東武モハ5300形電車 主要機器

東武モハ5300形電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/04 02:42 UTC 版)

主要機器

「私鉄郊外電車設計要項」においては、制御器や主電動機等の主要機器についても規定が設けられており[10]、本形式において採用された主要機器は一部を除きいずれも同要項において定められた指定機種である[6]

主制御器

国鉄の制式機種である電空カム軸式CS5を採用した[6]。戦前の東武においてはイングリッシュ・エレクトリック (E.E.) 社のデッカーシステムの系譜に連なる電動カム軸式制御器を主に採用しており、ゼネラル・エレクトリック (GE) 社製Mコントロールの系譜に属する電空カム軸式制御器は前述6300系において採用実績があるのみであった。要項における指定機種にはデッカーシステムの系譜に連なる電動カム軸式制御器(東洋電機製造ES-516)が存在したにもかかわらず[10]、本形式において敢えてCS5を採用したことについては、6300系と仕様を揃える意図があったものと推測されている[6]

なお、モハ5300形ならびに同形式と編成されるクハ330形はCS5制御器に対応した3段のノッチ刻みを持つMC1主幹制御器を採用したが、クハ430形については従来車との併結の必要性から9段のノッチ刻みを持つM-8D主幹制御器を採用しており、両者の制御シーケンスに互換性がなかったことからモハ5300形・クハ330形との併結は不可能であった[5]

主電動機

東洋電機製造TDK-528/9-HMを電動車1両当たり4基搭載する[6]。同主電動機の端子電圧750V時における定格出力は110kWで[注釈 13]、出力そのものは戦前にデハ10系等において採用実績を有する日立製作所HS-266と同等であるものの、全界磁時における定格回転数はHS-266の1,000rpmに対して1,188rpmと約20%高い回転特性を持つ主電動機である[11]。歯車比は3.71 (63:17) 、駆動方式は吊り掛け式である[6]

本形式は東武におけるTDK-528系主電動機の初採用例となったが、その後同主電動機はその高回転特性が買われて特急用車両5700系を始めとして主に優等列車に用いられる車両へ広く採用された[6][11]

台車

モハ5300形は住友鋳鋼所製の鋳鋼組立型釣り合い梁式台車KS33E(固定軸間距離2,300mm)を、クハ330形・430形は国鉄払い下げ品の省形釣り合い梁式台車TR11(同2,450mm)をそれぞれ装着する[6]軸受は両台車とも平軸受(プレーンベアリング)仕様である[要出典]

なお、前者は私鉄郊外電車設計要項において定められた指定機種であったものの、後者は指定機種には含まれていない[要出典]。これはモハ5300形・クハ330形の新製に際して12両分のKS33E台車の割り当てを受けたものの、本来クハ330形向けに新製された4両分を従来車の台車換装用途に供し、クハ330形については中古台車を装着させたことに起因する[4]

制動装置

日本エヤーブレーキ社(現・ナブテスコ)が開発したA動作弁を用いるAMA / ACA自動空気ブレーキである[6]制動筒(ブレーキシリンダー)を車体側に1両当たり1基搭載し、制動筒に接続された制動引棒(ブレーキロッド)によって前後台車計4軸の制動を動作させる、落成当時としては一般的なブレーキワークが採用されている[要出典]

その他

パンタグラフは国鉄制式のPS-13をモハ5300形の運転台寄りに1基搭載する[要出典]また、電動発電機 (MG) や電動空気圧縮機 (CP) などの補助機器類もモハ5300形へ集中搭載されており、電気的には単独走行も可能な仕様であった[要出典]


注釈

  1. ^ 同要項に基いて新製された車両群を総称して「運輸省規格形」と称する。
  2. ^ 本形式導入の前年には、20m4扉車体を持つ通勤形車両である国鉄63系割り当て車(東武6300系)が入線している。
  3. ^ 入籍直前に改番が実施されたことから、書類上は当初よりモハ5300形・クハ330形として新製・竣功したという扱いが取られている。
  4. ^ また、同10両については運輸省規格形として新製割り当てを受けて製造されたものではないことから、運輸省規格形車両の範疇には含めないとする資料(『鉄道ピクトリアル 第570(1993年1月)号』 p.89)も存在する。
  5. ^ a b c 木造中型客車のサハ化改造車
  6. ^ a b 木造雑形客車のサハ化改造車
  7. ^ 昭和2 - 4年系前期合造車型
  8. ^ a b 昭和2 - 4年系後期普通車型
  9. ^ a b 昭和2 - 4年系前期普通車型
  10. ^ これらUF12台枠は国鉄における戦災被災車両からの発生品であることから、本形式を広義の戦災復旧車両であるとする資料(『鉄道ピクトリアル 第171(1965年6月)号』 p.35)も存在する。
  11. ^ 鉄道省工作局車輛課 編『車輌形式図 客車下巻 大正14年版』掲載図面より。
  12. ^ 東武における従来の駅ホーム高は920mmもしくは760mmに設定されていた。一方6300系の床面高は1,200mmであり、ホーム高760mmの駅が存在する区間への運用に充当することは困難であることから、東武においては同系列入線を機会に全駅のホーム高を国鉄における大都市電車区間に存在する駅と同一の1,100mmにかさ上げする改良工事を順次施工した。同工事は1950年代中盤に完了し、以降従来車に設置されていた客用扉ステップについても順次撤去された。
  13. ^ TDK-528系主電動機における528/5-F以降の機種は、一部の例外を除いていずれも定格出力112.5kW(端子電圧750V時)を公称するが、東武においては定格出力110kW(同)の主電動機として取り扱われた。
  14. ^ 換装対象となったモハ5440形は計5両であり、本形式の改造数と一致しない。不足分の手当てについては不明である。
  15. ^ a b 豊電業US-531・東洋電機製造ES-530ともE.E.社の国内ライセンス製品であり、基本仕様は同一であった。
  16. ^ 当時モハ3200形の空番は3206 - 3209の4両分しかなく、3210はモハ3210形のトップナンバーとして既に使用されていたことによる。

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