博多駅テレビフィルム提出命令事件 評価・解釈

博多駅テレビフィルム提出命令事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/01 07:06 UTC 版)

評価・解釈

フィルムの証拠としての重要性や取材に与える影響を検討して、比較衡量によって結論を導いたとされる[9][10]

その後

福岡地裁は、最高裁判決を受けて再度提出を求めたが放送4社が拒否を繰り返すため、1970年3月4日に捜索・差し押さえ令状を出してフィルムを押収した。押収したフィルムは、ほとんどが放送後のものであった[11]。これに対し放送4社ほか各報道機関は強く反発し、日本新聞協会も「司法権によって、このような措置が繰り返されるとすれば、民主主義社会の基礎である報道、取材の自由に重大な脅威を与えるものである」との声明を出した[12]

付審判請求の審理については、1970年8月25日に福岡地裁が「テレビフィルムの押収は被害者と加害者を特定し、大きく食い違う双方の証言にどちらがより信用できるかの心証をつかむためにあえて行った。この証言の信用性についてフィルムが大いに役立ち、学生の証言の方が信用できるということになった」と押収したテレビフィルムを評価した上で「警備にあたった警察官が少なくとも28人に対して特別公務員暴行陵虐をした点、また少なくとも18人に対して強制的な所持品検査をした職権濫用をした点が認められる。しかし、被疑者らにその加害実行者または共犯者としての責任を負わせるだけの証拠を発見することができなかった」として棄却した。請求人側は福岡高裁へ抗告したが、1970年11月25日に棄却した[13]

裁判上の全ての決着がついた後の1970年12月8日に福岡地裁はコピーをとった上でテレビフィルムを放送4社にそれぞれ返還したが、さらにコピーについても同月10日に焼却処分することが決定・連絡された[14]

脚注


注釈

  1. ^ ただし、一審判決で理由に挙げられた「過剰警備」については、証拠の評価と取捨を誤ったとして否定し、「適法な警察活動」と認めている[3]
  2. ^ 本件裁判も公務執行妨害事件で警察の過剰警備を認めた真庭春夫裁判長が担当しており、福岡県警側の弁護団が忌避申立を行い、却下された。なお、真庭は裁判途中で転勤により担当交代している[5]
  3. ^ 事件当時、福岡放送(1969年開局)とTVQ九州放送(開局時はTXN九州、1991年開局)は未開局であった。
  4. ^ 司法裁判が実体的真実を発見し法の適正な実現を期するという使命を達するため。

出典

  1. ^ a b 前田 2021.
  2. ^ a b c d e 最高裁判所大法廷『決定理由 昭和44(し)68』1969年https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=50977 
  3. ^ a b 田中, 佐藤 & 野中 1980, pp. 433–438.
  4. ^ 『新 警備用語辞典』(7刷)立花書房、2009年、351頁。 
  5. ^ a b c 田中, 佐藤 & 野中 1980, pp. 438–443.
  6. ^ 博多駅フィルム提出命令事件 提出命令”. www.cc.kyoto-su.ac.jp. 京都産業大学. 2021年9月2日閲覧。
  7. ^ 博多駅フィルム提出命令事件 抗告審”. www.cc.kyoto-su.ac.jp. 京都産業大学. 2021年9月2日閲覧。
  8. ^ a b 福岡高等裁判所第三刑事部『判決理由 昭和44(く)45』1969年https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail3?id=23586 
  9. ^ 田中, 佐藤 & 野中 1980, p. 453.
  10. ^ 野中俊彦; 中村睦男; 高橋和之; 高見勝利『憲法 I』(第4)有斐閣、2006年、376頁。ISBN 4-641-12998-3OCLC 71258137 
  11. ^ 田中, 佐藤 & 野中 1980, p. 446.
  12. ^ 田中, 佐藤 & 野中 1980, pp. 446–447.
  13. ^ 田中, 佐藤 & 野中 1980, pp. 447–452.
  14. ^ 田中, 佐藤 & 野中 1980, p. 452.


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