ベクーナ (潜水艦) 艦歴

ベクーナ (潜水艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/07 14:04 UTC 版)

艦歴

ベクーナは1943年4月29日にコネチカット州グロトンエレクトリック・ボート社で起工した。1944年1月30日にジョージ・C・クローフォード中佐の妻によって命名、進水し、1944年5月27日に艦長ヘンリー・D・スター少佐(アナポリス1933年組)の指揮下就役する。7月1日にニューロンドンを出航し、7月29日に真珠湾に到着した。

第1の哨戒 1944年8月 - 10月

8月23日、ベクーナは最初の哨戒で南シナ海に向かった。

10月8日未明、ベクーナは北緯14度12分 東経115度53分 / 北緯14.200度 東経115.883度 / 14.200; 115.883の地点でヒ76船団を発見し、元特設水上機母艦君川丸川崎汽船、6,863トン)に魚雷1本を命中させ、撃沈こそ出来なかったものの君川丸を船団から脱落させた[2]

10月9日には、北緯12度45分 東経118度00分 / 北緯12.750度 東経118.000度 / 12.750; 118.000パラワン島北西海域でミ19船団を発見。タンカー「さんるいす丸」(三菱汽船、7,268トン)の船首に魚雷を命中させる(ただし沈没には至らなかった)[3][注釈 1]。 続けさまに潜水艦ホークビル (USS Hawkbill, SS-366) と共同で、北緯12度43分 東経118度05分 / 北緯12.717度 東経118.083度 / 12.717; 118.083の地点で応急タンカー徳和丸(日東汽船、1,943トン)を撃沈した[注釈 2]。10月18日、ベクーナは56日間の行動を終えてフリーマントルに帰投した[4]

第2、第3、第4、第5の哨戒 1944年11月 - 1945年7月

11月15日[5]、ベクーナは2回目の哨戒で南シナ海に向かった。この哨戒では、1945年1月2日に南緯05度50分 東経113度12分 / 南緯5.833度 東経113.200度 / -5.833; 113.200南緯06度09分 東経113度33分 / 南緯6.150度 東経113.550度 / -6.150; 113.550の2カ所で、300トン級および800トン級の海上トラックを砲撃により撃沈した[6]。1月8日、ベクーナは53日間の行動を終えてフリーマントルに帰投した[7]

2月4日[8]、ベクーナは3回目の哨戒で南シナ海に向かった。2月22日、ベクーナは北緯11度30分 東経109度06分 / 北緯11.500度 東経109.100度 / 11.500; 109.100インドシナ半島ファンラン湾沖で南号作戦参加のヒ88H船団を発見。応急タンカー日翼丸(日産汽船、1,943トン)に向けて魚雷を4本発射し、うち1本が日翼丸に命中しこれを撃沈した。3月22日、ベクーナは46日間の行動を終えてスービック湾に帰投した[9]

4月15日[10]、ベクーナは4回目の哨戒で南シナ海に向かった。しかし、この頃には南シナ海に日本の艦船の姿を見ることは出来ず、攻撃の機会もなく戦果はなかった[11]。5月24日、ベクーナは39日間の行動を終えてフリーマントルに帰投[12]。艦長がウィリアム・J・ブッシュ(アナポリス1938年組)に代わった。

6月21日[13]、ベクーナは5回目の哨戒で南シナ海に向かった。7月16日に一度のみ攻撃機会があったが[14]、前回同様戦果を挙げることはなかった。7月27日、ベクーナは36日間の行動を終えてスービック湾に帰投した[15]

ベクーナは第二次世界大戦の戦功で4個の従軍星章を受章した。ベクーナは1隻の日本のタンカーを単独で、もう1隻のタンカーを共同で撃沈し、その合計は共同戦果の分も含めて1隻と2分の1隻、2,816トンに上った。

戦後

戦争が終わるとベクーナはスービック湾を後にしてアメリカ本国に向かった。9月、ベクーナはカリフォルニア州サンディエゴに帰還し、1949年4月まで太平洋艦隊潜水艦部隊での作戦活動に従事、その後大西洋艦隊潜水艦部隊、第8潜水艦戦隊に配属された。1949年5月から1950年5月までの間にベクーナは回復訓練演習を行い、ニューロンドンで士官候補生の訓練を支援した。1950年11月、エレクトリック・ボート社での近代改修のためのオーバーホールに入り、GUPPY 改修艦への転換が行われた。改修は1951年8月に完了し、ベクーナは公試のためカリブ海に向かう。ニューロンドンには9月に帰還した。改修後のベクーナは大西洋艦隊と共に活動し、第6艦隊との巡航で地中海スコットランドを訪れた。これらの拡張巡航以外、大半はニューロンドンでの訓練で費やされた。ベクーナは1969年に AGSS-319 (実験潜水艦)に艦種変更され、1969年11月7日に退役、大西洋予備役艦隊で保管される。1971年に SS-319 に再度変更され、1973年8月15日に除籍された。

博物館船

GUPPY 改修艦当時の姿で保存されているベクーナ

ベクーナは1976年6月21日にペンシルベニア州フィラデルフィアインディペンデンス・シーポート・ミュージアム英語版に展示され、1996年に歴史的艦船ゾーンが出来てからは当該ゾーンに移動し、米西戦争ジョージ・デューイ元帥旗艦である防護巡洋艦オリンピアと並んで展示されている。

1986年には国定歴史建造物に指定され、2001年にはアメリカ溶接協会から「歴史的溶接構造物」賞を受賞した。


注釈

  1. ^ さんるいす丸は後日、ヒ86船団として日本に向かう途中で撃沈される。
  2. ^ この経緯から、徳和丸撃沈はベクーナとホークビルの共同戦果となっている。

出典

  1. ^ National Park Service (9 July 2010). "National Register Information System". National Register of Historic Places. National Park Service. 2020年10月12日閲覧
  2. ^ The Official Chronology of the U.S. Navy in World War II、駒宮, 270ページ
  3. ^ The Official Chronology of the U.S. Navy in World War II、松井, 23ページ
  4. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.68
  5. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.67,70
  6. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.93,94
  7. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.86
  8. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.105,107
  9. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.119
  10. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.145,147
  11. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.162
  12. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.160
  13. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.175
  14. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.187,188
  15. ^ 「SS-319, USS BECUNA」p.185


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