手形 手形の使用方法

手形

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 19:29 UTC 版)

手形の使用方法

日本においては、手形を利用しようとする者は、まず銀行との間で当座勘定取引契約を結び、一般社団法人全国銀行協会が制定する「統一手形用紙」を受け取る。本来、手形要件(手形として機能させるために必要な法定された記載事項)さえ満たしていればよく、手形用紙に制限はない。しかし、統一手形用紙を用いなければ銀行は割引などの取引に応じてくれないため、実務上は統一手形用紙による手形を利用することがほとんどである。

しかし、一部貸金業者では、自社で私製手形を作成(統一手形用紙によらないものをこのように呼ぶ)し、金銭消費貸借証書の代用とする事もある。これは、印紙を節約できる場合があるほかに、証拠が書証に限定される手形訴訟の提訴により、迅速に回収できる可能性があるためである。ただし、申立が裁判で却下された例もある。

手形法理総説

手形(為替手形も含む)は、後述のように完全有価証券とされることから、有価証券法の基本法理を示すものとして手形法学の研究は各国で盛んである。以下は日本における手形法学に基づいて説明を加える。

手形の法源

ジュネーブ統一手形法条約への加盟によって制定された手形法によって規定されており、加盟国の間では基本的に同様の法規が適用される(しかし、他の加盟国においては、手形そのものは日本ほど盛んに用いられてはいない)。また、実務上は全国銀行協会連合会が制定する当座勘定規則と銀行取引約定書の規制も重要である。

手形の法的性質

手形は、証券と権利が強固に結合されており、その権利の発生・移転・行使というすべての段階において手形という証券を必要とするため、完全有価証券といわれる。

手形は、以下のような性質のすべてを持つ有価証券である。

要式証券性
証券の記載と権利の内容を一致させる前提として、証券の記載が法定的に定型化されていること。
無因証券性と文言証券性を認めるための前提である。
文言証券性
証券の記載通りの効果が生じること(設権証券性からいって当然ではある)。
これにより手形取得者は簡易な確認だけで証券の記載通りの効果を享受できるため、取引の安全に資する。
設権証券性
振出によって既存の権利とは別個の手形上の権利が生ずること。
無因証券性
手形の効力が原因関係の効力によって左右されないこと。
指図証券性
権利の移転のために裏書を要するということ。
民法における指名債権譲渡の特則として、簡易迅速な取引を可能とする。
呈示証券性
履行請求のためには証券を呈示しなければならないということ。
高度の流通性を持つ手形において速やかな権利者確定が可能となる。
受戻証券性
証券との引き換えによってのみ債務履行を請求できるということ。

手形取引の安全

手形は、高度の流通性が予定されているため、取引の安全(手形債権者を不測の損害から守る)が法律ないしその解釈によって特に図られる。手形に対する信頼が損なわれれば手形制度は存立できないため、通常の商取引より手厚く保護される。また、後述の不渡りを起こした者に厳しい処分がとられるのもこのためである。

手形関係

手形をめぐる法律関係を手形関係という。手形の発生原因となる法律関係である原因関係と区別される。手形関係には振出・裏書・引受(為替手形の場合)などがある。

手形の振出

通説によれば、手形に署名し相手方に交付することを手形の振出という。

手形理論手形要件も参照のこと。

手形の譲渡

手形は、理論上は貨幣に匹敵する流通性をもつため、受取人(手形の振出を受けた者)から裏書譲渡によって転々と流通し、その所持人を変えてゆくことが想定されている。ただし、現実の手形取引においては、所持人が頻繁に変わるような手形は敬遠されるため、転々と流通することは稀である。

裏書譲渡の項目を参照のこと。

手形金の支払

満期が到来したら、そのときの手形の所持人は振出人(手形を振り出した者)に支払いを求めるため、手形を呈示する。すると、振出人から手形に記載された金額が、呈示された手形と引き換えに支払われる。

手形債務者が請求者に手形金の支払を拒むことができる事由を手形抗弁といい、手形抗弁がある場合は支払義務を負っていても支払を拒むことができる。詳しくは、手形抗弁後者の抗弁を参照。

満期に支払がなされなかった場合は、2次的な手形債務者に対する遡求が問題となる。また、1次的な手形債務者については、経済的には後述の不渡りの問題が生じる。なお、白地手形も参照。


注釈

  1. ^ 戦国時代は「手形」(てぎょう)という証文が存在した。これは合戦の際、敵方に殺されそうになった武者が、命乞いの為に紙または布に自らの掌に血を付けて押し当て手形を作成し、後日お金を渡す証としてそれを相手に渡すものである。助けた相手は合戦が終わった後にその手形を持ってそれを発行した武者のもとへ赴き約束のお金を貰った。

出典







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