広島市
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概要

世界史上初めて核兵器(原子爆弾)で爆撃された都市として、世界的に知名度が高い。それ故に、「国際平和文化都市」としても一定の影響力を持っており、広島市長の発案で創設された「平和首長会議」には150を超える国から4,600以上の自治体が加盟している[1]。第二次世界大戦以前には「軍事都市」であった歴史とは対照的である。
古代・中世には現在の広島市街地がある太田川デルタ(三角州)は形成されておらず、安芸国の中心としては国府が現在の安芸郡府中町または東広島市西条にあったと推定され[2]、太田川中下流域の祇園[3]・戸坂[4]から可部[5]にかけて荘園、郷が広がっていた。16世紀末、戦国武将の毛利輝元が太田川デルタを干拓して築城を開始したのをきっかけに地域の中枢機能が太田川デルタへ移り、都市としての広島の発展が始まった。江戸時代には、広島藩42万石の城下町として藩主浅野氏のもとで発展した。明治時代に入ると、陸海軍の拠点が集中する軍事都市(軍都)となり、特に日清戦争時には広島大本営が置かれて明治天皇が行在し、第7回帝国議会は広島市で開かれるなど、臨時の首都機能を担った[6]。
第二次世界大戦末期の1945年8月6日、アメリカ軍の戦略爆撃機B-29「エノラ・ゲイ」によって広島市中心部の相生橋上空に原子爆弾「リトルボーイ」が投下され、きのこ雲が立ち上り、市街地は一瞬にして破壊された。投下当日中に数万人、1945年末までに推計13万人の人命が奪われ、生存者も火傷痕(ケロイド)、放射線後遺症、精神的後遺症(PTSD等)、遺伝への不安に生涯苦しむなど、市民が経験した苦痛は人類史上類を見ないものであった。
1945年の原爆投下後は一時的に死亡者が急増して人口が大幅減少した。広島市の人口の20パーセント近くが減少したが、戦後は重工業やマツダなどの自動車産業を中心に見事復興し、現在では日本の主要な工業都市となっている。1980年4月1日には札幌市・川崎市・福岡市(3市とも1972年4月に指定)に続いて全国で10番目となる政令指定都市に指定された。1985年3月に人口が100万人を突破し、現在では全国の市で10番目の人口を抱える(→日本の市の人口順位)。中四国地方最大の人口を誇り、地域内では唯一の100万都市である。また、札幌市・仙台市・福岡市とともに地方中枢都市の一角を担う存在である。地方中枢都市の中では唯一(狭義の)地下鉄が通っておらず、市内交通は路面電車の広島電鉄とバスが担っている。特に路面電車は規模・乗車人数において国内最大であり、日本一の路面電車の街となっている。
名称について
広島市は別名、「3Bの街」とも言われている[7]。これは、
ということに由来する。
東で東広島市と、北で北広島町と隣接している。なお、北広島市は広島県ではなく北海道に存在する。北広島市が北海道にあるのは、明治時代に広島県人が北海道札幌県札幌郡に入植し、それにちなんで自治体名を札幌郡広島村(その後広島町、北広島市に名称変更)としたためである。
市名の由来
広島という名称は、戦国時代末期の1589年、この地を支配した戦国大名の毛利輝元が築城に際して命名した。第二次世界大戦後に日本語の表記が新字体・現代仮名遣いになる以前は、「廣島(廣嶋)」と表記した。
輝元の時代、この地は太田川河口デルタの形成途上にあり、箱島(今の白島地区)や日地島(比治山)などの中洲が点在する五箇庄(ごかのしょう)と呼ばれていた。これらの中で最も広い島(実際には2番目)に築城したことから「広島」と命名したとされるが、輝元には別の意図もあった。広島築城事業は、当時112万石[8]の「西国の雄」毛利家が、本拠地をそれまでの吉田郡山城から移して新たに築こうという大事業であり、城の名称には家運長久の願いが込められた。毛利氏は代々、大江広元の末裔であることを誇りとしており、「元」のほか「広」も諱に使用する字の一つとしていたことや「広大」「末広」の良縁起から「広」の字を冠することとし、「島」については城普請案内を務めた普請奉行の福島元長の名字からとって命名した[9]。
- ^ 平和市長会議公式サイト 加盟都市分布図/加盟都市数、2011年4月1日現在。
- ^ a b 岸田裕広 編『広島県の歴史』(山川出版社 1999年)33~34頁
- ^ 右岸、現安佐南区
- ^ 左岸、現東区
- ^ 現安佐北区
- ^ この外にも、出征拠点であった宇品港(現広島港)や三菱重工業などの軍需工場が集積し、大日本帝国陸軍第5師団(第二次世界大戦末期には第2総軍も)の本拠地になった。近隣の呉市には、大日本帝国海軍の呉鎮守府・呉軍港・海軍工廠が置かれ、ここでは世界最大の戦艦でもある大和が造られた。広島湾には江田島に海軍兵学校(現在は主要施設が海上自衛隊幹部候補生学校と海上自衛隊第1術科学校に継承使用されている)があり、戦前における軍事拠点としての重要性は日本有数だったといってよい。
- ^ 日本銀行広島支店 「県内経済の特徴」
- ^ 天正19年に豊臣秀吉から発給された領知朱印状・領知目録 「安芸 周防 長門 石見 出雲 備後 隠岐 伯耆三郡 備中国之内、右国々検地、任帳面、百拾二万石之事」『毛利家文書』天正19年(1591年)旧暦3月13日付(『大日本古文書 家わけ文書第8 毛利家文書之三』所収)。内訳は、 2万石 寺社領 7千石 京進方(太閤蔵入地) 6万6千石 羽柴小早川侍従(隆景)、内1万石無役 11万石 羽柴吉川侍従(広家)、内1万石無役 隠岐国 羽柴吉川侍従 10万石 輝元国之台所入 8万3千石 京都台所入 73万4千石 軍役 都合112万石 (『当代記』慶長元年「伏見普請之帳」安芸中納言の項)
- ^ “広島の地名の由来”. www.cgr.mlit.go.jp. 2019年10月29日閲覧。
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