味噌 歴史

味噌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 01:10 UTC 版)

歴史

味噌蔵の木桶(愛知県岡崎市まるや八丁味噌
現在市販されている味噌はプラスチック製の容器に機械で詰められて売られていることも多い。(写真は江戸甘みそ)

起源

味噌の起源には二つの説がある[7]

  • 中国伝来説
    古代中国のを根源とし、遣唐使により中国を経て伝来したとされる説[8]
語源も『未だ醤にならないもの』という意味の未醤から平安時代に味醤、味曽、味噌となった。
701年の大宝律令に未醤が課税対象としてあらわれ、「主醤」という醤を管理する役職の記述もある[7]
  • 日本独自説
    日本の味噌の原型は歴史が古く、弥生時代からとする説もあるが、豆を用いた現在の味噌とは違う液体状のもので、魚醤に近い[9]。日本においては縄文時代から製塩が行われ、醤(ひしお)などの塩蔵食品が作られていたと見られる。縄文時代後期から弥生時代にかけて遺跡から穀物を塩蔵していた形跡が見つかっている[7]古墳時代からは麹発酵の技術を加えたものとなった。
現在の味噌の起源に連なる最初は、奈良時代である。当時の文献に「未醤」(みさう・みしょう:まだ豆の粒が残っている醤の意味)と呼ばれた食品の記録がある。また「末醤」とも書かれ、「大宝令」(大宝元年(701年))の「大膳職」条では「末醤」と記される。他に味醤、美蘇の字もすでに見える。藤原京(700年前後)の遺跡からは、馬寮(官馬の飼養などを担当する役所)から食品担当官司に醤と末醤を請求したものとして、表は「謹啓今忽有用処故醤」、裏には「及末醤欲給恐々謹請 馬寮」と書かれた木簡が発掘されている[10]。この未醤、あるいは末醤が、やがて味醤、味曽、味噌と変化したものであることは、「倭名類聚抄」(934年頃)や「塵袋」(1264-1287年頃)という辞書に書かれている。この当時の味噌は、調味料というよりは豆やその他の穀物を塩漬保存した保存食であり、つまんで食べられた。徒然草にある、北条時頼北条宣時が、台所に残っていた味噌だけを肴として酒を酌み交わしたという逸話は、このような時代背景によるものである。大豆を原料とした調味料としては、当時は塩辛納豆が主に使われた。

室町時代

室町時代になると、各地で味噌が発達した。戦国時代には主にが原料とされたが、兵糧陣中食)として重宝され、加工品の芋がら縄も含め、兵士の貴重な栄養源になっていた[11]。その名残は、朴葉味噌などとしても伝わっている。各地の戦国武将にも味噌作りは大事な経済政策の1つとして見られるようになった。

江戸時代

各地の風土・気候を反映し、材料比率を変えたり熟成方法などが異なる多様な味噌が製造された。

明治時代

明治時代の一般的な味噌の醸造期間は1-3年程度であった。明治時代の国語辞典である『言海』は味噌の分類として以下の3種をあげる。その記述では、当時の赤味噌と白味噌は材料の豆や麹が異なったという。

  • 白味噌 - 豆の皮を取り、白麹で作る。色が白く甘い。
  • 赤味噌 - 白大豆で作る。色が赤い。
  • 玉味噌 - 豆を臼で砕かず包丁で刻み、藁に包んで熟成させる。下等品だったという。

蒸すか茹でるかした大豆を潰して団子にし、藁で包んで味噌玉として軒下などに吊るし、枯草菌や納豆菌やカビが生えるなどして熟成したものを塩水と合わせて仕込む玉味噌は、現代でも地方各地に残っている。また、味噌玉を作って味噌を仕込む方法は朝鮮半島のテンジャンにおいても見られる。すでに江戸時代の『本朝食鑑』には「玉味噌というものあり。煮豆を半煮えで庖丁で砕き粗い細かさにして麹は少なく塩は多く揉み合せ、玉にし鞠の大きさにする。これを藁で包み縄で縛り、これを軒下につなげ、年が過ぎて使う。これは下等品である。または煮えた大豆を使い麹、塩を混ぜ米糠を合せて造る。これは最下等品である。長期保存しても腐らないため下々の者は好む」(大意)[注釈 1] とある。

明治時代末期に日本陸軍糧秣廠に勤めていた河村五郎(日出味噌創業者)が、麹の働きを温度管理で調節する味噌速醸法を考案。醸造時間は数ヶ月に短縮することが可能となった。当時、東京で主流となっていた仙台味噌の醸造法とともに全国に普及した[12]

明治時代末まで味噌の原料豆を砕く道具はと杵であり、完全な破砕ができなかったため、出荷された味噌には豆の粒や欠片がそのまま残っており、使用の前にすり鉢で粒を潰し「みそこし」で漉してから使った。やがて味噌製造が機械化すると味噌を出荷前に機械で漉し、家庭でいちいち擂ったり漉したりの手間が省ける「漉し味噌」「擂り味噌」が販売されるようになった。現在のような滑らかなペースト状の味噌が販売されるようになったのはみそ漉し機械の導入以降であるが、味噌をすり鉢でする習慣は戦後も残っていた。漉し味噌は食味で劣るとの議論もあり、現在でも漉していない「粒味噌」が販売されており、鹿児島県奄美料理のように粒味噌のまま使っている地域もある。

