サクラマス 亜種

サクラマス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/08 19:22 UTC 版)

亜種

サクラマス・ヤマメ
学名 O. masou masou 降海型:サクラマス、河川残留型(陸封型):ヤマメ
サクラマス(降海型)は最大で全長 70 cm、10 kg になる。ヤマメは 30 cm 程度まで。オホーツク海、日本海、日本北部と朝鮮半島東岸に分布。
サツキマス・アマゴ
学名 O. masou ishikawae 降海型:サツキマス、河川残留型(陸封型):アマゴ
サツキマス(降海型)は全長 50 cm、体重 1.5 kg。アマゴは 30 cm まで。日本固有亜種で、本州の太平洋側、四国および九州の瀬戸内海沿岸に分布。学名を O. masou macrostomus とする場合もある。アマゴは体側に赤い小斑点があることでヤマメとの区別ができる。
ビワマス
学名 O. masou rhodurus
全長 70 cm 程になる。琵琶湖およびその流入河川が原産の亜種。中禅寺湖芦ノ湖にも移入された。かつてはアマゴと同種であるとされたが、DNA解析により別亜種であることが判明した。陸封期間が長かったことから、海水耐性が失われている。
タイワンマス
学名 O. masou formosanus
サラマオマス (Saramao masu) とも呼ばれる(タイヤル族サラマオ村落の鱒」の意)。すべてが河川残留型(陸封型)で、水温摂氏15度以下の台湾の河川に分布し、海水耐性に付いては不明である。全長 30 cm。ヤマメなどの他の河川残留型(陸封型)よりもやや小さく、黒っぽい体色。体の側面には、側線状に9個の黒斑(パーマーク)があり、背面よりのは11-13個の黒点がある。サケ科魚類の生息南限に相当する。中国語では桜花鉤吻鮭という。

交雑種

ホンマス
学名
中禅寺湖に放流されたビワマスかサツキマス(アマゴ)とサクラマス(ヤマメ)が自然交雑したものと考えられている。小型魚はヤマメ・アマゴに似ており、体側に朱点を持つものと朱点を持たないものがいる。大型魚にはサクラマスに似た個体とビワマスに似た個体がいることから、サクラマスとビワマスの交配種である可能性が高い。中禅寺湖 や湯の湖に生息するほか、木崎湖にもキザキマス(O. masou subsp) と呼ばれるホンマスに似た魚が生息している。
カワサバ
イワナヤマメの繁殖力の無い一代交雑種[19]。ヤマメの特徴であるパーマークがあるが、背中の斑点がイワナの特徴である流れる傾向がみられ斑紋が海の魚のサバのように見える事からカワサバと呼ばれるようになった。模様の出現状態は個体により異なる。繁殖能力は無いとする研究[20]と有るとする研究[21]がある。「ヤマメやイワナより寿命が長い」[22]「温度耐性試験の結果両親のイワナ・ヤマメよりも高温に強い」などの特徴を持つとする研究結果がある[20]。自然河川では産卵床形成位置の違い[23]や「生息適水温の違いと産卵時期の違い(イワナ 11-12月、ヤマメ - 9-10月)により産卵場所が分けられ交雑することは少ない」とされているが、ヤマメの生息域拡大や天候の影響や個体差で希に産卵時期が重なることがあり、交雑が生じている。また、河川増水により生息域が交差したり[24]、イワナ域にヤマメ、ヤマメ域にイワナを放流することにより交雑することもある[25]。なお、札幌市豊平川さけ科学館では人工的にヤマメ(サクラマス)とエゾイワナ(アメマス)を交配した魚を展示している[26][27]。ヤマメの亜種のアマゴやヤマメの降海型のサクラマスとイワナ[26][27]の交雑も確認されているが、いずれもヤマメとイワナの交雑と全く同様の魚が生まれる。

