フルサイズ 1990年代の復興

フルサイズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/13 02:06 UTC 版)

1990年代の復興

GMC・シエラ(1996年)

1980年代初頭、アメリカのビッグスリーは、日本車の品質向上と輸出攻勢により、冬の時代を迎えたが、1980年代後半からアメリカ経済が落ち着きを取り戻したこと、車の品質が向上したことなどから、アメリカの消費者の嗜好は再び大型車、フルサイズカーに向かった。

きっかけは、1984年に発売されたプリマス・ボイジャーに代表されるミニバン(実質フルサイズバン)である。ドイツ車や日本車にはない、多人数がゆったりと移動できる大型の車体は好評を得た。若者の嗜好も次第に大型のスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)やピックアップトラックに移った。これらの車種は、自動車会社の利益率が高かった(コンパクトカーが1台数千~数百ドルの利益であったのに対して、フルサイズSUVは1台1万ドル以上の利益を出した)ため、積極的な商品開発が行われ売れ行きも加速。アメリカの自動車業界を立ち直らせる原動力となった。日本のメーカーもフルサイズ戦略車として、トヨタ自動車タンドラなどを投入するようになった。

この時代のフルサイズカーの特徴は、1960年代の車種と比べ派手な装飾が控えられていることである。しかし、通勤・通学・買い物・旅行用途には通例使用しない悪路に対する走破性能、滅多に荷物を載せないカーゴスペースなど、無駄を楽しむ余地は細分化して残されている。

2000年代の衰退

1999年以降の原油価格の高騰や2000年代初頭から高まった地球温暖化対策への配慮や2001年秋のアメリカ同時多発テロ事件後の消費者の買い控えなどから、フルサイズカーへの人気は徐々に衰退傾向を示した。2003年頃から活発になったインセンティブの乱発により販売合戦により利益率も低下し、徐々に経営の足を引っ張るようになる。追い打ちを掛けるように2007年に入ると原油価格が高騰。フルサイズカーを取り巻く環境は、かつてのオイルショック時と同じ状態となった。

2008年現在、アメリカ国内に展開する主要メーカーは、販売不振からフルサイズカーの車種の整理縮小を打ち出しており、再び冬の時代が訪れている。

しかし、米国では燃料代の上下で小型車と大型車の人気が交互に訪れており、「大型車を体験した消費者は小型車で満足することはできない」という説もある。第一次石油危機時には大型セダンがサイズダウンされたが、その後、大型SUVに乗り換えただけで、大型車への嗜好自体は決して衰えていない。CAFE燃費規制がSUVをライトトラックに区分しており、規制がゆるく大型大排気量の車種を販売しやすいことも原因として考えられる。

実際に、2008年8月から同年末にかけて、ガソリン価格が下落した際には、同年5月には56%あった全車種中におけるトラックを除く乗用車の売り上げ割合が、同年12月には47%に低下しており、ガソリン価格の下落によって、再びピックアップトラックやSUVなどの販売比率が上がっていることが分かる[6]

かつてはシボレー・カプリスインパラフォード・クラウンビクトリアなどのフルサイズ・モデルが全米の乗用車最多販売車種であったが、2000年代にはシボレー・マリブトヨタ・カムリホンダ・シビックなどコンパクト(1970年代以前のフルサイズと比較して)な車が最多販売車種となっている[7]。しかし、乗用車に限定せず総合の売り上げで見た場合は、依然としてフルサイズ・ピックアップトラックのフォード・Fシリーズシボレー・シルバラードが全米で最も売れている車種である。

そして2011年にフォードがフルサイズセダンを代表する車種として長く親しまれてきたフォード・クラウンビクトリアマーキュリー・グランドマーキーリンカーン・タウンカーを生産していたカナダ・オンタリオ州のセント・トーマス工場を閉鎖することとなり、これら3車種が相次いで生産終了となり、直系の後継車はなく市場からフルサイズ乗用車が消えた。




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