大正時代

1926年(大正15年)に「最新醤油味噌醸造法」栂野明二郎 著 醸造評論社 が発行されている。本書は、国立国会図書館のデジタルライブラリで閲覧可能である。当時の醤油味噌の製造方法がわかる[13]

昭和時代

戦前の東京では、河村が開発した味噌速醸法を元にした早造り仙台味噌(早仙)が普及。第二次世界大戦中には、食糧統制下で全国味噌組合方式(全味式)へと発展し、配給味噌の基準製法になった[12]。また、温度に着目した醸造法が各地で試された結果、大戦中の1944年(昭和19年)に中田栄造(マルマン (味噌製造)創業者)が醸造中の温度管理の適正化を進めた中田式速醸法を開発。醸造時間を20日とすることも可能となった。この速醸法は、中田の信州味噌の醸造法とともに、戦後、全国に普及した。

戦時中の配給制度では、1942年2月1日より大都市および近郊都市に限り配給が行われることとなった。具体的な対象地域は東京市、神奈川県の7市、愛知県の6市、大阪府の7市1町、京都市兵庫県の8市21町村。割当量は年齢を問わず関東地方では1人6匁/日、関西地域では3.3匁/日となっていた[14]。 配給にあたり全国の味噌製造会社で製造された味噌は、1941年に設立された全国味噌統制会社が一元的に買い上げた後、地方統制会社を通じて配給された[15]。戦時中は品質も規格も問われなかったこと、原材料の入手難もあり品質の低下が顕著となった。

昭和30年代後半までは、農村では多くの農家が味噌を家庭で自作し、昭和40年代の高度成長期とともに自家製味噌は減っていた[16]。とはいえ、仕込み味噌とよばれる味噌を買い、発酵と熟成は家庭で行うということがその後20年は続いた[16]

1970年代(昭和40年代)までは食料品店(酒屋三河屋)などで醤油や味噌が樽から量り売りされていたが、流通の変化などで量り売りは姿を消し、袋やプラスチック容器などのパッケージに入ったものに代わっている。従来は袋詰めの際、添加物としてソルビン酸カリウムが使用されたが、現在は酒精エチルアルコール)を2~3%添加する。これにより、耐塩性酵母を殺菌し、発酵で出る二酸化炭素による膨張を防ぐことができる。なお、調整処理されていないものは生味噌と呼ばれ、耐塩性酵母が引き続き活動している。

1979年度(昭和54年度)後期より国家資格である技能検定制度で[17]みそ製造技能士1級、2級試験がはじまった[18]。みそ製造の技能の伝承を確実にしている。1級は7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験、2級は実務経験2年以上。科目は学科試験は、みそ製造法、微生物および酵素、化学一般、電気、関係法規、安全衛生で、実技試験がある。

現代

今日では北海道音威子府村から沖縄県与那国町まで、日本の全ての地域に製造業者が存在する。それほど高度な技術や多額な資本投下無しに製造できることが推測できる[要出典]。同じ穀醤の中でも特定地域に集中している醤油製造との違いでもある。多くの製造業者があり、他の食品と同じように商品の多機能化と差別化が進んでいる[要出典]。単に素材の違いだけでなく、出汁入りのものやカルシウムなどを添加したものを販売している。「つけてみそかけてみそ」など食卓に置いておくみそも普及している。2000年(平成12年)以降は、みその出荷量は単調減少で、2015年(平成27年)には2000年比(平成12年)2割近い落ち込みである[19]。2000年(平成12年)以降デパートでのみその出荷は4分の1以下になっている[20]

2009年(平成21年)8月みそソムリエ制度ができ[21]、みその普及の基盤ができてきたが消費の減少に歯止めがかかっていない。

現在、「味噌」はMiso味噌汁Miso Soupとして、日本国外の人にも日本のものとして親しまれている[22]


注釈

  1. ^ 「玉味噌ト云フ者有リ煮豆半熟ニシテ庖丁ヲ以テ打砕キ麁細ニシテ之ヲ合サシメ麹少ク塩多ク揉合セテ丸ト為シ打鞠ノ大サナラシム之ヲ裹ムニ稲草ヲ以テシ縄ヲ用ヒテ縛ヒ定メ之ヲ簷間ニ繋ケ年ヲ経テ之ヲ用ユ此亦タ下品ナリ或ハ大豆煮熟スヲ用ヒテ麹塩ヲ交ヘ米糠ヲ合シテ造成ス此レ最モ下品ナリ其ノ下品ナル者経年能ク保ツテ敗セザルヲ以テ好ト為ス也」