  1. ^ 『改訂新版 世界文化生物大図鑑 魚類』世界文化社、2004年。 
  2. ^ a b N. Y.「サクラマス (Oncorhynchus masou)」『日本農芸化学会誌』第56巻第11号、日本農芸化学会、1982年、1095-1096頁、doi:10.1271/nogeikagaku1924.56.1095 
  3. ^ a b サクラマス(ヤマメ)[桜鱒(山女魚)] 北海道庁
  4. ^ サクラマス 青森県むつ市
  5. ^ 大熊一正、「サクラマス増殖に関する調査研究と今後の展開について (PDF) 」 水産総合研究センター、さけ・ます資源管理連絡会、平成15年8月7日。
  6. ^ 真野修一「襟裳岬周辺海域に出現するサクラマス幼魚の回遊生態」『北海道立水産孵化場研究報告』第50号、北海道立水産孵化場、1996年3月、17-28頁、ISSN 0286-6536 
  7. ^ 木村志津雄、「無斑紋サクラマス, Oncorhynchus masou の選抜交配」『水産増殖』 1994年 42巻 4号 p.615-618, doi:10.11233/aquaculturesci1953.42.615
  8. ^ 日本産サケ属(Oncorhynchus)魚類の形態と分布 (PDF) - 福井市自然史博物館
  9. ^ 真野修一「襟裳岬周辺海域に出現するサクラマス幼魚の回遊生態」第50号、北海道立水産孵化場、1996年3月、ISSN 02866536 
  10. ^ a b 眞山紘; 小野郁夫; 平澤勝秋『北海道の河川に放流された標識サクラマスの海洋における回遊生態』(PDF)(レポート) 14巻〈さけ・ます資源管理センターニュース〉、2005年3月https://salmon.fra.affrc.go.jp/kankobutu/salmon/salmon14_p01-09.pdf 
  11. ^ 棟方有宗、三浦剛「サクラマスのライフサイクルの調整機構の解明と教材化」『宮城教育大学紀要』第43巻、宮城教育大学、2008年、105-112頁、ISSN 13461621NAID 110007058328 
  12. ^ 広瀬健一郎、丸谷知己「山地河川における階段状河床地形とヤマメ(Oncorhynchus masou masou)産卵床の形成位置に関する研究」『九州大学農学部演習林報告』第68巻、九州大学農学部附属演習林、1993年3月、73-84頁、doi:10.15017/10879hdl:2324/10879ISSN 0453-0284 
  13. ^ 宮腰靖之「北海道におけるサクラマスの放流効果および資源評価に関する研究」『北海道立水産孵化場研究報告』第60号、北海道立水産孵化場、2006年3月、1-64[含 英語文要旨]、ISSN 02866536NAID 40015329094 
  14. ^ - 国内移入によるかく乱 -
  15. ^ 田子泰彦、「神通川で漁獲されたサクラマスの最近の魚体の小型化」『水産増殖』 2002年 50巻 3号 p.387-391, doi:10.11233/aquaculturesci1953.50.387
  16. ^ 3月18日「佐渡サクラマス」の出荷を開始しました 弓ヶ浜水産
  17. ^ エドアルド・エスタィ・マリン「チリ国に回帰した日本産サクラマス―チリ国におけるサケ科魚類の淡水増養殖研究に関する概略」『魚と卵』第159号、さけ・ます資源管理センター、1990年、23-24頁、NDLJP:3505288 
  18. ^ 真山紘「越冬時サクラマス幼魚の生活と河川環境」『魚と卵』第164巻、1995年3月、33-40頁、NAID 80008374613NDLJP:3505367 
  19. ^ 内水面水産試験場見学コーナー! - 話題 - わたしはだあれ? 宮城県内水面水産試験場
  20. ^ a b 飼育魚図鑑 宮城県内水面水産試験場[リンク切れ]
  21. ^ 加藤憲司:多摩川上流で採集されたサケ科魚類の自然雑種」『魚類学雑誌』 Vol.23 (1976-1977) No.4 P.225-232, doi:10.11369/jji1950.23.225
  22. ^ ザ!鉄腕!DASH!! 2014年12月22日放送分 - 宮城県内水面水産試験場
  23. ^ 丸山隆、「ヤマメ Salmo(Oncorhynchus)matson masou(BREVOORT)とイワナ Salveliaus leucomaenis(PALLAS)の比較生態学的研究 : I.由良川上谷における産卵床の形状と立地条件」『日本生態学会誌』 1981年 31巻 3号 p.269-284, doi:10.18960/seitai.31.3_269
  24. ^ 鈴木亮、「種育学的にみた魚類の交雑」『日本水産学会誌』 1966年 32巻 8号 p.677-688, doi:10.2331/suisan.32.677
  25. ^ この魚は何でしょう? 宮城県内水面水産試験場
  26. ^ a b 『カワサバ』の展示始めました
  27. ^ a b 札幌サケ情報ブログ- 上から5枚目と6枚目の魚


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