トレーディングカードゲーム カードの価値

トレーディングカードゲーム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/03 04:23 UTC 版)

カードの価値

投資

TCGは一般的に、一定規模の金額が投資として要求されるゲームと認識されている。その主な理由にはおよそ以下の様なものがある。

  • TCGの公式販売形態では、カードは基本的にランダム入手であり、カードの入手そのものが一種のギャンブル性を持つ。
  • 公式大会においては、希少度に関わらず全て本物の公式カードを使用せねばならず、カードの代用は認められない。
  • 希少度の高いカードや強力な効果を持つカードは、金銭を支払ってでも入手したいと言うプレイヤーも多く、そうした実情から任意のカードを単体で金銭取引する「シングルカード」の市場が存在する。
    • 希少度と公式大会での使用頻度が高いカードは高価値とされ、デッキ構築に要するカードを揃えるためには投資額が数千 - 数万円になることもある。
    • 「ゲームソフト付属」「イベント・大会限定」などのカードは、メーカーの販売戦略上、破格に強力である場合が多く、また一定期間を過ぎると入手困難になるため、レートも高騰しがちである。
    • TCAGは元のカード入手コストが高い(1枚100 - 300円で、単価はアナログTCGの約3 - 10倍)ため、価格が高騰する傾向にある。
    • 逆に公式大会で使用できないカードや、製品として終息し公式大会そのものが開催されなくなった(TCAGの場合は、筐体が撤去され、オンライン運営が終了した)タイトルのカードは、価値がないと見なされる(ただし、コンプリートされていればコレクションとしての価値を認められる事はある)。
    • 希少度が低いカードは流通量も多いため、公式大会で使用できるカードであっても価値を低く見られがちである。特に希少度が最も低いコモンカードは、市場が形成されないばかりか数枚から十数枚の束で売られたり、場合によっては開封直後にゴミ箱に捨てられたり、そのまま破り捨てられることすらある(そうしても惜しくないほど入手が容易ということである)。
    • エラッタや大会結果によって、カードの価値が大きく変動することも珍しくなく、場合によっては投機的な価格変動も起き得る。高額な(通常は数千円程度)のカードにエラッタが出たり使用禁止になったりして価値が暴落することや、不人気の安価なカードが大会優勝デッキのキーカードになったことで価値が高騰することもある。

単にデッキを構築し対戦するだけであれば、カード資産を問わない限定戦を行う、カード資産を十分に持つ者から余剰カードを分けてもらうなどの方法で、コストを掛けなくても遊ぶことができる。しかしゲームに勝利するためには戦術や戦略に基づいたデッキ構築が欠かせず、戦術や戦略に適した任意のカードを入手したいと言う欲求が投資を煽る一因となっている。

また勝利を意識すると、勝ち負けを問わない友人同士のカジュアル・プレイには満足できなくなり、真剣勝負の場である公式大会を意識し目指すようになる。公式大会においてはカードの代用が認められないため、大会参加に必要なカードを揃えるだけでも投資を要求され、さらに勝利に必要な強力なカードの多くは入手が困難なため投資額が高騰する傾向にある。特に、高額賞金をえさに巨額投資を煽るようなゲームもあり、問題とされることもある。

TCGはひとつのタイトルへの投資額が大きくなりがちなため、複数タイトルを掛け持ちするユーザーはそれほど見られない(2021年現在、ほとんどのトレーディングカードゲームでは他トレーディングカードゲームのために発行されたカードを用いることを認めていないという理由もある)。

なおTCAGにおいては、「カードの購入」と「プレイ料金の支払い」と「ゲームのプレイ」が一体であることから、「掘り師」や「狩り師」と呼ばれるプレイヤーが一部のゲームで問題視されている。これらについては「掘り師 (ゲーム)」を参照。

新規タイトルに対する参入障壁

  • ユーザー側

新規展開されたタイトルへの参入は、人気が不確定であり、メーカーの早期撤退などによってせっかくの投資が紙屑になってしまうリスクが大きいため、プレイヤーにとって参入障壁が大きいほか、対戦環境に関する情報が既存タイトルと比較して乏しい。

