手形 手形を巡る経済現象

手形

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 19:29 UTC 版)

手形を巡る経済現象

手形は、前述のようにさまざまな使用目的をもつが、満期(支払期日)に手形金を支払えない状態(不渡り)に陥ることもある。6か月以内に2回手形が不渡りになった場合には、以後2年間、銀行取引が停止される。これによって約束手形の振出人は、手形を利用した金融手段の途が閉ざされ事実上の倒産に追い込まれるため、必死の金策に走るなど不渡りの回避策に悩まされることとなる。

問題なのは、欧米などの国では、訴訟費用が比較的に安い(数十万円程度の被害額であれば、簡易裁判所で弁護士を通さずに個人で解決できる)ことを反映して、信用売りは大抵は売掛金で行われる。一方で、日本においては、弁護士および裁判官が極端に少ないことを反映して、訴訟費用が高い。このことを反映して、小額の商取引でも手形で行われる。[要出典]このため、日本においては、特に一企業の不渡りが関連企業の不渡りを呼ぶという連鎖倒産の危険を、常にはらんでいる。欧米においては、あくまでも高額の取引においてのみ手形を使い、さらにその手形に保険をかけるという手段で、不意の資金不足を防ぐという処置がとられている。よって、取引先の倒産により営業の採算が取れなくなる場合の倒産は避けることはできないが、手形の不渡りによる自動的な倒産という実際の経済活動と遊離した法的な倒産が避けられる。

手形の支払期日延長

約束手形の支払期日までに資金が調達できない場合、振出人が、受取人またはその指図人もしくは手形所持人に対し、支払期日の延長を依頼することがある。この支払期日の延長を俗に「手形のジャンプ」という[7]。方法としては、振出人がその約束手形を回収すると同時に、新たな支払期日を設定した約束手形を振り出す(講学上の書替手形)、または、約束手形の支払期日を訂正するものがある。

約束手形の支払期日延長は、振出人にとっては自己の決済資金不足(予測)を露呈するという信用低下のおそれを犯してまで、緊急・想定外の行為として行うのであり、その後の決済不能(不渡り)、倒産・破産という事態に進行する前兆であるとも言える。従って受取人はこれに応じるかどうかは慎重に行うべきものであるが、応じないことにより一気に資金繰り悪化に至るケースや、逆に、応じたことにより他の債権者に後れ、自己の債権を回収できないケースもあり、まさにケースバイケースである。

手形の不渡り

手形を振り出した企業の経営状態が厳しくなり、手形の決済資金が底を尽き、決済が出来なくなったことを、手形の不渡りという。これは銀行などが資金的な援助をしなくなったということで、実質的な倒産状態に陥っていることを意味する。不渡り2回目で銀行取引が停止され、いわゆる「倒産」となり、手形は価値の消滅した紙くず同然のものとなる。

詳しくは、不渡りを参照。

パクリ手形

手形の割引先の斡旋を依頼して、当該手形を他人に託したところ、持ち逃げされるなどして手形を盗取されてしまうことや、その手形自体をさして、パクリ手形という。「パクる」という言葉はあまりに俗で法律用語としてふさわしくないように思われるが、手形取引の社会においては「パクリ手形」や「パクる」という言葉は定着しているようである。手形・小切手法に関する教科書などにも登場する[8]。また、経済界においても、「パクリ屋」が手形専門の詐欺師を指す言葉として定着している。


注釈

  1. ^ 戦国時代は「手形」(てぎょう)という証文が存在した。これは合戦の際、敵方に殺されそうになった武者が、命乞いの為に紙または布に自らの掌に血を付けて押し当て手形を作成し、後日お金を渡す証としてそれを相手に渡すものである。助けた相手は合戦が終わった後にその手形を持ってそれを発行した武者のもとへ赴き約束のお金を貰った。

出典







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