地域おこし 「地域振興の成功例」への懐疑

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地域おこし

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/09 03:17 UTC 版)

「地域振興の成功例」への懐疑

「地域振興の成功例」として取り上げられているものの中に、実は成功していないものがあるという指摘がある。

久繁哲之介の指摘

久繁哲之介は、「専門家が推奨する成功事例のほとんどが、実は成功していない」「稀にある『本当の成功』は、異国や昔の古い話であり、しかも模倣がきわめて難しい」としている。

長谷川計の指摘

長谷川計は、一度成功例とされた自治体には、全国的に注目されたため後に引けなくなり、実際は活性化してないにもかかわらず公的資金を投入して振興している所もあると指摘した。

市川虎彦の指摘

市川虎彦はこれらの議論を基に、人口・雇用の観点から地域活性化を再考した[15]

木下斉の指摘

まちビジネス事業家の木下斉も、「成功事例」とされるものの中に事実上失敗した(自治体の財政支援に頼っている)ものがあるという立場をとっている。また、失敗例を成功だと思い込んで複数の地域が模倣することで「全国レベルでの失敗の連鎖」が生じてしまうとしている[16]

市川虎彦の指摘。(+南予地方限定の分析)

社会学者の市川虎彦は、「地域おこしに成功した」という既存の報告に疑念を示し、人口減少が激しい愛媛県南予地方の自治体における1960年から2010年にかけての人口推移や産業の盛衰を検証した。その結果から、「地域おこしに成功した」とされる市町村でも人口が減少しており、逆に「地域おこしの成功例」として名前が上がらない大洲市南宇和郡が人口維持に一時成功していた、とした。大洲市などではなく、人口減少が激しい他の自治体が「地域振興の成功例」とされた理由として、宮本憲一の外来型開発批判や、コンサルタントらが介入(助言・指導)する余地のある領域での事例が積極的に(意図的に、恣意的に)取り上げられたことが原因ではないかと推測した[15]

なお、市川虎彦は南予地方で人口が増えた地域に共通することは工場誘致や漁業振興によって雇用を増やしたことだ、とし、(南予地方しか分析していないのだが、一挙に、日本の一般論にまで論理を飛躍させ)「地域振興には新しい産業の勃興が不可欠だ」と(まで)主張した[15]


注釈

  1. ^ 一般概念としては、「community vitalization」となる。コミュニティ自治体、街、村)がその名を掲げて「~ vitalization」「~ town vitalization」「~ village vitalization」のように使うことが多い。なお、アメリカでは、日本と状況が異なるため、都市部での部分的な荒廃がから様々な問題が発生し、「downtown vitalization ダウンタウン(都市中心部)の活性化」がしばしば話題になる。
  2. ^ なお、特定地域についての言及だが、あくまで山田は(同シンポジウムにおいて東九州自動車道が開通し、国道326号国道10号沿線の佐伯市豊後大野市延岡市で地域住民が何もしなければ観光客が吸い取られるだけになる危惧があるとし)、「同地域にはすでに十分な素材・価値(観光資源)があり、住民がその価値を認めて客を細分化し取り込んでいくことが重要である」旨を述べた(出典:「活性化連携が鍵-東九州道開通後見据えシンポジウム」夕刊デイリーWebヘッドラインニュース

出典

  1. ^ a b 市川虎彦まちづくり論の陥穽 : 地域自立の論理から自治体間競争の論理へ」 『松山大学論集』 2001年 13巻 1号 p.157-175, NAID 110004687356, 松山大学
  2. ^ 遠いが価値、巡れば納得 過疎地で輝く新観光名所 日本経済新聞 「地方都市の中心市街地は地盤沈下が止まらない」
  3. ^ 街が変わり、共同体が減る 「過疎化、少子高齢化、そして都市のドーナツ化現象」
  4. ^ インバウンド業界トップインタビュー 観光カリスマ 山田桂一郎
  5. ^ 「国道326号・10号沿線活性化シンポジウム」0982.tv記事(2011年12月13日閲覧)
  6. ^ a b 星貴子『地方創生―政府戦略に対する首長の判断③』(日本総研2015年
  7. ^ 観光産業の地域経済への波及効果分析手法の検討及び地域ストーリーづくりに関する調査日本交通公社2015年
  8. ^ [pref.wakayama.lg.jp/prefg/070400/zibiedetiikiokoshi.html] [1]
  9. ^ ウォーホル作品に3億円 戸惑う鳥取県民 - いろ★ドリ NHK、2023年1月29日閲覧
  10. ^ 宇都宮ブランド推進協議会 愉快ロゴ
  11. ^ 15周年を迎えたウィキペディアが、地域振興の主役になるかもしれない(前編)”. Jタウンネット. 2023年8月13日閲覧。
  12. ^ 「第12回観光庁長官表彰」の受賞者の発表について”. 観光庁 (2020年10月2日). 2022年11月13日閲覧。
  13. ^ 「ももクロ」に観光庁から感謝状 地域振興イベント開いた滋賀・東近江で授与式”. 毎日新聞 (2020年11月4日). 2022年11月13日閲覧。
  14. ^ 観光庁から「ももクロ」に特別感謝状”. 滋賀報知新聞 (2020年11月7日). 2022年11月13日閲覧。
  15. ^ a b c 市川虎彦「「地域活性化」再考 : 人口と雇用の観点から」『松山大学論集』第25巻第5号、松山大学総合研究所、2013年12月、45-67頁、CRID 1050282813434647168ISSN 09163298 
  16. ^ 各国の地方政府の体系 偽物の官製成功事例を見抜く5つのポイント”. 東洋経済オンライン (2015年4月2日). 2016年10月14日閲覧。
  17. ^ 「ベストセラーの内側」日本経済新聞2014年2月5日夕刊11面
  18. ^ リンク切れ


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