  • メーカー側

トレーディングカードゲームの運営には法規制が存在せず、株式会社はもちろん、非営利団体や個人、地方公共団体なども運営に参入することができる(個人名義でのトレーディングカードゲームの登録商標も存在する)。よってここではトレーディングカードゲームを運営する団体を「運営団体」と表記する。 人気が不確定であるためプレーヤーの参入障壁が存在することは上記の通りだが、人気コンテンツを原作にもつタイトルであってもTCGとしての収益が確保できるとは限らず(名探偵コナン、パズル&ドラゴンズ、グランブルーファンタジー等)、どのようなタイトルであっても赤字のため早期撤退が必要となるリスクがあることから、収益性からみた場合運営団体にとっても参入障壁が大きい。

保存状態

TCGのカードのほとんどは劣化しやすい紙製であるため、カードの保存状態はカードの価値を大きく左右する。特にカード裏面の傷や汚れは、裏返した状態でカードを特定する目印と見なされ、公式大会で反則対象になり得るため敬遠され、カードの価値も低く見られがちである。TCAGの場合、傷や汚れのあるカードを使用しても特に問題はないが、筐体のカード読み取りに支障をきたすため、やはり避けられる傾向にある。

「遊ぶためのカード」としての特性から、コレクションを目的とした他の紙製品に比べても、TCGのカードは非常に劣化しやすい。またTCGの性質上、公式販売期間は限られており、任意のカードを入手するのは困難なため、使い古され擦り切れたカードを同種の新しいカードに交換することは(稀少度の高いカードほど)難しい。こうした理由から、使い古された状態のカードより、新品に近い状態のカードの方が高い価値を持つ。

カードの状態保存と対戦でのカード使用を両立させるため、「(カード)スリーブ(card sleeve)」と呼ばれる保護袋が用いられる場合も多い。カードスリーブについての解説はカードスリーブを参照のこと。

カード資産とユーザー格差

TCGでは、ゲーム経験が同等であっても、カード資産(所有しているカードの総量と種類)によってある程度のユーザー格差が発生する。これは、カード販売形態がランダム性を持ち、プレイに必要最低限の環境を整え維持するだけでもある程度の継続的な投資を要求されるためである。特に、新しいシリーズが発売される場合には、同様にある程度のまとまった投資が必要となる。またカードに対する知識・情報が勝利に直結することの多いTCGにおいて、カード資産は(経験が少ないほど)重要な情報源となり得る。

カード資産によるユーザー格差は、TCGに対する知識量・情報量が少ないほど顕著になる。例えば知識量・情報量がゼロであっても、カード資産を持つ者は非プレイ時にカードを確認し、カードに対する知識・情報を自分なりに咀嚼できる。一方、カード資産を持たない者は非プレイ時に未所持のカードを確認できず、カードに対する知識・情報を把握するのに時間と手間を要する[注 19]

ゲーム経験とカード資産が豊富な古参ユーザーと、ゲーム経験もカード資産も乏しい初心者ユーザーの格差は、当然ながら非常に激しく、後発ユーザーは圧倒的な不利を強いられることになる。販売期間が長いタイトルにおいて、その傾向は非常に顕著であり、レギュレーションは元々、この格差を是正するために考案されたものである。そのため販売期間が長いタイトルでは数種類のレギュレーションが用意され、最も大会の多いレギュレーションでは「最新の数種類のセット」以外は使用不可として、カード資産による格差を埋めようとしている。

逆に言えば、制限の少ないレギュレーションでも使用されるほどの強力なカードでも無い限り、一定期間(たとえば『マジック:ザ・ギャザリング』では12 - 18ヶ月)でカードの価値が無くなる。一方で、新規ユーザーへの配慮やゲームバランスの調整、古参ユーザーのゲーム離れ阻止などの目的から、過去のシリーズに収録されていたカードを新しいシリーズに再録する場合もあり、この場合は収録されたシリーズが許可されるレギュレーションであれば、カードの新旧を問わず使用できる(使用不可としたタイトルもあったが、数ヶ月で撤回されている)。また同様の理由で、カードの名前と能力を微妙に変えて「調整」したカードを収録し、過去のシリーズに収録されていたカードを意図的に使えないようにしている場合もある。

