ガンダム・センチネル 企画の進展

ガンダム・センチネル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/11 13:56 UTC 版)

企画の進展

元々の企画はバンダイから『モデルグラフィックス』(以下MG誌)編集部へ発注されたもので、『機動戦士ガンダムΖΖ』終了から『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の公開までプラモデルのラインナップに空白が発生してしまうため、かつてのMSVシリーズに準じた形の、いわば「つなぎ」の企画としてスタートした。MG誌編集部は『ΖΖ』でデザインワークに参加しており、その縁からの依頼だったと推測される。企画は『ガンダム・センチネル』と名付けられ、誌面での連動を行い、新ガンダム(後のSガンダム)等、数点のキットを発売するというものだった。

1987年7月にガンプラの新シリーズ『ガンダム・センチネル』第一弾としてフルアーマーΖΖガンダムが発売された。フルアーマーΖΖガンダム自体は『ΖΖ』46話に登場した機体だが、キットはアニメ登場のものではなく、MG誌に掲載された1/100キット改造の牛久保孝一の作例に準じたもので、テレビ未登場の大型ビームランチャーを装備した白一色のカラーリングとなった。なお、キット化第2弾は1/300 クィン・マンサ、第3弾がスプリーム・ガンダム(後のSガンダム)となる予定だった。また、1/144 キュベレイなどの商品化の可能性を匂わせており、従来シリーズでキット化されなかったMSを製品化するという目論見も含んだ企画であった。

ところが、『逆襲のシャア』関連商品の製品化が当初の予定よりも前倒しになったため、「『ガンダム』を冠する2種類の新シリーズ商品が市場に並んでユーザーが混乱する事を避ける」というバンダイ側の理由から、センチネルシリーズのプラキット化はフルアーマーΖΖガンダムのみで一時凍結(事実上の中止)となった。

この事態に、MG誌編集部のあさのまさひこは、再商品化を目指すべく、企画をMG誌編集部に引き揚げ、模型誌の連載として『センチネル』を再始動させる。純粋な模型誌の読み物として再構成し、『月刊ニュータイプ』の協力を得て、1987年8月号のガンダム特集で自ら『センチネル』のプロパガンダを行った。記事中には庵野秀明原画のゼク・アインネロ(準備稿)や、かときはじめ(現カトキハジメ)によるSガンダムの概念図等が掲載された。

そしてMG誌1987年9月号より連載が開始され、高橋昌也によるノベライズ、かときによるデザイン、あさのまさひこ監修による作例を軸に、ガンダム世界の「リアル」をとことん突き詰めたセンチネルは、3年に渡る長期連載となった。また、模型業界の事情や、モデラーやユーザーの意識を問う記事、模型雑誌としては異様とも言える様々なコラム、かときはじめによる実際の航空宇宙技術開発の解説を踏まえたMSのメカニズム解説、明貴美加による「モビルスーツ少女」など、多様な記事が掲載された。また、読者と企画側の間で熱い意見が交わされた読者投稿コーナーの常連からは後に、何人もの模型ライターが誕生している。

人気の高まりを受けて『逆襲のシャア』シリーズ終了後にキット化が再開。Sガンダムとそのバリエーション2種、Ζプラスの計4種がキット化された。キット発売以降は当時のキットが未消化だった部分のフォローを中心とした展開が行われ、それに併せて商品化未定のMSやパーツ等をMG.O.C.K.(Model Graphix Original Cast Kitの略称)ブランドからガレージキットとして販売した。雑誌作例として製作された高度な立体物をそのまま、あるいは更なる改修を施した形でユーザーが入手出来るキットとして、ゼク・アインガンダムMk-Vネロ等が発売された。

1989年には、これまでの集大成として別冊『GUNDAM SENTINEL〜THE BATTLE OF "REAL GUNDAM"〜』が刊行された。新MAゾディ・アックの登場など誌上連載のフォトストーリーは大幅に加筆・修正され、最新版の設定資料、リファインEx-Sなど新作を含むセンチネルモデラーのワークス体制による模型作例、スタッフのインタビュー記事が盛り込まれた。小説パートはレイアウトの都合上文字が小さく読みにくいものとなってしまったこともあり、翌年にムックではカットされた部分を加え『ガンダム・センチネル ALICEの懺悔』の題名で書籍として刊行された。

1990年5月号・7月号掲載の連載最終回「センチネル0079」では、一年戦争のソロモン攻略戦をセンチネル的解釈でリファインしており、この際に発表されたカトキによるリファイン版RX-78が後の「ガンダムVer.Ka」となった。なお別冊発行後のMG誌連載分(センチネル0079含む)は「連載を支えてくれた読者へのサービス」と位置づけて、「ムック化は行わない」と宣言されており、掲載誌は高額で取り引きされている。

現在でこそSDガンダムシリーズに登場するなど公式作品に準じるものとして扱われているが、連載当時はMG誌創刊時のゴタゴタの遺恨やあさの達スタッフの挑発的な言動もあって業界内でも風当たりが強く、競合模型誌はもちろん他メディアでも前述のニュータイプ誌など一部を除いてほとんど採り上げられなかった[1][2]


