三角不等式 距離空間の場合

三角不等式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 01:08 UTC 版)

距離空間の場合

距離空間 M の距離函数を d とすれば、三角不等式

距離函数の定義要件の一つである。つまり、x から z までの距離は、x から y への距離とy から z までの距離の和で上から押さえられる。

三角不等式は距離空間上の興味の大半を占める収束性に関わっている。これは距離函数の残りの要件が比較的単純なことによる。例えば距離空間における任意の収束列コーシー列であるという事実は三角不等式からの直接の帰結である。なんとなれば xn および xm を(距離空間における収束の定義にある通りの)任意の ε > 0 に対して d(xn, x) < ε/2 および d(xm, x) < ε/2 なるようにとれば、三角不等式により d(xn, xm) ≤ d(xn, x) + d(xm, x) < ε/2 + ε/2 = ε となり、点列 {xn} は定義によりコーシー列である。

ノルム空間を、ノルムの誘導する距離函数 d(x, y) ≔ ‖ xy ‖ のもとで距離空間とみて、xy は始点 y から終点 x へ結んだベクトルと解釈するとき、この空間の距離空間としての三角不等式は、前節で述べたノルム空間の場合の三角不等式に帰着される。


注釈

  1. ^ z が最大辺でないときはむしろ明らか: z ≤ max(x, y) < x + y.
  2. ^ 例えば、平面に 1-ノルム(つまりマンハッタン距離)を入れて、 x = (1, 0) および y = (0, 1) を取れば、三点 x, y, x + y の成す三角形は非退化だが ‖ x + y ‖ = 2 = ‖ x ‖ + ‖ y ‖ を満たす。

出典

  1. ^ Weisstein, Eric W. "Triangle Inequality". mathworld.wolfram.com (英語).
  2. ^ Khamsi & Kirk 2001, p. 8, §1.4 The triangle inequality in n.
  3. ^ Brock, Trinkle & Ramos 2009, p. 195.
  4. ^ Ramsay & Richtmyer 1995, p. 17.
  5. ^ Jacobs 2003, p. 201.
  6. ^ David E. Joyce (1997年). “Euclid's elements, Book 1, Proposition 20”. Dept. Math and Computer Science, Clark University. 2010年6月25日閲覧。
  7. ^ Stillwell 1997, p. 95.
  8. ^ Kress 1988, p. 26, §3.1: Normed spaces.
  9. ^ anon. 1854, p. 196, Exercise I. to proposition XIX—"Any side of a triangle is greater than the difference between the other two sides"






三角不等式と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「三角不等式」の関連用語

三角不等式のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



三角不等式のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの三角不等式 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS