コンピュータ断層撮影 構造

コンピュータ断層撮影

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/29 05:43 UTC 版)

構造

撮影構造

ノンヘリカルスキャン
1スライス毎に寝台の移動と停止を逐次繰り返しながら行う撮影構造。旧来よりの方法という意味でコンベンショナルスキャン[注釈 12]と呼ぶこともあるが、最近ではヘリカルCTに対する言葉としてノンヘリカルCTと言うことが多い。クラスタースキャン[注釈 13]という呼び方もある。撮影時間が長くなるが、アーティファクトが少なくなる利点を活かし、微妙な濃度差を検出する必要のあるのルーチン撮影では、引き続き厚いスライスでのノンヘリカルスキャンが一般的に行われている。
ヘリカルスキャン
連続回転する線源の中を、寝台を一定速度で動かし続けながら行う撮影構造。患者から見ると線源がらせん状に動くことになる。スパイラル(螺旋)スキャンとも言われる。ノンヘリカルスキャン(コンベンショナルスキャン)に比べて走査時間を短縮でき、一度の息止めで体幹部全体を撮像することも可能である。現在[いつ?]市販されているCTスキャナはすべてこの撮影方法に対応している。ただし骨周囲などX線の散乱が多い状況では画質的に不利になることがある。頚部から下の撮影では、特殊な検査以外ではほとんどこちらが用いられる。

検出器

単列検出器CT(旧来のCT)
初期の頃のCTは検出器が1列しかなく、1回の回転で1枚の画像しか得られず、撮影時間が長いことが難点であった。
多列検出器CT(MDCT[注釈 14]
X線を扇状にやや広い角度に照射し、対側の検出器自体を細分割して多列化したCTであり、1回の線源の回転でより多くの範囲の撮影が行える。1998年に4列以上の検出器を備えたCTが開発され、2002年には16列以上の検出器を備えたCTが開発され、広く普及していった。2012年[7]には最大320列の検出器を備えたMDCTが販売されており、1回転で心臓や脳のほぼ全体を撮影することが可能となっている。脳や心臓などの臓器は160mm以下であるため、最短0.275秒で全範囲を撮影することができる。この160mmの範囲を連続撮影することで、全脳や心臓などの血流、呼吸下での肺の動態、関節の動態などを評価することが可能である[8]。また、80列CTは最高多列の320列CTを応用している検出器である。短時間で鮮明な撮影が可能であることから、特に救急患者の迅速な診断治療に有用である[9]。おもに大学病院や救命救急センターで用いられる非常に高性能な機種である[10]

注釈

  1. ^ : multi-planar reconstruction
  2. ^ : maximum intensity projection
  3. ^ ヘリカルCTもしくはスパイラルCT
  4. ^ ノンヘリカルCT、もしくはコンベンショナルCT。
  5. ^ 高速フーリエ変換の性質を活用するため、2,3,5,7などの小さい素数からなる積で表されるような数であれば計算が能率良く高速にできる。たとえば2の冪乗が最も都合が良い。
  6. ^ : filtered back projection
  7. ^ : iterative reconstruction
  8. ^ : back projection
  9. ^ : iterative reconstruction
  10. ^ Feldkamp
  11. ^ cone-beam CT
  12. ^ : conventional scan
  13. ^ : cluster scan
  14. ^ : multi detector-row CT
  15. ^ : autopsy imaging
  16. ^ : post-mortem imaging
  17. ^ : contrast enhanced CT
  18. ^ : perfusion CT
  19. ^ : CT angiography
  20. ^ : hounsfield unit
  21. ^ : CT number
  22. ^ : multiplanar reconstruction
  23. ^ : RaySUM image
  24. ^ 既知の電子密度を有する物体をCTで撮影することによって、得られたCT値とその電子密度を紐づけすることで作成される。
  25. ^ : inter-fractional error
  26. ^ : intra-fractional error
  27. ^ アキュレイ社トモテラピー、Varian社Halcyonなど。
  28. ^ オーストラリア、カナダ、クロアチア、チェコ、フィンランド、ドイツ、日本、クウェート、オランダ、ノルウェー、ポーランド、スウェーデン、スイス、アメリカ合衆国
  29. ^ 歯科用CT装置は全てコーンビームCTである。