ゲームの特性上一人では遊ぶのは難しい。また、TCGのブームが衰えている2009年現在、ショップなどの店頭に設置されていた対戦スペースが利用率の低下などの理由で撤去されるなどの事情により、ゲーム仲間を見つけることが難しくなっている。同様に、「(ゲームセンターのゲーム機をほとんど利用しない)トレーディングカードゲームのプレイヤーが長時間滞留する」などの理由で、ゲームセンターの休憩スペースに設置されていたテーブルが撤去されるケースも見られている。ゲーム仲間が集まる公式大会は真剣勝負の場であることが多く、こちらも初心者が気軽にプレイしプレイ方法を実践で覚える環境とは言いがたく、ビギナー向けと銘打ったイベントは少ない。このような風潮がTCGの新規プレイヤー加入を妨げているという声もある。

最近[いつ?]では、このような後発者が圧倒的に不利となる風潮を修正するため、多くのタイトルで「構築済みデッキ」などにデッキ構築の基本となるカードや、入手が困難であった強力なカードを収録することなどで、新規参入者を確保するため努力は続けられている。ただし収録されたカードが高額カードだと、それ目的で熟練者や転売目的の者が買い占めることも多く、さらに店によっては希望小売価格より高い値をつけたり、店側で開封してシングルカードとして販売するなどして(複数入っていたレアカードがバラ売りされて、合計値は構築済みデッキを買うより高い)、結局はメーカーの意図とは裏腹に肝心のターゲットである初心者の手に渡らないという問題が発生することもある。

『マジック:ザ・ギャザリング』の『ゲームナイト:フリー・フォー・オール』はボードゲームとして単体で遊べるようにゲームバランスを調整されたデッキが構築されている。そのため、カード資産によるユーザー格差なしでカードゲームを楽しむことが出来る(単に既存の入門デッキを使った対戦練習セットではなく、ボードゲームとして楽しめるように設計されている。)。


