ダイナマイトどんどん 興行・宣伝

ダイナマイトどんどん

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/22 14:05 UTC 版)

興行・宣伝

1978年の映画興行は『スター・ウォーズ』が予想以上のヒットにはならず[24]、洋画の下半期に強力作品がなかったことから[24]、ナリを潜めていた邦画界の逆襲が期待された[24]。特に10月興行は、本作の他、東映、日本ヘラルド共同配給『野性の証明』、松竹皇帝のいない八月』(10月7日から『鬼畜』)、東宝聖職の碑』と全作品を現役、元東映俳優が主演を務めるという珍しい興行争いとなった[25]。菅原は前年の秋に自身が企画して主演した『ボクサー』が配収3億円と同時期公開された角川映画『人間の証明』配収25億円とボロ負けし[5][23]、一年経ってまた角川と戦うことになり、角川の物量宣伝作戦に背に腹は代えられず。菅原は常々「映画で食えるうちは、テレビの世話になりたくない。もちろんCMはすべて断る。オレは映画俳優だ」と公言していたが、『野性の証明』が書籍も合わせると10億円の宣伝費を使うと聞き、ヘタをするとかすんでしまうという危機感から、何としても『ダイナマイトどんどん』をヒットさせたいと、チオビタ大鵬薬品工業)のCMにノーギャラで出演した[9][25]。その代わりにCM中に「ダイナマイトどんどん!」と映画のタイトルを宣伝するという条件を付けた[5][24]

菅原は「角川さんだとか、そういう異質な人がね、映画界に殴り込んで来て、その人たちがいままでにない規模で物量を投入しはじめて、今のテレビを主体にした宣伝時代にぴたっとしたもんですから、それなりに成功を収めた。ひとつのプログラムとして映画館に毎週毎週提供していたところへ、異質な形態で入って来た人たちにかき回されて周章狼狽しちゃって、活動屋はみんな右へ倣えしていますね。時代がそうなんだからそれでいいという考えもあるし、しかしやっぱりそれだけじゃ面白くない。映画っていうのは本来、映画館の片隅の暗がりで、青春の憂さの吐けどころといったものが基調にならなければいけないという考え方もある。ボクがそれで来たものだから、今の傾向には多少反発もあるし、ボクはボク流のやり方でそういうものに斬り込んでいくしかない。しんどいですけど。ボクは前売り券が出るような映画には出たくないんですよ。今回も『犬笛』もやむを得ず前売り券を出していますけど、映画というのは長い目で見れば、やっぱりキッチリ作って、もちろんそれなりの宣伝は必要なんですけど、それ以上にお客さんが自分の嗅覚で嗅ぎとって劇場へ観に来て下さるというのが一番まともなんじゃないですかね。だから巨額の宣伝費をかけたり、前売り券を何十万枚も売るなんていうのは、そうそう続かないと思うんです。お客さんも前売り券を買ったから見に行くんじゃなくて、新聞を見るなりして自分の見たい映画をセレクトして見に来てくれるということじゃないと、映画は面白くならないし、ボクはそういうものに流されないでいこうと思っています」などと角川映画を批判した[3]