  1. ^ なおキットの発売後、ホビージャパンでもSガンダム及びBst型、Ζプラスの作例が掲載されている。いずれも本家たるMG誌ほどの大幅な改造などは行われず最低限の加工のみを施したものだったが、Sガンダムについては足(腿部分)の延長を行って全体的な見た目を良くするなど、キットの魅力を最大限に伝える試みもなされていた。このSガンダム及びBst型の作例を担当したプロモデラーの波佐本英夫は、記事中で「HJでこのキットを紹介できるのは嬉しい」と語っている。
  2. ^ 企画当事者の一人でもあったはずのバンダイが発行していた模型誌『B-CLUB』でも、当時連載していたガンダム漫画『Gの伝説』でEx-SガンダムやΖプラスを登場させた小林誠が単行本にて「編集者に『Sガンダムは描かないでくれ』と言われたが、無視して1ファンとして描き続けた」と記している。
  3. ^ 正確には少尉扱いの曹長で、MSパイロットに抜擢されるにあたって搭乗資格を得るために一時的に尉官の階級を得た。
  4. ^ カラバは地球上を活動範囲にしているため、作中では連邦正規兵からは地に足がつかないと行動できない奴とバカにされる傾向にあるという設定になっていた。
  5. ^ 幹部将校を育成するための教育機関で、入校者には士官として3年以上の軍務経験がなければならない。ヒースロウが新米少尉として最初に赴任した戦艦がブル・ランで、この時の艦長がエイノーであった。
  6. ^ しかし、その後も敵の繰り出す罠には最後まで引っ掛かってしまっていた。
  7. ^ 最初からマニングスやクレイのような熟練パイロットがテストパイロットに選ばれなかったのは、彼らの場合ではALICEを目覚めさせずに機体の性能を生かして勝ててしまうので、目覚めないか、あるいはパイロットに依存しっぱなしで教育にならないからである。
  8. ^ 小説『ガンダム・センチネル ALICEの懺悔』巻末対談より。なおオカマ云々については「男性である自分(=高橋)が描く以上、どうやってもオカマ(すなわち男が女を装い演じている様なもの)にならざるを得ない」という意味であり、それを性別を越えた存在に昇華させる意味でラストの菩薩的な描写へと繋がっている旨を、この対談で高橋は語っている。
  9. ^ 元々ゾディ・アックは欠陥MAであり、だからこそ本来連邦兵である彼らに見返りなしで譲渡されている。
  10. ^ この時点でニューディサイズの戦力は、隊員28名と五機のゼクに、中破した戦艦ブル・ランと、動くのがやっとのND第4突撃艦隊母艦巡洋艦アオバの2隻、そしてネオ・ジオンから譲渡されたMA運搬専用として武装のないムサイ級巡洋艦1隻に大型MAゾディ・アックだけであった。
  11. ^ 最初期の「センチネル」企画書ではゾシー・オフショウという名前だった。
  12. ^ ペンタ占拠時、クレイはこの地球降下による総司令部を奇襲する作戦からオフショーを離脱させるつもりでおり、ペンタに残す予定であった。視神経を患うオフショーが戦力にならないというより、むしろ彼をこれ以上クレイの「自分の戦争」に巻き込ませないための措置だと思われる。
  13. ^ この発言は本来、自身の悔悟とジョッシュを無用な争いに引き込んだことへの謝罪の意味をこめたものだったのだが、彼にそれが伝わることはなかった。
  14. ^ 最初期の「センチネル」企画書では重要なキャラクターとして位置付かれ、階級も元少佐だった。
  15. ^ 寝返りに成功したのは、艦隊各艦の艦長や上級士官の殆どがエイノーの高等士官学校校長時代の時の教え子であったことも大きい。事実、X分遣艦隊で寝返りを拒否して離脱したのはサラミス改級巡洋艦「バサデナ」「ダナン」のみであった(これにエイノーの判断で各艦の離艦希望者を乗せたコロンブス級輸送艦2隻が加わっている)。
  16. ^ モデルグラフィックス1988年5月号p15
  17. ^ なお、本作関連で「スプリッター迷彩」と呼ばれている配色だが、元はアメリカのイラストレーター「キース・フェリス」風の“分割”迷彩のことを指しており、連載当時はその名を冠して呼ばれていた。現在ではスプリッターという呼び名のほうが流通しており、実際キースフェリスパターンではなくなっている。一部で、「スプリンター(迷彩)」の呼び方の方が正しいのではないか、という意見が増加しているが、ワイバーンやリファイン版Ex-Sガンダムのカラーリングはキースフェリスパターンがモチーフとなっていて、これはいわゆるsplinterには含まれない。一方「スプリッター」というのも和製英語的で、ネイティブにはむしろsplit schemeなどといった方が通じる可能性がある。最近の作例はプロアマ問わず、キースフェリスパターンとは異なる単なる折線迷彩がほとんどで、これは英語圏で一般にsplinterに含まれるようだが、そのルーツにドイツの「splitter」迷彩があるため、特に軍事関係者の内には半ば外来語的にsplitterと呼ぶ人もいるようである。
  18. ^ オンラインでのプレイがさらに快適に! PS3版『機動戦士ガンダム EXVS.FB』のDLCについても開発者が語る - 2018年7月13日閲覧





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