出典

  1. ^ Merriam-Webster, Incorporated (2014年10月22日). “Definition of miso by Merriam-Webster” (英語). Merriam-Webster, Incorporated. 2015年10月29日閲覧。
  2. ^ 本朝食鑑(1695年)
  3. ^ a b 渡邊敦光「お味噌の効能」『日本醸造協会誌』105巻11号、2010年11月15日。714-723頁。
  4. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  5. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版)
  6. ^ a b 味噌Q&A (山形県醤油味噌工業協同組合)
  7. ^ a b c お味噌の由来は2つの説がある マルカワみそ
  8. ^ 「お味噌の歴史」お味噌の原点 山印醸造
  9. ^ 日本の発酵食品 味噌 味噌の歴史
  10. ^ 藤原宮 奈良文化財研究所 飛鳥資料館倶楽部
  11. ^ 小泉武夫『醤油・味噌・酢はすごい』大橋善光、2016年11月25日、85-86頁。ISBN 9784121024084
  12. ^ a b 創業秘話 日出味噌醸造元
  13. ^ 最新醤油味噌醸造法 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1020909
  14. ^ 六大府県で味噌、醤油の割当配当(昭和17年1月8日 朝日新聞(夕刊))『昭和ニュース辞典第8巻 昭和17年/昭和20年』p124 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  15. ^ 味噌、醤油の割当切符制を本格的に実施(昭和17年1月17日 東京日日新聞)『昭和ニュース辞典第8巻 昭和17年/昭和20年』p124 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  16. ^ a b 今井誠一『味噌』農山漁村文化協会、2002年。10頁。
  17. ^ 技能検定職種及び等級区分 (都道府県知事の実施する職種) 厚生労働省
  18. ^ 宮地和男、みそ製造技能検定について 日本釀造協會雜誌 75巻 (1980) 4号 p.248-250, doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.75.248
  19. ^ みその種類別出荷数量(全味工連集計)
  20. ^ 味噌の販売先別出荷数量(全味月報集計[リンク切れ]
  21. ^ みそソムリエ認定協会
  22. ^ 世界に広がる日本食「Misoの輸出」 (PDF)
  23. ^ 伊藤寛、味噌のにおい 日本釀造協會雜誌 71巻 (1976) 7号 p.500-504, doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.71.500
  24. ^ みそガイドブック 群馬県 (PDF)
  25. ^ みその種類別出荷数量<全味工連集計> (PDF)
  26. ^ http://yamagomiso.com/kou/
  27. ^ 七面鳥X病の発生からアフラトキシンの発見まで 山脇学園短期大学紀要 35, 37-61, 1997-12-21, NAID 110000218344
  28. ^ アフラトキシン非生産の証明 キッコーマンHP
  29. ^ 豆の栄養成分表 (日本豆類基金協会) データは「日本食品標準成分表2010」とある。
  30. ^ Nagata, C., Takatsuka, N., et al. (2001). “Soy Product Intake and Hot Flashes in Japanese Women: Results from a Community-based Prospective Study” (pdf). Am. J. Epidemiol. 153 (8): p.p.790-793. doi:10.1093/aje/153.8.790. ISSN 0002-9262. http://aje.oxfordjournals.org/cgi/reprint/153/8/790 2010年5月22日閲覧。. 
  31. ^ Kronenberg, F., Fugh-Berman, A. (2002). “Complementary and alternative medicine for menopausal symptoms: a review of randomized, controlled trials.”. Ann. Intern. Med. 137 (10): p.p.805-813. PMID 12435217. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12435217 2010年5月22日閲覧。. 
  32. ^ 陳瑞東「サプリメントの使い方・選び方:更年期障害:のぼせを中心に」『薬局』第55巻第5号、2004年、 p.p.1848-4853、 ISSN 0044-00352010年5月22日閲覧。
  33. ^ アーカイブされたコピー”. 2008年5月22日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2011年10月30日閲覧。
  34. ^ 明治大学農学部農芸化学科食品機能科学研究室 研究の概要 Archived 2012年11月24日, at the Wayback Machine.
  35. ^ 竹内徳男、稲荷妙子、森本仁美、毛利光之、「味噌のDPPHラジカル捕捉能に関する研究」 岐阜女子大学紀要 33,2004-03-30, 115-122, NAID 110000146309
  36. ^ a b 株式会社 マイナビ. “みそを食べればあなたも美肌に! マルコメが東京工科大との研究を発表 ライフ マイナビニュース -”. 2013年8月2日閲覧。
  37. ^ 食塩・塩蔵食品摂取と胃がんとの関連について 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター
  38. ^ Hecker KD: Curr. Atheroscler. Rep., 3 471–478(2001)
  39. ^ 味噌の塩分が血圧や胃がんに及ぼす影響 (PDF) 味噌の科学と技術 54(6), 327-339, 2006-11
  40. ^ 市販ミソにダニ、昆虫片 多くの銘柄に異物混る『朝日新聞』1979年(昭和54年)6月12日朝刊 13版 23面
  41. ^ 広辞苑第5版
  42. ^ 『四季日本の料理 冬』講談社 ISBN 4-06-267454-8
  43. ^ 『旬の食材 秋・冬の野菜』講談社 ISBN 4-06-270136-7
  44. ^ MISO σ みそソムリエ通信 2012年1月下旬号
  45. ^ 八丁味噌本社事務所・蔵(史料館) 文化財ナビ愛知






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