ルパン三世 バビロンの黄金伝説 声の出演

ルパン三世 バビロンの黄金伝説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/29 21:28 UTC 版)

声の出演

スタッフ

製作

企画

1984年夏、テレビ放送されていた『ルパン三世 PARTIII』の好評から製作が決定する。

当初は、前作『カリオストロの城』の監督である宮崎駿の推薦で押井守が監督を務める予定だった。しかし、「ルパンは存在していなかった」というあまりに実験的な内容を危惧した制作側が、企画開始から約半年後の1984年12月上旬、押井と集まったスタッフを降板させることとなる。

その後、吉田しげつぐが新たに監督に就任。『TV第2シリーズ』等に参加経験のある鈴木清順を共同監督に迎え、野球中継による放送中止の影響で余力があった『PARTIII』のスタッフを移行して公開予定日に間に合うよう急遽製作したという経緯がある。

脚本

脚本は、複数の脚本家からプロットを募集し鈴木や制作側でオーディションを行なった結果、浦沢義雄のプロットが採用され、浦沢が脚本を担当することとなった[2]

浦沢は、『カリオストロの城』でルパンが女の子に好意を持ち足長おじさんのようになっていたことに反感があったため、「『カリオストロの城』に勝ちたい」と意気込んで執筆を始めたという[7]。だが、それまでのテレビシリーズでハコ書きをせずに脚本を書いていた浦沢は、テレビよりも長い映画では行き詰まって収拾がつかなくなりスランプに陥ったため、最終的に後半部分を浦沢の師匠に当たる大和屋竺が執筆している[7][8]

浦沢は後に「初めて全然書けなくなって、途中で投げ出して、大和屋さんに渡しちゃった。大和屋さんが全部書いた。(中略)結構大和屋さんには節目節目で助けられてる」と語っている[7]

製作

上述のように、押井の降板の影響から製作スケジュールが非常に短くなったことで、原画を担当した大森英敏によると製作期間はわずか2ヶ月しかなかったという[9]。また、『PARTIII』から参加したアニメーターは突如、睡眠4時間、食事1回、休みなしの状態になったという。

監督の吉田は、絵コンテの内容をアニメーターに感性で描いてもらい、それにアドバイスや修正を行うなどしてカットを仕上げるなど、作画や演出に関する作業が主な仕事だったという[1]。一方で鈴木は、完成した脚本や映像などに対して吉田へアドバイスをしたり打ち合わせすることが主な仕事で「僕は絵が描けないから、チョッカイを出すだけ。チョッカイ屋だね」と自嘲的に語っていた[1]。また、鈴木は「長く『ルパン』を手がけている人には、思いいれで”ルパンはこんなことしない”とかいう部分もでてくると思うんですよ。すると、そういう思いいれで固めちゃうと映画ってのは面白くなくなるから、僕の役目っていうのは1人それを離れてもう少し幅を持って『ルパン』を見て、面白い発想を生かしたりとか、そういうことなんですね」とも語っている。

作画監督およびキャラクターデザインは『PARTIII』の青木悠三が担当。「キャラクターの上ではルパンがなんとなく老けてきた部分がある」と感じた吉田と相談した結果、原作に近い若いルパンを出すことを意識したという[1]

舞台はニューヨークが選ばれ[注釈 4]、1980年代当時の華やかな世相が色濃く映し出されている。作中で登場するマルチアーノ (Marciano) はイタリア人に見られる姓、コワルスキー (Kowalski) はポーランド人に見られる姓である。

冒頭のルパンと銭形によるバイクチェイスのシーンに関して、編集作業時に本編が上映予定時間より長くなっていることが判明したため、当初は一部がカットされる予定だったが、鈴木の「アクションは見せ場だから」という意向で他の箇所をカットし、そのままの尺で公開された。ただし、飯岡順一によると公開後、鈴木自身も当シーンを「長すぎたな」と語っていたという[2]

本作は製作に日本テレビが参加したことから、『PARTIII』では著作権の問題で使用されなかった「ルパン三世のテーマ」と「銭形マーチ」が劇伴として『TV第2シリーズ』以来5年ぶりに使用された。また、長年テレビシリーズの音響効果を担当してきた糸川幸良が劇場版に初めて参加した[注釈 5]

