チェロソナタ第2番 (フォーレ) 構成

チェロソナタ第2番 (フォーレ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/05 16:10 UTC 版)

構成

第1楽章

アレグロ、ト短調、3/4拍子。自由なソナタ形式。冒頭、第1主題はピアノで提示され、これをチェロが受け継ぐ。楽章を構成する主要な二つの主題は、豊かな抑揚を持ち、いずれも16小節の長さを持つ点で共通する[4]。 代わる代わる変化する二つの曲想は、一つの副次的な動機によって結びつけられており、曲の進展を中断するような、主題に対立する要素は現れない[5]

第1主題

 \relative f { \clef bass \key g \minor \time 3/4 \tempo "Allegro" g\mf (a bes | c d bes8 a) | g2.( es2) f4 }

経過句(副次的動機)

 \relative f' { \clef bass \key g \minor \time 3/4 es2 f,4( | g4.) f8( es4 | f) es( f | g4. a8 bes4) }

第2主題

 \relative f' { \clef tenor \key g \minor \time 3/4 bes2.\mf-\markup { cantando }( | ges~ | ges2) as4( | f2.) | ges2.( | es~ | es2) f4( | des2.) }

展開部は1小節の間隔を置いたカノンによって始まる。再現部では、提示部とは逆にチェロによって第1主題が戻ってくる。再現部は短縮されており、コーダではト長調となって、再びカノンを用いた新たな展開部へと導かれる[4]

第2楽章

アンダンテ、ハ短調、4/4拍子。深い瞑想感を湛えた楽章[5]。 第1主題は同じハ短調の『エレジー』を思わせる[4]が、むしろ憂いのこもった響きで悲しみの内にも気品を漂わせる[5]

第1主題

 \relative f' { \clef bass \key c \minor \time 4/4 \tempo "Andante" es2\f~ es8.( c16) d4~ | d8.( bes16) g4~ g8 f as bes | c4.->( g8--) g4( c,) }

第2主題は変イ長調で、ささやくようなコラールのフレーズとなって変ホ音(上中音)の周りを巡る[4]

第2主題

 \relative c' { \clef tenor \key c \minor \time 4/4 as2-\markup { mezzo \dynamic p }( c4 des | es2.) bes4( | des4. c8 es4) bes( | des4. c8 es4) bes}

コラール旋律に基づきながら、やがてピアノによっていきなり遠くのロ短調に転調し、激しさを増す。二つの主題がフォルティッシモで重ねられて再現部となる。第2主題はハ長調で再現し、そのまま穏やかな光の中で終わる[4]

第3楽章

アレグロ・ヴィーヴォ、ト短調、2/4拍子。自由なソナタ形式。冒頭の部分は、頻繁な転調と躍動するリズムが印象的である[5]

第1主題

 \relative f' { \clef tenor \key g \minor \time 2/4 \tempo "Allegro vivo" d4.\f g,8 | a( bes4 g8) | c8( d4 c8) | f4. c8 }

第1主題が提示されるたびに転調が起こるため、フレーズが終結せず、4度にわたって第1主題の提示が試みられ、第56小節目でようやく主題が確保される。その直後、ピアノに第2主題が突然出現する[4]

第2主題

 \relative f'' { \key g \minor \time 2/4 g2-\markup { meno \dynamic f }-\markup { cantando }( | f4 es~ es8 g f4 | f2 | es4 d8 c | bes4. as8 | bes4 c | d8 bes g4~ |g8) }

第2主題は変ホ長調[15]。 「テンポを落とさずに」と指示されており、この楽章の「中間部」を形成する。この主題は4声で書かれており、掛留音の使用によって生み出される効果は、この曲の少し前に書かれたモーリス・ラヴェルの『クープランの墓』(1914年 - 1917年)との類似が認められる[5][4]。 フォーレの作品では『9つの前奏曲』の第4番を思い起こさせるもので、ここには、17世紀から18世紀にかけて、フランスクラヴサン音楽に脈々と息づいてきた優美さに対する鋭い感覚がうかがわれる[4]

スケルツォ主題を反復した後、冒頭音型による展開部となる。ネクトゥーによれば「オーバード」(朝の音楽)にも喩えられる部分[5]で、快活さとチェロのピチカートによる皮肉な調子、若々しい響きなどからは、1917年の春に初演されたクロード・ドビュッシーチェロソナタの「セレナード」を想起させる。フォーレがこのようにドビュッシーへの接近を見せることは例外的である[4]

コーダはト長調。チェロに反復音を用いた書法が現れ、リズム動機を繰り返しながら、全曲を輝かしく力強く締めくくる[5][4]


注釈

  1. ^ サージェントはフォーレの肖像画を数点描いており、1889年頃とされる油彩によるものがとくに有名。
  2. ^ フランスの哲学者ウラジミール・ジャンケレヴィッチは、ハ長調はフォーレのオペラ『ペネロープ』の終結部に現れるのと同じ調だと指摘している。

出典

  1. ^ a b c d e f クライトン 1985, p. 180.
  2. ^ ネクトゥー 2000, p. 588.
  3. ^ ネクトゥー 2000, p. 771.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v ネクトゥー 2000, pp. 609–615.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l ネクトゥー 1990, pp. 224–227.
  6. ^ ネクトゥー 2000, p. 644.
  7. ^ ネクトゥー 2000, p. 818.
  8. ^ ネクトゥー 2000, p. 646.
  9. ^ ネクトゥー 2000, p. 620.
  10. ^ 美山 1990, pp. 4–5.
  11. ^ ジャンケレヴィッチ 2006, p. 385.
  12. ^ ネクトゥー 1990, p. 221.
  13. ^ ネクトゥー 2000, p. 338.
  14. ^ ジャンケレヴィッチ 2006, pp. 262–263.
  15. ^ 平島 1987, pp. 28–29.





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