固定資産税 免税点

固定資産税

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 05:10 UTC 版)

免税点

市町村の条例で特に定める場合を除いて、課税標準が、土地の場合は30万円未満(一筆ごとではなく、同一の者が同一市町村内に所有する土地の合算である)、家屋の場合は20万円未満の場合は、非課税となる。

減免措置

  • 原則として商業地では土地の評価額の70%を課税標準額として算出している。
    • 負担水準が70%を超える商業地等については、評価額の70%を課税標準額とする。
    • ただし地価が上昇する都市部では、評価額の60%を超える場合に、評価額の60%を課税標準額とする。
  • 中小企業が購入した新しい機械にかかる固定資産税を2018年平成30年)から2020年令和2年)まで3年間に限ってゼロにする方向で進んでいる[2]。さらに、2019年以降、「中小・小規模事業者を固定資産税ゼロ」にする方向で進んでいる[3]

評価額と課税標準額

総務大臣は、固定資産の評価の基準並びに評価の実施の方法及び手続を定めた「固定資産評価基準」を告示しなければならず(地方税法第388条第1項)、市町村長は、この「固定資産評価基準」によって、課税標準となる固定資産課税台帳に登録される価格を決定しなければならない(地方税法第403条第1項)。価格に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができる。価格以外の登録事項について不服がある場合は、市町村長へ不服申立てを行う。なお通常、告示は3年毎に行われる。つまり、基準年度の価格が原則として3年間据え置かれる。

この評価基準により決定された評価額より課税標準額を求める。ただし政策目的による課税標準額の特例が存在する(多くは時限的な措置となっている)。

土地および家屋が賃貸という権利関係になっている場合、その権利状態によって固定資産税評価額がある程度調整されることがある。

固定資産税(土地)

土地の評価は「適正な時価」であり、当初は評価額による課税が行われていた。しかし、戦後の経済成長で地価が高騰し、評価額は時価から離れていることが問題となり、全国的な調査を基礎として、1964年昭和39年)度から土地の評価を大幅に引きあげることとなった。このままでは、土地のうち宅地の固定資産税金が6倍から7倍くらいになるので、前年度の課税標準額と本年度の評価額を比較し、評価額が上回る場合はその格差に基づく(それより低い)負担水準を算出し、それを前年課税標準額に乗ずる方式(負担調整措置)が登場した。

この方式はその後も継続され、1970年代には、住宅用地の課税標準を低くする措置が追加された。さらに、バブル景気による地価の高騰の後、1994年(平成6年)度の評価基準の告示において、評価額の水準を地価公示価格の7割程度とすることとなったこと。それまでは地価公示価格の3割程度であったので増税となるため、負担調整措置が見直され、住宅用地への課税標準特例も強化されている。なお、この7割という水準は、地価が安定していた昭和50年代における固定資産税評価額の地価公示価格に対する割合だと説明されている[4]

以上の経過により、土地の課税標準額を算定するには、1964年(昭和39年)度分から当該年度までの全年分課税標準額の計算をしなければならず、税額の計算を複雑なものにしている。

固定資産税(家屋)

通常、評価額が課税標準額となる。

償却資産

資産ごとに耐用年数と取得価格から評価額を算出し、現行ではそれがそのまま決定価格となり、課税標準の特例が適用されない場合に限り決定価格が課税標準額となる。

  • 2007年(平成19年)度の税制改正により法人税及び所得税の減価率が見直されたが、評価額の減価率については旧定率法の減価率を適用し、1円まで償却する均等償却は行われない。
  • 2008年(平成20年)度の地方税法の改正以前は、国税の取り扱いに準じて資産ごとに理論帳簿価格を算出し、評価額と合計額の大きい方を決定価格としていたが、この改正により廃止された。

評価方法

固定資産税(土地)

固定資産税(土地)の評価方法には、主に路線価方式が採用される。

路線価とは、街路に沿接する標準宅地の単位地積あたりの適正な時価に基づいて付設された価格である。路線価には固定資産税における路線価と、相続税における路線価の2つがあり、固定資産税路線価については各市町村が算定し、相続税路線価については、各国税局がそれぞれ算定している。

ちなみに、公的土地評価について相互の均衡と適正化が図られるよう努めるという土地基本法第16条の趣旨等を踏まえ、相続税においては1992年(平成4年)度から地価公示価格の8割を目途に、固定資産税においては1994年(平成6年)度の評価替えから地価公示価格の7割を目途に、それぞれ評価を行っている。主要な街路の路線価は、標準宅地前の路線であるため鑑定価格等により求めるが、その他の街路の路線価は、主要な街路と価格形成要因を比べることにより求める。

価格形成要因は、

  1. 道路幅員や舗装などの道路要件
  2. 最寄駅からの距離や大型店舗距離などの交通・接近条件
  3. 下水道やガスの供給などの環境条件
  4. 都市計画用途や建ぺい率・容積率などの行政的条件

がある。つまり、これらの要因は、画地計算時に補正を行う前に既に路線価に反映されていることになる。

固定資産税(家屋)

固定資産税(家屋)の評価は、「再建築価格」という理論上の建築価格を算出することで行われる。具体的には家屋の構成部分(主体構造・基礎・屋根・外装・内装・建築設備)毎に評価基準に記載される材質ごとの単価表で単価と数量を計算しその総計を家屋の単価とする。材質については現地調査および建築図面に基づいて判定される。この再建築価額に1年分の経年減価率(固定資産税が初めて課税されるのは建築年の翌年からであるため、実務上は一年分減価償却した後の価格を計算して最初の評価額とする)等を乗じて評価額とする。

その後評価基準が告示される度に、前年度評価額と理論評価額(新たな評価基準に基づいて再計算された評価額)に耐用年数に応じた経年減価率を乗じた額のどちらか低い方の額を新たな評価額とする。これは、資材価格の上昇等により理論評価額が前年度評価額より高くなってしまうことが考えられるが、家屋は年々老朽化しているのに価格が上昇するのというのが社会通念的に不合理であると思われるため、少なくとも評価額が上昇するということが起こらないようにしたものである。

償却資産

毎年行われる申告により資産台帳を作成し、それに基づき評価額を算定する。東京23区内を除いて毎年1月31日までに市町村長に申告することになっているが、都道府県をまたいで所在する資産(電力、通信、鉄道、船舶、航空機など)については総務大臣に申告し、市町村をまたいで所在する資産については都道府県知事に申告することになっている。課税庁は、取得価額を基礎として評価額は一品ごとに算出する。固定資産税における償却資産の減価償却の方法は、原則として定率法であるが、一定の条件により取替法も認められている。なお、ひとりの納税義務者が所有する資産が各市町村ごとに定められた課税定額を超えている場合、都道府県が大規模の償却資産として固定資産税を課税する。


注釈

  1. ^ 平成27年5月26日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、適切な管理が行われていない空家で防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていると認められる場合には、本件特例の対象から外すこととなった[1]

出典

  1. ^ 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十三条:固定資産税の納税義務者等”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2019年3月29日). 2019年12月30日閲覧。 “2019年6月1日施行分”第9項。
  2. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2017年11月20日). “固定資産税3年間ゼロへ 政府、中小限定で設備投資促す”. 産経ニュース. 2019年11月18日閲覧。
  3. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2019年7月1日). “【公約特集】自民 早期の憲法改正目指す”. 産経ニュース. 2019年11月18日閲覧。
  4. ^ 固定資産税に関する質問主意書 質問答弁経過情報


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