バルブ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/01 20:11 UTC 版)
レシプロ内燃機関におけるバルブ
内燃機関、特にレシプロエンジンを構成する重要な部品の1つで、混合気や空気などをシリンダー内へ吸入する為のインテークバルブ(吸気弁)や、燃焼後の排気ガスをシリンダから排出させるエキゾーストバルブ(排気弁)がある。吸排気バルブの形状はエンジン形式によって様々であり、またエンジンの形式によっては吸気または排気の一方のみに別体のバルブを用いる場合などもある。なお、エンジンそのものの部品ではないが、エンジンに混合気を吸入させる為の装置であるキャブレターや燃料噴射装置にも、「スロットルバルブ」や「チョークバルブ(チョーク弁)」といった他の形式のバルブが使われている。しかし、単に「バルブ」といった場合には吸排気弁を指すのが一般的であり、ここでは主に、レシプロエンジン内にある吸排気弁について述べる。
吸排気弁としてのバルブ
4ストローク機関
現在の自動車やオートバイ等で主流となっている4ストローク機関の吸排気バルブでは、細い円柱の軸の先端がラッパのように急激に末広がりとなった円錐状をした「ポペットバルブ (poppet valve)」と呼ばれるものが圧倒的な主流である。
ポペットバルブを採用する4ストロークエンジンでは、バルブの軸部分 (バルブステム) が筒状の部品 (バルブガイド) で支持され、金属ばね (バルブスプリング) 等により、バルブ先端のラッパ状部分の外周 (バルブフェイス) がシリンダーヘッド等のバルブ密着面 (バルブシート) へ押し付けられることで密閉性を保っている。カムによりタペットやロッカーアームを介して押されると、バルブは軸方向に動いて開く。カムの回転に伴い、開く時に圧縮されたスプリング力によりバルブが閉じる。バルブを密着させるのに金属ばねを使う「スプリングバルブ式」というバルブ作動方式が最も一般的であるが、金属ばねの代わりに圧縮空気による空気ばねを用いた「ニューマチックバルブスプリング式」や、バルブ開閉の両方をカムやロッカーアームで機械的に制御する「デスモドロミック式」などもある。
なお、過去には「スリーブバルブ」など、ポペットバルブ以外の4ストロークエンジン用バルブも開発研究され、量産エンジンに採用された例もあった。だが現在では、ポペットバルブ以外のバルブ形状はまず見かけられず、開発研究や試作まで行なわれても量産化や実用化までは至っていないのが現状である。
- バルブ数の表記法
- 主に自動車やオートバイなどの4ストロークエンジンの仕様を表す項目の1つとして、吸排気バルブの数を表すことがある。少ない数の場合は1気筒あたりのバルブ数を表し、比較的大きな数字の場合はエンジン全体でのバルブ総数を表している。例えば「ツインカム4バルブ4気筒」および「ツインカム16バルブ4気筒」と表記されている場合、どちらも同じエンジン仕様、すなわち1気筒あたり4バルブ (吸排気それぞれ2バルブ) で、4バルブ×4気筒=総数16バルブのDOHCエンジンを表している。
2ストローク機関
エンジンの構造や燃焼行程の異なる2ストローク機関においては、吸気側のみあるいは排気側のみにバルブがあるように見えるものが多いが、実際には別体のバルブが無い側の気流は、シリンダー内面の吸排気ポートがピストンの動作位置により開閉されるピストンバルブで制御されている。
オートバイ用などのデイ式機関の吸気用で代表的なものとしては、一部に穴が開いた円盤状のバルブを回転させてバルブの穴が吸気通路と一致した時のみ吸気させる「ロータリーディスクバルブ式」や、薄い板状のバルブそのものの弾性と吸入負圧によって開閉させる「リードバルブ式」などがある。船舶用などの大型ディーゼル機関の多くは、シリンダーヘッドに設置されたポペットバルブを排気弁としてのみ用いる。
吸排気弁以外のバルブ
一般的なスロットルバルブの方式は、バタフライバルブかゲートバルブであることが多い。チョーク弁も一般的にバタフライバルブであることが多い。
その他にもキャブレター内部のフロートバルブ(ニードルバルブ)や、クランクケース内部の未燃焼ガスを排出する目的で使用されるPCVバルブなど、様々な用途でそれぞれにあった形式のバルブが使われている。
バルブと同じ種類の言葉
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