博士の愛した数式 概要

博士の愛した数式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/27 22:22 UTC 版)

概要

交通事故による脳の損傷で記憶が80分しか持続しなくなってしまった元数学者「博士」と、彼の新しい家政婦である「私」とその息子「ルート」の心のふれあいを、美しい数式と共に描いた作品である。数学者エルデシュを描いた『放浪の天才数学者エルデシュ』[1](原題は「数字だけを愛した男」[2])が参考文献として挙げられており[3]、エルデシュは「博士」のモデルと言われることもある。

初出は『新潮』2003年7月号[4]。同年8月29日新潮社より刊行された[5]。装画は戸田ノブコ。第50回青少年読書感想文全国コンクール高等学校部門課題図書[6]

2004年2月1日、第55回読売文学賞を受賞。同年4月15日、第1回本屋大賞を受賞[7]。大賞受賞時の得点は202点。2005年12月1日新潮文庫として文庫化される(ISBN 978-4-10-121523-5[8]。なお本書の新潮文庫版は発売2か月で100万部を突破。新潮文庫では史上最速を記録した[9]。2006年1月の映画化という販売促進策が決定的に奏功した。

2009年2月3日スティーヴン・スナイダーによる英訳版『The Housekeeper and the Professor』が刊行された[10]2010年8月1日電子書籍版が新潮社より配信開始された[11]

あらすじ

家政婦紹介組合から「私」が派遣された先は、80分しか記憶が持たない元数学者「博士」の家だった。こよなく数学を愛し、他に全く興味を示さない博士に、「私」は少なからず困惑する。ある日、「私」に10歳の息子がいることを知った博士は、幼い子供が独りぼっちで母親の帰りを待っていることを居たたまれなく思い、次の日からは息子を連れてくるようにと言う。次の日連れてきた「私」の息子の頭を撫でながら、博士は彼を「ルート」と名付け、その日から3人の日々は温かさに満ちたものに変わってゆく。

登場人物

博士
64歳。数学(整数論)専門の元大学教授。数学と子供と阪神タイガース(特に博士が事故に遭った当時、阪神の選手だった江夏豊投手、背番号は2番目に小さい完全数である28)をこよなく愛している。47歳のときに巻き込まれた交通事故により、新しい記憶が80分しか持続しないようになってしまった。大切なことを記したメモ用紙を体中につけている。書斎のクッキー缶の中に、野球カードや思い出の写真等をしまっている。人付き合いが苦手で、何を話して良いか分からなくなったとき、言葉のかわりに数字を持ち出すのが癖。特技は、文章や単語を逆さまから読むことと、一番星を見つけること。ニンジンと大根と卵かけご飯と酢豚が嫌い。
28歳。シングルマザーの家政婦。数学にしか興味を示さない博士に初めは困惑するが、博士の優しさやその数学への情熱に触れるうちに、博士に尊敬や親しみを抱くようになる。「私」の誕生日である2月20日(220)と、博士が大学時代に超越数論に関する論文で学長賞を獲った時に貰った腕時計の文字盤の裏の番号No.284(284)は、友愛数の関係にある。博士が投稿している数学の懸賞問題の雑誌『JOURNAL of MATHEMATICS』を、上手く発音する自信がないため、「ジャーナルオブ」と呼んでいる。
ルート
10歳の小学5年生。「私」の息子。頭が「」のように平らだったので、博士に「ルート」と呼ばれるようになる。阪神タイガースのファンで、博士に頼んでラジオを直して貰い、一緒にラジオ観戦をする。
未亡人
72歳。博士の義姉(博士の兄の妻)。55歳のときに巻き込まれた交通事故のせいで足が悪い。

  1. ^ Hoffman, Paul (1998). The man who loved only numbers : the story of Paul Erdos and the search for mathematical truth (1st ed.). New York: Hyperion. ISBN 0-7868-6362-5. OCLC 38557306 
  2. ^ ポール・ホフマン『放浪の天才数学者エルデシュ』平石律子 訳、草思社、2000年3月。ISBN 978-4-794-20950-4OCLC 676282980 
  3. ^ 小川洋子(朝鮮語)『博士の愛した数式(韓国本) 박사가사랑한수식 / Paksa ka saranghan susik』김난주 Kim Nan-ju(キム ナンジュ) 訳(Ch'op'an)、イレ、Sŏul、2004年7月。ISBN 978-8-957-09025-1OCLC 56725579 
  4. ^ 小川洋子博士の愛した数式」『新潮』2003年7月号、新潮社、2003年6月、2022年2月13日閲覧 
  5. ^ 小川洋子博士の愛した数式』新潮社、2003年8月29日。ISBN 978-4-104-01303-6https://www.shinchosha.co.jp/book/401303/2022年2月13日閲覧 
  6. ^ 全国学校図書館協議会|過去の課題図書|過去の課題図書 第41回〜第50回(1995年度〜2004年度)”. www.j-sla.or.jp. 2022年2月11日閲覧。
  7. ^ 2004年本屋大賞結果発表&発表会レポート | これまでの本屋大賞 | 本屋大賞
  8. ^ 小川洋子『博士の愛した数式』(新潮文庫) |新潮社
  9. ^ “文庫で100万部突破 小川洋子「博士の愛した数式」”. 共同通信. (2006年1月30日). オリジナルの2015年7月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20150710073405/http://www.47news.jp/CN/200601/CN2006013001002601.html 2015年1月14日閲覧。 
  10. ^ The Housekeeper and the Professor by Yōko Ogawa — Reviews, Discussion, Bookclubs, Lists
  11. ^ 小川洋子『博士の愛した数式』(電子書籍)|新潮社
  12. ^ 2006年興行収入10億円以上番組 (PDF) - 日本映画製作者連盟
  13. ^ 博士の愛した数式|日本の映画情報を検索 日本映画情報システム”. www.japanese-cinema-db.jp. 2022年2月11日閲覧。
  14. ^ 小川洋子 柄本明 中嶋朋子 武井証『博士の愛した数式』|新潮社
  15. ^ 「博士の愛した数式」のページ”. 秋田雨雀・土方与志記念青年劇場. 2007年10月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月19日閲覧。
  16. ^ 「博士の愛した数式」のページ”. 秋田雨雀・土方与志記念青年劇場. 2010年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月19日閲覧。
  17. ^ a b 博士の愛した数式|JDTA”. 早稲田大学演劇博物館. 2023年12月19日閲覧。
  18. ^ たくさんのルートと出会って - 青年劇場”. 秋田雨雀・土方与志記念青年劇場. 2023年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月19日閲覧。
  19. ^ 「博士の愛した数式」のページ”. 秋田雨雀・土方与志記念青年劇場. 2020年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年12月19日閲覧。
  20. ^ 「博士の愛した数式」舞台化、SUPER☆GiRLS・宮崎理奈、シンガー中村千尋出演”. music.jpニュース (2015年10月13日). 2015年10月13日閲覧。
  21. ^ a b 「博士の愛した数式」|まつもと市民芸術館”. まつもと市民芸術館. 2023年12月19日閲覧。
  22. ^ 「博士の愛した数式」東京芸術劇場”. 東京芸術劇場. 2023年12月19日閲覧。
  23. ^ a b ただそこにふっと存在しているような博士に…串田和美「博士の愛した数式」松本で開幕”. ステージナタリー (2023年2月11日). 2023年12月19日閲覧。
  24. ^ 井上小百合が舞台『博士の愛した数式』に出演!「ここぞというときには必ずカツ丼を食べています」”. Walkerplus (2023年2月2日). 2023年12月19日閲覧。






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