手形 手形の起源

手形

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 19:29 UTC 版)

手形の起源

日本における現行の手形制度は、日本独自の制度が発展したものではなく、明治以降、ヨーロッパの制度を取り入れて発展させたものである。

手形の種類

為替手形(かわせてがた)
手形の振出人(発行者)が、第三者(支払人)に委託し、受取人またはその指図人に対して一定の金額を支払ってもらう形式の有価証券のことである。略称は為手(ためて)。遠隔地との取引をする際(特に輸出入)、現金を直接送ることの危険を避けるために用いられることが多い。
日本の商慣行では、江戸時代の遠距離取引においては為替の手段として今日の為替手形と同様の物が用いられていた。水戸黄門漫遊記でも、黄門一行が路銀を受け取る手段として度々登場する。現在では、銀行間口座振替(一般に言う口座振込)が主流となり国内取引の決済手段としては、ほとんど用いられない。このことから平成28年度の日本商工会議所主催の簿記検定から「2級(および3級)においては、手形の取引は約束手形のみとなり、為替手形の取引は出題されません」とされた。
また債権者が債務者に引き受けさせ期日に支払いをさせるといった融資の手段として用いられ、金融機関からの融資においても中長期の割賦返済を前提とした証書貸付に対し、手形貸付と呼ばれる貸付手段である。
約束手形(やくそくてがた)
手形の振出人(発行者)が、受取人またはその指図人に対して、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する形式の有価証券のことである。略称は約手(やくて)
手形は、2 - 3か月程度の中期信用を担う手段として広く利用されていることもあり、日本国内で流通する手形のほぼすべてが約束手形である。
約束手形の一つに、自動車など高額商品の分割払い用の手段として「マル専手形」がある。商品購入の際に金融機関で専用の当座預金口座を開設し、口座に入金後分割払い分の手形を振り出し、販売者に渡すものである。1980年代まで自動車購入時の分割払いに使われていたが、自動車ディーラー債権回収業務の負担が増大したことなどから、1990年代以降自動車メーカー系ファイナンス会社や信販会社、当の「マル専手形」を扱った銀行など金融機関によるオートクレジットやオートローンの拡大により、制度としては存在するものの実際の利用はほとんどなくなっている[1]。このような状況から、2020年ごろから「マル専手形」の新規取り扱いを中止する金融機関が出ている[2][3]
なお、2021年2月経済産業省は、2026年をめどに約束手形を廃止する方針を決定している[4]
私製手形
手形法に基づいて発行された手形のうち、金融機関の指定する特殊な様式によらないものをこう表現する人がいる。

このほか、白地手形の項目も参照。

手形の使用目的

奈良県下市町は日本の商業手形発祥の地として知られる

手形は、以下の目的で使用される。

商業手形(代金延べ払い)
手元に現金がない場合に、約束手形を振り出して代金に充てる方法である。企業取引は通常信用売買によってなされるが、通常の売掛債権よりも手形債権とした方が回収が確実視される。また、満期日まで実際の支払い期限が延長されるため、実質的に代金延べ払いの機能も有する。簿記用語(勘定科目)においては、受取手形あるいは支払手形と呼ばれている。
手形貸付
金銭を貸し付けるにあたって、借用書の代わりに、借主から貸主を受取人とする約束手形を振り出させることをいう。借主が支払期日に手形を決済出来ない場合は不渡りとなり、6か月以内に2回不渡りを出すと銀行取引停止処分となり倒産に追い込まれるため、最優先で決済することとなる。印紙代の節約にもなり、しばしば利用される。
融通手形
まず、経済的信用のある者が約束手形を振り出したり、手形の裏書人になる。この手形をすぐさま金融機関において手形割引を受けて現金を確保させるために資金繰りに窮した者へ渡すという使い方をいう。手形振出の元になる経済的関係(原因関係)がなく、手形の支払いが拒絶されるなど、しばしば紛争を生じる。

注釈

  1. ^ 戦国時代は「手形」(てぎょう)という証文が存在した。これは合戦の際、敵方に殺されそうになった武者が、命乞いの為に紙または布に自らの掌に血を付けて押し当て手形を作成し、後日お金を渡す証としてそれを相手に渡すものである。助けた相手は合戦が終わった後にその手形を持ってそれを発行した武者のもとへ赴き約束のお金を貰った。

出典







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