棘皮動物 分類

棘皮動物

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/06 01:28 UTC 版)

分類

棘皮動物は、ウミユリ類、ヒトデ類、シャリンヒトデ類、クモヒトデ類、ウニ類、ナマコ類の6つのグループに分けられる。現生する棘皮動物はこれら6綱のみだが、その他多くの絶滅した綱が知られている。化石古生代初期から継続的に発見され、その量は動物化石としては多い方に属する。ウミユリを主成分とする石灰岩もあるほどである。

棘皮動物に含まれる各群について様々な分子系統学的研究がなされているが、ウミユリ類が最も早く分岐したという点以外には、各グループ間の類縁関係について一致した結果は得られていない。これは、棘皮動物の進化の過程で、多くの収斂や逆転が起こったためと考えられる。

棘皮動物とその他の動物群の関係では、新口動物であること、発生等の証拠から祖先が左右対称動物であることなどが推察されるが、はっきりしたことはわかっていない。

ヒトデ綱(海星綱)Asteroidea

ヒトデ類は約1500種。体の下側にある口を中心にして、5本またはそれ以上の放射相称の脚・腕をもつ、星型をした棘皮動物である。たいていは、5の倍数からなる放射相称の脚をもつ。「脚・腕」に見える部分も胴の一部であり、その中にも消化器生殖器が入り込んでいる。伏せた状態で海底を這い、全身運動とともに、「足・腕」下面にある歩帯溝に並んだ管足で運動する。表面を覆う皮膚は頑丈で、皮下には筋肉や結合組織で結ばれた骨盤が外骨格を形成する。消化管は盤の中央に開いた口から背中頂点の肛門まで結ばれ、は体外に放出して巨大な餌を包み込んで消化できる。

シャリンヒトデ綱 Concentricycloidea

シャリンヒトデ類は1986年に発見された棘皮動物のグループで、2008年現在では3種確認されている。直径1cm弱の円盤状をした体の周囲に縁棘と呼ばれる細かい脚が多数、同心円状に並んでいる。他の綱にみられる放射状の水管系がなく、外側環状水管に連結した管足が露出する。消化管は退化的で、最初に発見されたウミヒナギクは胃を持たない。ヒトデ綱ニチリンヒトデ目の1科として分類される場合もある。

ウミユリ綱 Crinoidea

ウミユリ類は約650種。形状が植物ユリに似ていると考えられたことから名付けられた。固着性のウミユリは、主に深海の海底に棲息する。節により構成される茎(柄)があり、柄の端には大きく膨らんだ萼がある。萼の周りには羽状の腕が多く配置されており、萼の中央には口がある。消化管は体内で反転し、肛門も上向きに開く。通常は海底に直立し、水流に向かい合う形で広げた多くの腕を用いて、水中に含まれる微細な有機物片を捕まえ、萼中央にある口まで運び込み、餌とする。一部の種では固着生活を送るが、現生種の9割を占めるウミシダ目は、成体になると柄を切り離し、必要に応じて海中を遊泳する。残る有柄ウミユリ類でも、全身で匍匐移動する種もいる。

ウニ綱 Echinoidea

ウニ類は約870種、五放射相称の球状~扁平な殻をもち、その周囲が棘で覆われている。脚部を持たないが、棘と管足を用いて海底を移動する。棘は防御・移動のための運動器官のみならず、感覚器官の役割も持つ。体の下側にある口には5本の鋭い歯をもち、これを用いて海草などを食べる。消化管は体内で螺旋構造となり、頂点付近に肛門を開く。水管系の入口となる多孔板や生殖巣は上に開く。

ナマコ綱 Holothuroidea

ナマコ類は約1500種、ほかの現生種と違い、側転し、五放射相称の円筒状の形状をしている。腹側の管足が並んだ3列の歩帯と全身の5列の縦走筋で匍匐運動を行い、接地しない背側の2列の歩帯は疣足に退化している。前後に口と肛門をもち、生殖巣は口側、ほかの綱では未発達の呼吸樹は肛門側に開く。骨格はあまり発達しておらず、頑丈なクチクラ質の皮下で骨片となって分散しており、自在に結合・分散して硬化・軟化できる。

クモヒトデ綱(蛇尾綱)Ophiuroidea

クモヒトデ類は約1500種。円盤状の体を中心に、細長い腕が放射状に伸びた形状をしている。ヒトデ類と異なり、盤と腕が明確に区別できる。内臓はすべて盤に収まり、管足は盤のみから露出する。消化管は胃を終点とするため、下向きの口はあるが肛門がなく、排泄は呼吸や生殖と兼ねて生殖嚢で行う。腕は管足が露出せず、節構造の殻で覆われている。ほぼすべての全身運動を担う反面、容易に自切・再生できる。

ウミリンゴ綱 Cystoidea†

ウミリンゴ類は、オルドビス紀からデボン紀に棲息していた。

層状の板から成る柄を持ち、下部は分枝した根状で、上部には多角形の板で出来た萼部があり、その上部に口と肛門があった。ウミユリと同様に、固着生活をしていた。

ウミツボミ綱 Blastoidea†

ウミツボミ類は、シルル紀からペルム紀に棲息していた。

ウミユリ、ウミリンゴ同様の構造の柄を持ち、その一端は分枝し海底に固着していた。もう一方の端には萼部があり、これはおよそ15個の板で構成され、また萼部には口及び肛門があった。萼部からは多数の腕が伸びていた。

座ヒトデ綱 Edrioasteroidea†

座ヒトデ類は、カンブリア紀から石炭紀に棲息していた。

形状は平たい球状又は半球状で、海底や腕足類に固着していた。

エオクリノイド綱 Eocrinoidea†

原始ウミユリ類とも呼ばれ、カンブリア紀からシルル紀に棲息していた。

太い柄の上端がカップ状に拡大し、そこから5本の腕が上方に伸びていた。

パラクリノイド綱 Paracrinoidea†

オルドビス紀中期に棲息していた。

エドリオブラストイド綱 Edrioblastoidea†

オルドビス紀中期に棲息していた。

パラブラストイド綱 Parablastoidea†

オルドビス紀初期から中期に棲息していた。

螺板綱 Helicoplacoidea†

螺板綱は、カンブリア紀初期に棲息していた。丸みのある葉巻型で、口部が側面にある。

蛇函綱 Ophiocistioidea†

蛇函綱は、オルドビス紀前期からペルム紀後期に棲息していた。特有の口器を持つ。

円盤綱 Cyclocystoidea†

円盤綱は、オルドビス紀から石炭紀にかけて生息していた。円環状に並ぶ骨片を持つ。


  1. ^ a b c d e f 藤田敏彦『動物の系統分類と進化』裳華房〈新・生命科学シリーズ〉、2010年4月28日。ISBN 978-4785358426  pp.169-172.






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