国民総幸福量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/26 03:46 UTC 版)
批判
国内の論者はブータンのGNHに関する試みはマイノリティとして存在するヒンドゥー系ローツァンパへの抑圧から、世界の目をそむけさせるものであると主張している。
経済学的な視点からは、GNHは幸福の主観的な判定に頼っているため、政府が国益に沿うようにGNHを定義できてしまうと述べられている。経済学者ディアドラ・N・マクロスキーはこのような測定は非科学的であると批判する。いわく「自身を幸せだと言う人の割合を記録することは、単に人々の言葉の使い方がわかるにすぎない」そのように社会の表象を描き出すことは、「物理学において、人々に今日の天気は暑いか寒いか尋ねるようなものである」。また、「高度な文化は実際、商業的に繁栄している領域にある。ギリシャ黄金時代から宋王朝、そしてルネッサンス果てはオランダ黄金時代など。」とMcCloskeyはその幸福が反消費主義に立脚していることを批判する[7]。
また、国際的な幸福の比較はこのモデルでは難しいだろうという論者もいる。提唱者はGNHの測定項目を各国が選択できるようにしているため、時間を超え国を超えた比較は曖昧なものになってしまう。GDPは便利で国際的な指標である。調査では各文化における幸福の目印は驚くほど普遍的だと示している。というのも人々は強く、頻繁な社会的つながり、健康的な環境、良い統治の経験などを持っていれば、通常より人生に満足していると答えるとされる。よってGNHを幸福の国際的な指標とすることには疑問が残り、GDPが得たような普遍的な指標にはならないとしている[8]。
ギャラップシステムも国の幸福度のデータを収集している[9]。
GNHを公的に利用しているのはブータンのみであり、Gross National Happiness Commissionは政権の意思決定と資源割り当ての見直しに一役買っている。[10]2013年、新政権はGNHをグローバルスタンダードとする方向からブータン国民自体の幸福追求へと舵を切った[11]。この転換をGNHの国際化の放棄であると解釈する者もいる[12]。
- ^ a b “「幸福の王国」ブータンで苦しむ若者たち”. AFPBB (2013年6月26日). 2014年6月1日閲覧。
- ^ a b 市川正樹 (2012年9月20日). “幸福度は役に立つか?”. 大和総研. 2013年12月24日閲覧。
- ^ 日本経済新聞 2010年10月18日付朝刊より
- ^ 日本経済新聞 2010年10月18日付朝刊より
- ^ 日本経済新聞 2011年3月8日付朝刊より
- ^ “「幸せの国」ブータン 幸福がお金にかわっていく現実”. スイス放送協会 2014年9月6日閲覧。
- ^ McCloskey, Deirdre N. (28 June 2012). Happyism: The Creepy New Economics of Pleasure. The New Republic. pp. 16–23.
- ^ http://psycnet.apa.org/journals/psp/69/5/851/ Factors Predicting the Subjective Well-Being of Nations
- ^ “A Wellbeing Report Card for President Sarkozy”. Gallup.com. 2012年11月7日閲覧。
- ^ Sonam. “Gross National Happiness Commission - The Planning Commission of Bhutan, Development for Happiness”. 2014年10月23日閲覧。
- ^ “Bhutan's New Prime Minister Says Happiness Isn't Everything”. NPR.org (2013年8月3日). 2014年10月23日閲覧。
- ^ http://www.nytimes.com/2013/10/05/world/asia/index-of-happiness-bhutans-new-leader-prefers-more-concrete-goals.html
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