傷病手当金 時効

傷病手当金

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/26 09:14 UTC 版)

時効

他の健康保険法上の給付と同様、傷病手当金を受ける権利は、2年を経過したときは時効により消滅する(第193条)。時効の起算日は、「労務不能であった日ごとにその翌日」である(昭和30年9月7日保険発199号の2)。

歴史

1883年ドイツビスマルク内閣のもとで疾病保険法が成立、最低賃金の半額を最高13週まで傷病手当金として給付するとされた。疾病や負傷による休業手当を主とするものを疾病保険、医療費保障を主とするものを健康保険というが、日本ではこの2つをまとめて健康保険として取り扱ってきた。その端緒は大正2年(1913年)に成立するも、関東大震災による混乱などで、ようやく昭和2年(1927年)になって施行された健康保険法である。当初、支給期間は最長180日とされ、労災保険制度が未整備であったため、労災による休業も対象範囲となった。

平成18年(2006年)の健康保険法一部改正により、その第45条で「標準報酬月額の30分の1相当額の6割」とされていた傷病手当金の支給額が「標準報酬月額の30分の1相当額の3分の2」とされた。また、第55条の2では被保険者の資格喪失後も継続して給付を受けられるとされていたが、改正法第104条で1年以上の継続加入が必要とされるようになった。任意継続被保険者については継続して給付を受けている場合を除いては、任意継続被保険者と言う要件のみでの傷病手当金の給付は行われなくなった。但し、前述の退職後の給付資格がある場合は別段となる。また生活保障のために支給する意味合いから、受給中に標準報酬月額が減額改定されても、傷病手当金の支給額を減額することはしない扱いとなっていた(昭和26年6月4日保文発1821号)。

平成28年4月1日より、支給額が見直され、現行の規定となる。休業直前に標準報酬月額を増額改定し不当に高額の傷病手当金を請求する事例が横行していたため、それを防ぐ狙いがある。改正日をまたいで傷病手当金を受給している場合、改正日前は従前の計算方法、改正日以降は改正後の計算方法で受給日額が決定される。

制度の周知も重要な課題である。東京都の調査ではがん患者のうち高額療養費制度を利用した人は79.4%であったが、傷病手当金制度を利用した人は31.5%に留まり、傷病手当金制度を「知らなかったので利用せず」が 39.5%にのぼった[1]

脚注

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注釈

  1. ^ 船員の傷病手当金について定めた船員保険法第69条には、健康保険法第99条のような「その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から」という要件が定められていない。
  2. ^ 平成30年9月30日現在、協会けんぽにおける標準報酬月額の平均額は、30万円となっている。
  3. ^ 出産手当金も傷病手当金も、支給額の計算方法自体は同じであるが、「支給を始める日の属する月以前直近12か月」の平均で計算するので、出産手当金と傷病手当金とで支給開始月が違う場合、その間に定時決定等があると単価が異なる可能性がある。
  4. ^ 医師の意見書は必ずしも保険医のものである必要はなく、柔道整復師の施術を受けた場合は柔道整復師の意見書でも差支えないが(昭和2年3月26日保理118号、昭和25年1月17日保文発72号)、療養担当者としての意見書でなければならない。したがって、病院の名で出された意見書ではいけない(昭和3年12月27日保理3163号)。
  5. ^ 診療を受けた医師が死亡した後の意見書は、請求書にその事由を記載した書面を添付させ、医師、事業主その他関係者について調査した結果、ある期間労務不能の事実を確証し得たものに対しては支給して差し支えない(昭和6年7月25日保規158号)。
  6. ^ 柔道整復師は、患者から傷病手当金を受けるために必要な傷病手当金意見書の交付を求められたときは、無償で交付すること(平成11年10月20日保発144号・老発682号)。
  7. ^ 産業医が意見書を作成するに当たって企業内で被保険者の診療を行う場合には、企業内に診療所等の開設がなされていることが必要となる(医療法第1条の2、第7条、第8条、平成26年9月1日厚生労働省保健局保健課事務連絡)。診療所等の開設されていない企業内で定期巡視等の際に産業医が診療を行うことは、診療結果に基づいて被保険者に対して休職・降格等の不利益処分を企業が行った場合の訴訟リスクを抱えるため、通常はない。
  8. ^ 第99条の表記は「労務に服することができない期間」であるが、実際に事業主が証明するのは「労務に服さなかった期間」(休業期間)である(昭和9年10月4日保険発498号)。
  9. ^ 事業主が所在不明となり又は労働争議によりストライキ継続中事業主において被保険者の動静を知悉することができない理由で証明を拒み証明書添付不能の場合には、事業主所在不明のときは、請求書にその事由を記載した書面を添付させ、調査の結果、労務不能の事実を確認し得たものに対しては支給して差し支えないが、労働争議により被保険者の動静を知悉できない場合であっても、事業主は、労務不能の証明を拒むことはできない(昭和6年7月25日保規158号)。

出典

  1. ^ がん患者の就労等に関する実態調査 東京都福祉保健局、平成26年5月






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