プルトニウム238 用途

プルトニウム238

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/15 09:04 UTC 版)

用途

RTG燃料として使われる238Puは二酸化プルトニウム (PuO2) の形で用いられている。

238Puは、ほとんどがアルファ崩壊によってのみ崩壊し、半減期も87.7年という適度な長さを持つ。この性質は、崩壊熱を利用しゼーベック効果によって電力を生み出す放射性同位体熱電気転換器 (RTG) には都合が良い。実際、238Puは最も良く使われているRTG燃料である。238Puの崩壊エネルギーは1kgあたり540Wであり、十分効率的である。また、放射線の外部漏洩を防ぐ防護壁の厚さは2.5mm以下で済み、適切な格納容器があれば防護壁が不要である場合が多い。熱量が大きく、適度な寿命と防護壁の不要性は、重量が厳しく制限される宇宙探査機の要望に応えるものである。また、ガンマ線中性子線もほとんど放出されない。RTG用の238Puは二酸化プルトニウム (PuO2) の形で用いられる[7]

238PuのRTGを利用した探査機はボイジャー1号ボイジャー2号パイオニア10号パイオニア11号ニュー・ホライズンズカッシーニなどである。2011年現在では、木星探査機のジュノーのような、太陽から遠方でもRTGを用いず太陽光パネルで電力をまかなう探査機も開発されている[8]が、一般的には木星より外側の太陽系の外側を探査する場合、太陽光パネルで電力を得るのには太陽光が弱すぎるため、238PuのRTGが電力として利用される場合が多い[9]。また、キュリオシティ以降の火星探査車も、砂嵐が多く砂塵が太陽電池の上に堆積しやすい火星環境下で、昼夜関係なく動作するために238PuのRTGを使用している[10][11]

なお、238PuのRTGは、1960年代に一部の埋め込み型の心臓ペースメーカーに使われていた事があるが、リチウム電池の性能が向上した1970年代からは使われなくなっている[12]


  1. ^ ただし、この式のみ簡略化の為一部を省略している。「+n」が上についている矢印は、1個の中性子を衝突させ中性子捕獲したという意味になる。





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