出典

  1. ^ 『エックス線回転横断撮影装置(座位)- CT の概念構築のさきがけ -』 (PDF, 200.48KB) - 産業技術史資料情報センター(国立科学博物館)
  2. ^ 高橋信次「X線回転撮影法の研究」『日本放射線学会宿題報告』1951年。 
  3. ^ Takahashi S (March 1957). Rotation Radio1ogy. Japan Society for the Promotion of Science. 
  4. ^ a b c d e f g h i j 戸田裕之. X線CT―産業・理工学でのトモグラフィー実践活用. 共立出版. ISBN 978-4-320-08222-9 
  5. ^ a b c d (PDF) CT画像再構成法の現状を 理解しよう!, http://www.innervision.co.jp/ressources/pdf/innervision2013/iv201311_028.pdf 
  6. ^ 工藤博幸、逐次近似法を用いたCT画像再構成法の考え方と驚異 Medical Imaging Technology. 2005年 23巻 1号 p.23-, doi:10.11409/mit.23.23
  7. ^ 320列検出器搭載Aquilion ONEの国内すべてのシステムに低線量撮影技術を提供 ~最大で75%の被ばく低減を実現~ - 東芝メディカルシステムズ、2012年3月29日(JST)
  8. ^ CT装置(320列CT・80列CT)|大雄会 病院サイト|愛知県一宮市
  9. ^ 中津市民病院広報誌ゆりかご 平成25年1月発行
  10. ^ 板垣救急クリニックのCTが80列の高性能機種にアップグレードされます
  11. ^ a b Unless otherwise specified in boxes, reference is:
    - Radiation Dose in X-Ray and CT Exams”. RadiologyInfo.org by Radiological Society of North America. 2017年10月23日閲覧。
  12. ^ Brisbane, Wayne; Bailey, Michael R.; Sorensen, Mathew D. (2016). “An overview of kidney stone imaging techniques”. Nature Reviews Urology (Springer Nature) 13 (11): 654–662. doi:10.1038/nrurol.2016.154. ISSN 1759-4812. PMC 5443345. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5443345/. 
  13. ^ Zhang, Zhuoli; Qi, Li; Meinel, Felix G.; Zhou, Chang Sheng; Zhao, Yan E.; Schoepf, U. Joseph; Zhang, Long Jiang; Lu, Guang Ming (2014). “Image Quality and Radiation Dose of Lower Extremity CT Angiography Using 70 kVp, High Pitch Acquisition and Sinogram-Affirmed Iterative Reconstruction”. PLoS ONE 9 (6): e99112. doi:10.1371/journal.pone.0099112. ISSN 1932-6203. 
  14. ^ a b c d e Berrington, Darby(2004)
  15. ^ ICRP: Pregnancy and Medical Radiation. ICRP Publication 84, 2000, pp15-17
  16. ^ 日本発の半導体技術が医療に革新 CTの放射線量を100分の1に (SankeiBiz 2022年4月26日記事)
  17. ^ 鳴海善文・中村仁信「非イオン性ヨード造影剤およびガドリニウム造影剤の重症副作用および死亡例の頻度調査」『日本医学放射線学会雑誌』65巻3号、2005年7月25日、300-301頁, NAID 10016604063
  18. ^ 「画像診断報告書」相次ぐ確認不足 重要情報共有されず/再発防ぐ対策続々『日本経済新聞』朝刊2018年3月19日(医療・健康面)
  19. ^ これからのCT画像はAIで診断支援!類似症例の正解率は85%、診断時間は6分の1富士通(2018年4月1日閲覧)
  20. ^ エジプトの猫ミイラ、新X線技術で撮影に成功/巻いた布を剥がずに内部の組成を解き明かすナショナルジオグラフィック日本語サイト(2017年12月19日閲覧)
  21. ^ 仏像も、CTスキャンする時代 胎内の把握・「健康診断」で活躍『朝日新聞』朝刊2017年11月21日






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