固定資産税
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/09 05:10 UTC 版)
特例
2019年(平成31年)3月10日現在の特例は次の通り。
- 住宅用地の課税標準の特例
- 住宅の敷地で住宅1戸につき200平方メートルまでの部分(小規模住宅用地)については、課税標準を登録価格の6分の1とする。200平方メートルを超え、住宅の床面積の10倍までの部分(一般住宅用地)については、課税標準を登録価格の3分の1とする[注 1]。
- 新築住宅の建物の特例(平成32年3月31日までに新築された課税床面積120平方メートルまでの分について)固定資産税を2分の1とする
- 3階建以上の耐火構造・準耐火構造住宅は新築後5年間
- 一般の住宅(上記以外)は新築後3年間
- 専用住宅・店舗併用住宅(店舗併用住宅の場合、居住用部分が1/2以上)
- 居住部分の課税床面積が一戸につき50平方メートル以上280平方メートル以下であること。(貸家住宅の場合一戸につき40平方メートル以上280平方メートル以下)
- 学校法人の非課税
- 宗教法人の非課税
- 宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地
- 墓地
- 宗教法人がその設置する幼稚園において直接保育の用に供する固定資産
- 宗教法人がその設置する博物館において直接その用に供する固定資産
その他
損傷した建物の扱い
建物が損傷、損壊していると非課税になる場合があると述べたが、有名な事例では北海道の層雲峡にあったかんぽの宿である。本施設は2006年(平成18年)に閉鎖され、民間の別業者に売却されたが、莫大な固定資産税がかかることが判明し、建物所有者が固定資産税制度の抜け穴を利用し建物を重機で故意に損傷させたという事例が存在する。この事例は度々メディアで紹介されている[要出典]。建物は2016年(平成28年)に解体された。跡地は現在更地のままである。
固定資産税の過誤課税問題に関する報道等
固定資産税の過誤は、土地よりも建物(地方税法上の用語では「家屋」)が最大の問題であり、報道されている事例等は、産業界の事例が中心である。
2012年(平成14年)8月、総務省(自治税務局固定資産税課)は、「固定資産税及び都市計画税に係る税額修正の状況調査結果」を公表した。これは、固定資産税を課税する1720の自治体のうち、回答を拒否した東京23区と、被災地であるため調査対象外とされた岩手県、宮城県及び福島県内の市町村を除く1592市町村の、2009年(平成21年)度、2010年(平成22年)度及び2011年(平成23年)度(2002年(平成24年)1月1日まで)における土地・家屋に係る固定資産税及び都市計画税について、各市町村が課税誤り等により税額を修正した件数(納税義務者数)を調査したもので、税額修正を行った団体は1544市町村(全体の97%)と、ほぼすべての市町村で固定資産税の課税過誤が生じていることが、監督官庁である総務省(=旧:自治省)によって明らかにされた。
この総務省の調査をフォローした日本経済新聞の記事「固定資産税 徴収ミス続発」(2014年(平成26年)9月9日)は、「総務省の調査では2009〜2011年(平成21〜23年)度の3年間で、固定資産税の取りすぎが発覚して減額修正されたのは全国で25万件以上あった。と報じた。但し、この総務省の調査には、償却資産に対する固定資産税の過誤は含まれておらず、また最大の課税地である東京23区が含まれていないので、実態は更にひどいものと考えられる。
次いで、日本経済新聞は2016年(平成28年)3月29日の記事「過払い税金 企業が奪還 固定資産税5年で上場REIT 15社 自治体のミス相次ぐ」で、REITのほか、パナソニック、エーザイ、京阪電鉄など、産業界のいたるところで固定資産税の過誤による過剰徴収の返還を求める企業が増えている、と報じた。
更に、日本経済新聞は2019年(令和元年)12月2日の記事(エコノフォーカス)「固定資産税 過払い頻発」で、「東京23区と政令指定都市(除、広島、横浜)だけでも、2018年(平成30年)度において固定資産税の過払いの払い戻しが、少なくとも14万件、合計70億円以上に上る」との調査結果を公表した(件数・金額とも史上最悪を更新)。この記事では、「1級建築士事務所の建物鑑定(東京・新宿)が成功報酬方式で固定資産税の払い戻し実務を提供している」ことや、建物鑑定以外にも「固定資産税の還付請求を指南するコンサルティング会社がいくつも」あると報じている。ただし、過誤課税の根本的な原因である「複雑な課税制度」を見直すことは困難であるとの当局(総務省、及び東京都)の見解も紹介している。
この間、週刊エコノミスト(毎日新聞社)も、「固定資産税を取り戻せ! 全国で相次ぐ徴収ミス」(2016年(平成28年)6月7日号)、「固定資産税の大問題」(2017年(平成29年)4月11日号)などの特集を組んだ。
また、週刊ダイヤモンドの2018年(平成30年)5月28日号は、固定資産税適正化研究会会長下崎寛氏(税理士・不動産鑑定士)の寄稿「固定資産税徴収の杜撰な実態 制度改正は喫緊の課題」を掲載した。この寄稿には、産業界の大手自動車メーカー、自動車部品メーカー、有名ホテル、商業施設、大手食品企業、製紙会社、化学会社、投資ファンド、病院なども固定資産税の過誤の取り戻しに乗り出していること、凸版印刷が建物鑑定と提携して固定資産税適正化サービスを開始したことなどが紹介されている。更に、この寄稿では、固定資産税の過誤徴収が国民の「制度に対する信頼」を失わしめ、「第二の年金問題」となりかねない懸念、また、この問題が地方財政にもたらす甚大な影響、経団連が償却資産税の廃止を求めているという問題も解説している。
脚注
注釈
出典
- ^ “地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第三百四十三条:固定資産税の納税義務者等”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局 (2019年3月29日). 2019年12月30日閲覧。 “2019年6月1日施行分”第9項。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2017年11月20日). “固定資産税3年間ゼロへ 政府、中小限定で設備投資促す”. 産経ニュース. 2019年11月18日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2019年7月1日). “【公約特集】自民 早期の憲法改正目指す”. 産経ニュース. 2019年11月18日閲覧。
- ^ 固定資産税に関する質問主意書 質問答弁経過情報
- 固定資産税のページへのリンク