鈴木によると、過去にダンテ・アリギエーリの『神曲』を特撮で作る企画があり、その時の構想が本作に名残りとして生かされているという。

エピソード

特別出演の河合奈保子は声優初体験であり、ルパン三世役の山田康雄と共に収録を行った。河合は緊張やプレッシャーから何度も録り直しとなり、迷惑をかけた山田に謝罪するが、山田は「いいってことよーっ、気にすんなっ!」と明るく河合をねぎらいながらアドバイスもしたといい、収録は無事に終了した。また、この時に山田がベテランにもかかわらず、1シーンの収録を終えるたびにメモをとりながら台本を見つめ考えこんだり台詞を何度も暗唱する真剣な姿を見た河合は、強く胸を打たれたという[10]


注釈

  1. ^ 次作『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』は山田の存命中に製作されたが本編のアフレコ直前に逝去(予告編のみ出演)。
  2. ^ この歌は、後に「SONG OF BABYLON」という題で1991年発売の『ルパン三世 テーマ・コレクション』に収録された。作詞:不明 / 作曲:大野雄二 / 唄:河合奈保子
  3. ^ 役名記載なし。公式パンフレットの記載に準拠する。
  4. ^ 浦沢はテレビ第2シリーズでもニューヨークを舞台にした作品をいくつか残している。
  5. ^ ルパンVS複製人間』では橋本正二、『カリオストロの城』では倉橋静男が担当していた。
  6. ^ ハマー」ではない。ハマーが登場したのは1992年である。本来「ハマー」はハンヴィーの民生用モデルの愛称である。

出典

  1. ^ a b c d e 東宝 1985, pp. 14
  2. ^ a b c 飯岡順一『私の「ルパン三世」奮闘記 アニメ脚本物語』河出書房新社、2015年。ISBN 4309275591 
  3. ^ “【ルパン三世】人気アニメ映画・OVA作品TOP13! 1位は「カリオストロの城」に決定!【ネタバレ注意】”. ねとらぼ (ITmedia). (2021年2月25日). https://nlab.itmedia.co.jp/research/articles/125355/ 2023年8月27日閲覧。 
  4. ^ 東宝 1985, p. 3.
  5. ^ a b c d e f g 東宝 1985, p. 19
  6. ^ a b 8月11日(日)21:00~22:54 映画「ルパン三世 バビロンの黄金伝説」”. 日曜ロードSHOW!. BS日テレ. 2019年8月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月27日閲覧。
  7. ^ a b c 「特集 大和屋竺追悼」『映画芸術』Vol.368、映画芸術、1993年、130-147頁。 
  8. ^ オペレッタ狸御殿 脚本家インタビュー 浦沢義雄」『宇宙船』Vol.118(2005年5月号)、朝日ソノラマ、2005年5月1日、85頁、雑誌コード:01843-05。 
  9. ^ 大森英敏 [@xVDmVQwCNtwmFIo] (2020年3月31日). "バビロンの黄金伝説の制作期間は2ヶ月だったんですよ!". X(旧Twitter)より2023年8月27日閲覧
  10. ^ 河合奈保子FC編集部 (1985年7月). “ルパンはやっぱりやさしい人… アフレコ初体験報告”. 奈保子しんぶん vol.29 (河合奈保子FC) 
  11. ^ 小黒祐一郎 (2009年). “アニメ様365日 第235回『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』”. WEBアニメスタイル. 2023年8月27日閲覧。
  12. ^ a b のざわよしのり [@mad_yn] (2012年4月2日). "本人の投稿". X(旧Twitter)より2023年8月27日閲覧
  13. ^ のざわよしのり [@mad_yn] (2013年11月24日). "本人の投稿". X(旧Twitter)より2023年8月27日閲覧
  14. ^ のざわよしのり [@mad_yn] (2014年10月15日). "本人の投稿". X(旧Twitter)より2023年8月27日閲覧
  15. ^ のざわよしのり [@mad_yn] (2016年9月23日). "本人の投稿". X(旧Twitter)より2023年8月27日閲覧
  16. ^ のざわよしのり [@mad_yn] (2016年9月23日). "本人の投稿". X(旧Twitter)より2023年8月27日閲覧






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