センリョウ 人間との関わり

センリョウ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/24 17:54 UTC 版)

人間との関わり

花の少ない冬に美しい果実をつけるため、正月の縁起物として切枝(果実をつけた枝)が流通している[14]。正月用の飾りに使われる切枝には、サクラソウ科マンリョウもあるが、正月用切枝としてはセンリョウのほうが人気で、生花市場ではセンリョウ市が開かれ膨大な量が扱われる[4]。マンリョウはセンリョウとよく対比されるが、マンリョウのほうが葉幅がやや狭く、赤色の果実はくすんだ色をしている[4]。2021年の東京都中央卸売市場におけるセンリョウの取引金額は3億6948万円 (約200万束、ほとんどが12月)、そのうち56%は茨城県産、31%は千葉県産であった[15][16]

センリョウは、庭植え(関東地方以西)や鉢植えでの観賞用としても広く栽培されている[17]。果実が黄色いキミノセンリョウ(上図3c)や、斑入りの園芸品種も流通している[17]

センリョウは少なくとも江戸時代初期から栽培され、生け花などに用いられていた[3]。『立花大全』(1683年) や『花壇地錦抄』(1695年) では、「仙蓼せんりゃう」と表記されている[3]。また『花譜』(1694年) では「珊瑚さんご」と記している[3]。江戸時代後期に、同じく赤い実を多数つけるマンリョウ (万両; サクラソウ科) と対比した縁起物として、「千両」の字を充てるようになった[3]。同様に赤い実をつける植物の中には、「百両」(カラタチバナ; サクラソウ科)、「十両」(ヤブコウジ; サクラソウ科)、「一両」(アリドオシ; アカネ科) の名でよばれるものもいる[6]

花言葉は「利益」[14]、「祝福」[14]、「富」[14][4]、「財産」[14]、「裕福」[4]

夏に採取し乾燥した若い枝葉や、それを酒で煮出したものを生薬とすることがある[6][14]中国では腫節風 (Zhong Jie Feng) や草珊瑚 (Cao Shan Hu)、九節茶などとよばれ、抗菌、消炎、去風除湿、活血、止痛の効能があるとされる[14][18]。センリョウからはセスキテルペンフラボノイドフェノール酸クマリンなど200種以上の物質が単離同定されており、その中には抗菌、抗ウイルス、抗炎症、抗腫瘍、および抗血小板減少症が確認されたものもある[18]。また、センリョウをお茶として利用する地域もある[18]


注釈

  1. ^ Sarcandra glabra f. flava (Makino) Okuyama, 1955 の学名を充てることもあるが[11]、分類学的に分けないこともある[12]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j Sarcandra glabra”. Plants of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年8月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 太田和夫 (2000). “センリョウ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. p. 469. ISBN 4-635-07003-4 
  3. ^ a b c d e f "センリョウ". 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2021年8月12日閲覧
  4. ^ a b c d e f g h i 田中潔 2011, p. 20.
  5. ^ "草珊瑚". 動植物名よみかた辞典 普及版. コトバンクより2021年8月13日閲覧
  6. ^ a b c センリョウ”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 2021年8月13日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n 米倉浩司 (2015). “センリョウ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 52–53. ISBN 978-4582535310 
  8. ^ a b c d e f g h i j k 大森雄治 (1999). “日本のドクダミ科・コショウ科・センリョウ科植物”. 横須賀市博物館研究報告 自然科学 46: 9-21. NAID 40003710131. 
  9. ^ a b 田村道夫 (1999). “無道管被子植物”. 植物の系統. 文一総合出版. pp. 141–142. ISBN 978-4829921265 
  10. ^ a b 馬場多久男 (1999). “センリョウ”. 葉でわかる樹木 625種の検索. 信濃毎日新聞社. p. 124. ISBN 978-4784098507 
  11. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “キミノセンリョウ”. BG Plants 和名−学名インデックス (YList). 2021年8月12日閲覧。
  12. ^ GBIF Secretariat (2021年). “Sarcandra glabra (Thunb.) Nakai”. GBIF Backbone Taxonomy. 2021年8月13日閲覧。
  13. ^ a b 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 98.
  14. ^ a b c d e f g 小池佑果・川添和義・磯田進. “センリョウ”. 生薬の花. 公益社団法人 日本薬学学会. 2021年8月13日閲覧。
  15. ^ 市場統計情報(月報・年報)”. 東京都中央卸売市場. 東京都. 2022年8月13日閲覧。
  16. ^ 日本一の「千両・若松」産地 かみす”. 神栖市 (2019年12月1日). 2022年8月13日閲覧。
  17. ^ a b センリョウ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2022年8月13日閲覧。
  18. ^ a b c Zeng, Y., Liu, J., Zhang, Q., Qin, X., Li, Z., Sun, G. & Jin, S. (2021). “The traditional uses, phytochemistry and pharmacology of Sarcandra glabra (Thunb.) Nakai, a Chinese herb with potential for development”. Frontiers in Pharmacology 12: 652926. doi:10.3389/fphar.2021.652926. 


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