  1. ^ a b c d e f 井手雅人「特集1 『ダイナマイトどんどん』 野球に賭けたやくざの男たちの凄絶な闘志と可愛さ」『キネマ旬報』1978年10月下旬号、キネマ旬報社、60 - 61頁。 
  2. ^ a b 全映画 2015, pp. 180–181.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 「話題の人訪問(8) 菅原文太 『大作主義に文太流の斬り込みをかけたい』」『シネ・フロント』1978年10月号 NO.28、シネ・フロント社、8-10頁。 
  4. ^ a b c d フォービート 1992, pp. 105–106.
  5. ^ a b c d 「POST 『燃える男・菅原文太の心意気 映画宣伝のためCM無料出演』」『週刊明星』1978年8月6日号、集英社、51頁。 
  6. ^ a b c d e f g 古田求「特集2 『ダイナマイトどんどん』 ヒーロー・ヒロインの残像を求める旅の途中で...」『キネマ旬報』1978年10月下旬号、キネマ旬報社、62 - 64頁。 
  7. ^ 俊藤浩滋山根貞男『任侠映画伝』講談社、1999年、225-231頁。ISBN 4-06-209594-7 
    春日太一『あかんやつら 東映京都撮影所血風録』文藝春秋、2013年、324-325頁。ISBN 4-1637-68-10-6 
  8. ^ “【菅原文太さん死去】「激しく、熱い波動が忘れられません」 俳優の北大路欣也さん”. 産経ニュース. 産業経済新聞社. (2014年12月1日). オリジナルの2014年12月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20141203204528/https://www.sankei.com/entertainments/news/141201/ent1412010016-n1.html 2018年8月9日閲覧。 
  9. ^ a b c d e f 森山京子「製作会見 『ダイナマイトどんどん』」『キネマ旬報』1978年9月下旬号、キネマ旬報社、165頁。 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l 木崎徹郎「興行価値」『キネマ旬報』1978年11月下旬号、キネマ旬報社、178 - 179頁。 
  11. ^ a b c 「ヒット・Hit 映画劇場」『キネマ旬報』1976年7月上旬号、202頁。 
  12. ^ a b c 「グラビア 『ダイナマイトどんどん』」『キネマ旬報』1978年10月下旬号、キネマ旬報社、20 - 21頁。 
  13. ^ 「映画・トピック・ジャーナル」『キネマ旬報』1977年10月下旬号、180頁。 
  14. ^ 大槻ケンヂ「国際おマヌケ映画際に『ボクサー』を」『現代詩手帖』1993年4月号、思潮社、150-152頁。 
  15. ^ 「東映アクションの新シリーズ 『ラグビー野郎』」『キネマ旬報』1976年5月下旬号、46頁。 
    中島貞夫『遊撃の美学 映画監督中島貞夫ワイズ出版、2004年、268-276頁。ISBN 4-89830-173-8 
    杉作J太郎、植地毅『東映スピード・アクション浪漫アルバム』徳間書店、2015年、114-119頁。ISBN 978-4-19-864003-3 
  16. ^ a b 「邦画界トピックス」『ロードショー』1976年10月号、集英社、175頁。 
  17. ^ 高橋聰「ルポ特集II 親子同伴でにぎやかな『がんばれ!ベアーズ・日本遠征』京都ロケ見聞記」『キネマ旬報』1977年10月下旬号、キネマ旬報社、99 - 101頁。 
  18. ^ 八森稔「話題の映画『ボクサー』とは?」『キネマ旬報』1977年10月上旬号、キネマ旬報社、50 - 51頁。 
  19. ^ a b 「邦画マンスリー 『新宿酔いどれ番地/人斬り鉄』」『ロードショー』1977年5月号、集英社、181頁。 
  20. ^ 日下部五朗『シネマの極道 映画プロデューサー一代』新潮社、2012年、107-108頁。ISBN 978-4103332312 
  21. ^ a b c 「ハッスルしてます文太兄ィ」『映画情報』1978年11月号、国際情報社、22-24頁。 
  22. ^ ダイナマイトどんどん : 角川映画
  23. ^ a b 「この秋話題の日本映画総チェック」『週刊明星』1978年9月3日号、集英社、111頁。 
  24. ^ a b c d 河原一邦「邦画マンスリー 『この秋の邦画界は大豊作だ!』」『ロードショー』1978年10月号、集英社、184頁。 
  25. ^ a b 河原一邦「邦画マンスリー 『菅原文太、CM初主演の裏に東映の顔役 "秋の大抗争"が待っていた!』」『ロードショー』1978年9月号、集英社、183頁。 
  26. ^ 「あえてB級をめざす『悪魔が来りて笛を吹く』の全貌」『週刊明星』1978年10月29日号、集英社、46頁。 
  27. ^ 山根貞男・宇田川幸洋「今月の問題批評2 岡本喜八監督の『ダイナマイトどんどん』」『キネマ旬報』1978年11月下旬号、キネマ旬報社、146 - 147頁。 
  28. ^ 神武団四郎「失われた映画史【19】 大藪春彦、連作映画化企画は実在した! 角川春樹版『傭兵たちの挽歌』の運命」『映画秘宝』2014年7月号、洋泉社、60頁。 


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