0) という点に対応している。そこで A の極大イデアルの集合を Spm A と定義すれば、これを今まで我々が考えてきた S と同一視することができる。これが、古典的な意味での点集合としての代数多様体である。

しかし、数論への応用を視野に入れた圏論的な定式化のためには、既約部分多様体をも点と見なした方が都合が良いことが知られている。つまり、任意の環の準同型 BC に対し必ずアフィンスキームの射 Spec C → Spec B が存在する一方で、Spm C と Spm B の間にはアプリオリな対応が存在しない。このように、スキーム論では多様体上の点は部分多様体と捉え、逆に(既約)部分多様体も点のようにみなされる。

また、各点 p における構造層の茎は p の近傍でのみ定義されているような正則関数を考えることに対応している。

アフィン多様体の張り合わせで得られる射影空間などがスキームとして表現される。


注釈

  1. ^ Schappacher (2007, p. 10) によれば、ザリスキーは1938年から自分流の代数幾何学の基礎を考え始めている。
  2. ^ ただし、Chevalley (1955)Nagata (1956) でこの講演が参考文献としてあげられているわけではない。また Chevalley (1955) で考察されているのは体上の代数幾何学だけである。
  3. ^ Kk 上の自己同型群の意と思われる。
  4. ^ グロタンディークは永田の論文を知っていた。Dieudonné (1989, p. 305) 参照。
  5. ^ アンドレ・マルティノー英語版のことと思われる。

出典

  1. ^ Schappacher 2007, p. 248.
  2. ^ a b c McLarty 2003, p. 13.
  3. ^ Schappacher 2007, pp. 252–253.
  4. ^ Weil 1962.
  5. ^ Weil 1962, p. vii.
  6. ^ Serre, Jean-Pierre (1999). “André Weil. 6 May 1906 — 6 August 1998”. Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society 45: 524. doi:10.1098/rsbm.1999.0034. https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbm.1999.0034. 
  7. ^ 新訂版 数学用語 英和辞典, p. 90, - Google ブックス
  8. ^ Weil 1962, p. 68.
  9. ^ Dieudonné 1985, p. 65.
  10. ^ Weil 1962, p. xi.
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  12. ^ Weil 1949.
  13. ^ Weil 1949, p. 507.
  14. ^ The Grothendieck Festschrift, Volume I, p. 7, - Google ブックス
  15. ^ Serre 1955.
  16. ^ Dieudonné 1985, p. 102.
  17. ^ Serre 1955, p. 197.
  18. ^ Serre 1955, p. 233.
  19. ^ McLarty 2016, pp. 259–260.
  20. ^ Chevalley 1955.
  21. ^ Chevalley 1955, p. 3.
  22. ^ Nagata 1956.
  23. ^ Cartier 1956a, p. 1.
  24. ^ Cartier 1956a, p. 9.
  25. ^ McLarty 2003, p. 16.
  26. ^ Cartier 1956b.
  27. ^ Cartier 1956b, p. 18.
  28. ^ Grothendieck-Serre Correspondence, p. 25, - Google ブックス
  29. ^ Grothendieck 1960.
  30. ^ Grothendieck 1960, p. 106.
  31. ^ a b c McLarty 2003, p. 14.
  32. ^ McLarty 2003, p. 17.
  33. ^ Serre, Jean-Pierre (1989) (PDF), Rapport au comité Fields sur les travaux de A. Grothendieck (1965), p. 4, https://agrothendieck.github.io/divers/rapportserre.pdf 
  34. ^ Mumford, David (2009) (PDF), My Introduction to Schemes and Functors, p. 4, https://www.dam.brown.edu/people/mumford/beyond/papers/2014b--Recollections-AGroth.pdf 
  35. ^ Dieudonné 1989, p. 306.
  36. ^ Kleiman, Misconceptions about KX, L'Enseignement Mathematique.





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