帝国図書館 参考事務

帝国図書館

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 04:47 UTC 版)

参考事務

レファレンスサービスは上野図書館の頃から係員により提供された。稲村[14]は国立国会図書館に併合された時期に参考事務に携わった館員の述懐として、1964年(昭和39年[18])、1967年(昭和42年[19])の2資料を紹介した。

庁舎

明治建設部分。左・閲覧室、右・書庫

帝国図書館の庁舎は移転を経て上野公園の東京音楽学校(現・東京芸術大学)敷地内に用地が確保され、1908年に第一期工事が完成した。設計は久留正道らによるもので[20]鉄骨補強の煉瓦造り、規模は地下1階地上4階建てである。現存し、東京都選定歴史的建造物に指定されている。

当初計画では、広大な中庭を内側に取り込んだロの字型の広大な建造物で、全体が完成すれば東洋一の規模を誇る大図書館となる予定であった。しかし、日露戦争直後の当時の財政状況から計画通りの完成は見送られ、当初計画の4分の1が完成したのみで終わった。和風要素を入れる案もあったが実行されていない。

昭和増築部分

明治の庁舎は1923年の関東大震災を、蔵書の一部が焼失、破損する被害を受けたものの乗り切る。ただし建物の疲弊は著しく[15]1927年増築工事に着工、構造を鉄筋コンクリートに改修した。第二期工事は1929年に竣工し、左(北側)部分の一部が完成、依然として当初計画の3分の1にも満たないものの[21]、現在まで見られる姿が完成する。

現存庁舎は、当初計画のロの字のうちの正面にあたる東側の閲覧室部分と南側の書庫の一部にあたる。閲覧室部分は3階に目録室と一般閲覧室があり、男性の一般閲覧者はここで図書を閲覧した。2階は女子閲覧室と登録した研究者のみに開放される特別閲覧室にあてられ、1階には貴賓室や館長室、職員のための作業室があった。しかし、大正期には早くも手狭となり、敷地内に木造館舎を建てて事務室など一部を移さねばならなかった。第二期工事で追加された左側(北側)は事務室・ホールなどである。

2000年から2002年に段階的に行われた国際子ども図書館開館にあたり大規模な改修が行われ、地下部分が免震層に改められた。建物は建築遺産として極力保全が図られ、空調などの機械動線と廊下・エレベーター・階段などの閲覧者動線を兼ねたガラス張りのラウンジ棟が背面部分を覆うように加えられた。これにより、歴史的建造物の部分はほとんど保全され、明治の雰囲気を色濃く残す正面東側から見た外観や内装はほとんど残されたまま、現在の建築基準に適合した近代的な図書館に生まれ変わった。

脚注


注釈

  1. ^ 江戸時代の資料[3]を閲覧する幸田成友の写真[4]が伝わる。
  2. ^ 当時、同じ湯島聖堂の敷地にあった東京師範学校附属小学校(旧東京高等師範学校附属、現・筑波大学附属小学校)に通学していた幸田成友幸田露伴の弟)は同館を利用し、その様子を書き残している
    小学の上級の頃から東京図書館へ出入した。これは現在上野公園内にある帝国図書館の前身で、御茶の水の旧聖堂(大成殿)を文庫に充て、バラック式の仮閲覧室が設けられてあつた
    [9]

出典

  1. ^ a b c d 国立国会図書館 2003, p. 1
  2. ^ 行村 建、小野 浩之、明石 周平、今井 貴文、村上 寛「蔵書の宝庫 国立国会図書館関西館」『電気学会誌』第125巻第9号、2005年、553-556頁、ISSN 1340-5551NAID 130000082198 
  3. ^ 幸田 1954, pp. 1–29
  4. ^ 三田史学会 1954, 挿絵
  5. ^ 東京市市史編纂係 編「12 下谷区」『東京案内』 下巻、裳華房、1911年4月、444-446頁。doi:10.11501/900276https://dl.ndl.go.jp/pid/900276/1/2382023年7月28日閲覧 国立国会図書館デジタルコレクション、インターネット公開。
  6. ^ 岩井千華『わが国の公共図書館における1960年代以降の〈文化活動〉の成立と普及に関する研究』 九州大学〈博士(芸術工学) 甲第15574号〉、2021年。hdl:2324/4475134NAID 500001464002https://hdl.handle.net/2324/4475134 
  7. ^ a b 新撰東京実地案内』薫志堂、1893年https://dl.ndl.go.jp/pid/9939942023年7月28日閲覧  国立国会図書館デジタルコレクション、インターネット公開。
  8. ^ 東京国立博物館 - 館の歴史「3.書籍館と浅草文庫
  9. ^ 幸田 1948, pp. 64–66
  10. ^ 帝国図書館官制」『帝国図書館一覧』帝国図書館、1901年2月、3-4頁。doi:10.11501/897115https://dl.ndl.go.jp/pid/8971152023年7月28日閲覧 明治34年刊、国立国会図書館デジタルコレクション、インターネット公開。
  11. ^ 小川一真「列車、食堂車内部(105頁-)」『東京風景』(PDF)小川一真出版部、1911年4月、挿絵頁https://dl.ndl.go.jp/pid/7641672023年7月28日閲覧 国立国会図書館デジタルコレクション、インターネット公開。
  12. ^ 国立国会図書館 2003, p. 3
  13. ^ 『官報』第6816号、明治39年3月23日
  14. ^ a b 稲村徹元「戦前期における参考事務のあゆみと帝国図書館 : 資料紹介「読書相談ノ近況」(昭和十年六月帝国図書館)」(pdf)『参考書誌研究』3 バックナンバー目次(創刊号~9号)、国立国会図書館、1971年9月10日、ISSN 1884-99972023年7月28日閲覧 
  15. ^ a b 国立国会図書館 2003, p. 4
  16. ^ 国立国会図書館 1979
  17. ^ 足立巻一『やちまた』 下、朝日新聞社〈朝日文芸文庫〉、1995年、210頁。全国書誌番号:95050891 
  18. ^ 神田秀夫「司書と辞書(特集・暮しの中の辞書)」『言語生活』第156号、筑摩書房、1964年、50-56頁、ISSN 0435-2955NAID 40001067091 
  19. ^ 国立国会図書館業務こんだん会『上野図書館の経験を語る(謄写版)』資料5、国立国会図書館、1967年。 NCID BA62642791 
  20. ^ 国立国会図書館 2003, p. 2
  21. ^ 国立国会図書館 2003, p. 5


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