五音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/28 23:00 UTC 版)
概要
本来「五音」という言葉は音楽用語で、階名の「宮(きゅう)・商(しょう)・角(かく)・徴(ち)・羽(う)」のことをいった。
おそらくインド音韻学の影響によって[1]音節頭子音の分類が知られるようになると、これを音楽の五音と結びつけて考えるようになった。通常は「宮=唇音、商=歯音、角=牙音、徴=舌音、羽=喉音」とし、これに「半徴(l)・半商(r)」を加える。ただし『通志』七音略では宮と羽が逆になっている。
現代から見ると、五音の分類には調音位置によるものと調音方法によるものがまじっているが、これはインドの子音分類が阻害音・鼻音とそれ以外を別に扱っていることに起因する。
伝統的な三十六字母のそれぞれは五音のいずれかに属し、清濁によって区別される。
なお、古い時代には「五音」が四声のことを指すことがあった[2]。
音声との対応
現代の音声学の術語と以下のように対応すると考えられる。字母の詳細な音価は三十六字母を参照。
五音 | 三十六字母 | 調音部位 | 調音方法 | |
---|---|---|---|---|
唇音 | 重唇音 | 幇[p]・滂[pʰ]・並[b]・明[m] | 両唇 | 破裂音・鼻音 |
軽唇音 | 非[f]・敷[fʰ]・奉[v]・微[ɱ] | 唇歯音 | 摩擦音 | |
舌音 | 舌頭音 | 端[t]・透[tʰ]・定[d]・泥[n] | 歯茎 | 破裂音・鼻音 |
舌上音 | 知[ȶ]・徹[ȶʰ]・澄[ȡ]・娘[ȵ] | 歯茎硬口蓋 | ||
半舌音 | 来[l] | 歯茎 | 側面接近音 | |
歯音 | 歯頭音 | 精[ts]・清[tsʰ]・従[dz]心[s]・邪[z] | 歯茎 | 摩擦音・破擦音 |
正歯音 | 照[ʨ]・穿[ʨʰ]・牀[ʥ]審[ɕ]・禅[ʑ] | 歯茎硬口蓋・硬口蓋 | ||
半歯音 | 日[ȵʑ] | 歯茎硬口蓋 | 鼻音+摩擦音 | |
牙音 | 見[k]・渓[kʰ]・群[g]・疑[ŋ] | 軟口蓋 | 破裂音・鼻音 | |
喉音 | 暁[x]・匣[ɣ] | 軟口蓋 | 摩擦音・破擦音 | |
影[ʔ]・喩[j] | ゼロ声母 | - |
仮名における五音
五音は五十音図と関係があり、平安時代の成立当時、五十音図は五音図と呼ばれた。アカヤ行は喉音、サタナラ行は舌音、ハマワ行は唇音とされた。江戸時代、歌舞伎十八番の外郎売には「アワヤ喉、サタラナ舌に、カ牙サ歯音、ハマの二つは唇の軽重、開合さわやかに、アカサタナハマヤラワ、オコソトノホモヨロヲ…」とあり、アワヤ行が喉音、サタラナ行が舌音、カ行が牙音、サ行が歯音、ハマ行が唇音(ハ行は軽唇音、マ行が重唇音)とされている。なおハ行が唇音とされたのは江戸時代まで現在のファ行にあたる音で発音されていたからである。
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