注釈

  1. ^ ギネス世界記録でFirst Modern Trading Card Game(最初の現代版トレーディングカードゲーム)として認定されている[4]
  2. ^ ただしコンピュータゲーム類を含めれば、TOPCATの『ZAP! THE MAGIC』のほうが発売日が少し早い。
  3. ^ なお、販売元はタカラトミーであるが、製造元はウィザーズ・オブ・ザ・コーストとなっている。これは元々『デュエル・マスターズ』が、マジックのエントリーシステムとして、小学館と共同で開発された為である。この為に用語の共有等の他、『デュエル・マスターズ』の商品には必ずW&Cの著作権表示が入っている。
  4. ^ ドラゴン77号(1983年9月)に収録。Desert, Forest, Plains, Mountain, Swampのチットが登場する。
  5. ^ ただし、千夜一夜物語三国志をモチーフにしたシリーズも発売されている。
  6. ^ 英語版『ポケモンカードゲーム』の当時の発売元はウィザード・オブ・ザ・コースト社であり、同社が開発した『マジック:ザ・ギャザリング』の人気と併せ、同社が急成長する原動力となった。
  7. ^ ただしスロットに通す等その操作上スリーブの使用不可能な種類も存在している。
  8. ^ グループSNEでは「デック」と称している。
  9. ^ 『ヴァンガード』の"盟主"等が該当する。
  10. ^ 『ヴァンガード』での"儀式"や『バディファイト』での"ドラゴンツヴァイ"等が該当する。
  11. ^ 例えばブシロード系のTCGでは、「スタンド」と「レスト」という用語を用い、『遊戯王OCG』では縦向きを「攻撃表示」、横向きを「守備表示」としている。
  12. ^ カードファイト!!ヴァンガード』のプレイヤーは「ヴァンガードファイター」、『バディファイト』のプレイヤーは「ファイター」、『バトルスピリッツ』のプレイヤーは「カードバトラー」など、ゲームシステム毎に別の呼称を用いる場合もある。
  13. ^ 『ヴァンガード』用の対戦テーブルの『バディファイト』仕様への変更など。
  14. ^ 会場以外での購入も認められるために構築戦として認められる。なお、スタータデッキのみでの参加の場合も、開発スタッフの掛けたスタータデッキ開発の相当時間を考慮勘案し、参加可能となる。
  15. ^ 「ハーフデッキ」や「フラッシュデッキ」などの呼称がある。
  16. ^ 「コストを支払う」という、経済学的用語が存在する。
  17. ^ ただし自社製カード同士に限られる。他社製カードを混在させることができるトレーディングカードゲームは、ツボッシーによる小説「言霊高原」において過去に存在したという設定の架空のトレーディングカードゲームが描写されているが、実在するトレーディングカードゲームでは確認されていない。
  18. ^ "OS-東方混沌符"として。これによって、本作品は株式会社ブシロードの版権使用許可を得た。また、これに伴い『Chaos』は事実上の二社生産シリーズとなった。ただし『混沌符』のChaosの総合ルールブックの著作権表示に上海アリス幻樂団の文字はない。
  19. ^ こうした状況は『マジック:ザ・ギャザリング』最初期に実際に見られた話だが(日本語版が作られる前の『アイスエイジ』までは公式ジャッジにさえカードリストが渡されていなかったと言う)、有志がカードリスト(能力のみ)を翻訳・配布するなどの努力により、状況は徐々に改善された。現在ではメーカー自身がカードリストを書籍化(カードの写真をそのまま掲載)し販売している他、インターネット上でもメーカーや有志などによって公開されている。
  20. ^ 2021年3月に開始された千葉ロッテマリーンズ公式の「MARINES COLLECTION」や、2021年に株式会社ピットアースがサービスインした「カナエトレジャー」(翌年に「カナエ ポイトレウォーク」に名称変更)が例。

出典

  1. ^ 産経新聞社 SANSPO 2017年12月8日 世界初のトレーディングカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』カードゲームのワールドカップで日本代表が優勝!~ワールド・マジック・カップ2017(2019年3月31日時点でのアーカイブ
  2. ^ 世界初のトレーディングカードゲームの“入門”チャンス! 『マジック:ザ・ギャザリング』基本セットが全国で販売開始”. @Press (2014年7月22日). 2023年8月10日閲覧。
  3. ^ SHIBUYA GAME 2019年3月22日 世界初のTCG『Magic: The Gathering』ついにeスポーツ参入!(2019年3月31日時点でのアーカイブ
  4. ^ First modern trading card game”. Guinness World Records. 2023年8月10日閲覧。
  5. ^ 「カードゲーム市場に新風 野球で広げるファン層」『日経産業新聞』2000年10月12日付、25頁。
  6. ^ 読み物 マジック:ザ・ギャザリングのはじまり”. マジック:ザ・ギャザリング 日本公式. 2020年5月23日閲覧。
  7. ^ ヒカキンが1枚5000万円の超激レアポケモンカードを購入。「売るつもりは一生ない。超大切に保管していきたいと思います!」 | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com”. ファミ通.com. 2022年9月3日閲覧。
  8. ^ 石井英男 (2020年2月4日). “トレーディングカードゲーム特有の商品「オリパ」について考える”. Game Watch. 株式会社インプレス. 2023年7月4日閲覧。
  9. ^ 木曽崇 (2020年1月12日). “オリパ賭博?トレーディングカード業界の闇”. Yahoo!ニュース 個人. ヤフー株式会社. 2023年7月4日閲覧。
  10. ^ Okano (2023年7月4日). “京都・市営地下鉄駅に『ポケカ』の“オリパ”自販機が設置―違法性やモラル問われる販売手法に批判”. インサイド. 株式会社イード. 2023年7月4日閲覧。






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