カラマツ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/16 07:44 UTC 版)
グイマツとの雑種
アジア北方の湿地によく生えるカラマツ属樹木にグイマツという種がある[47]。雌親をグイマツ、雄親をカラマツとした雑種が両者の長所を受け継ぐことが分かり、苗木の特性の研究が進められてきた。カラマツは成長が速いが野ネズミの食害を受けやすい欠点があった。これに対しグイマツは野ネズミの食害は受けづらいが成長が遅い。カラマツとグイマツの一代雑種は、野ネズミの食害を受けにくく成長も速いとされている[47]。この雑種は野ネズミへの耐性向上だけでなく、過湿耐性の向上[39]、気象災害への耐性向上、樹形や旋回木理[48]も改善するという。このような点から自然に枯死する確率が低くなるので、今までより低密度の植栽が可能となり各種造林作業の省力化などが見込まれている。今後はコンテナ苗生産などとの連携も考えられている[49]。
この雑種の研究はカラマツ、グイマツともに天然分布しない北海道において特に研究が進んだ。同じような例はマツ属の一種ラジアータマツ(Pinus radiata)でも知られる。アメリカ原産のこのマツは原産地では品種改良もされず林業用の樹種としては見られていないが、移入先のニュージーランドでは徹底した品種改良の上で同国の主力の樹種として扱われている。
名前と分類
カラマツという名前は一説には中国(かつて唐という国があった)で描かれた針葉樹に似ているから唐松とされたという[10][20]。中国においてカラマツ属(Larix、現地名:落葉松属)樹木は東北部に分布するほか、形態的によく似ているがカラマツ属ではないイヌカラマツ(Pseudolarix amabilis、現地名:金銭松)が南東部から中部にかけて分布しているが、「唐で描かれた松」がどちらを指すのかはよく分かっていない。落葉松は当て字であるが冬に落葉するという生態的な特徴から来ており、前述のように中国名でもこう呼ばれている。学名の種小名kaempferiはエンゲルベルト・ケンペル(Engelbert Kämpfer、1651-1716)への献名である。
和名の語尾にマツと付くことからしばしば誤解されるが、アカマツ(Pinus densiflora)やゴヨウマツ(Pinus parviflora)が属するマツ属(学名:Pinus)と、カラマツが属するカラマツ属(Larix)とは、同じマツ科ではあるが別属で異なる[注 1]。葉の付き方が大きく異なり、またマツ属が常緑なのに対しカラマツ属は冬季に落葉する。球果の形状は両者似ているがマツ属の球果は鱗片に突起が発達する。
地方名もあり、富士山ではフジマツともいう[7]。
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参考:中国で金銭松と呼ばれるイヌカラマツ
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参考:イヌカラマツも黄葉し落葉する
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参考:マツ属の若い球果。鱗片に突起(茶色の部分)が発達する
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参考:トドマツ(マツ科モミ属)
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参考:エゾマツ(マツ科トウヒ属)
病害・食害
イギリスのデヴォンやコーンウォールなどで、エキビョウキンの一種であるカシ突然枯死病菌 Phytophthora ramorum によるカラマツの枯死が初めて発見された。この病原菌はブナ科樹木などに感染し、アメリカでは1995年以降に、この病原菌によるカシ類の突然死が発生して大きな問題となっている[50]。
日本では、北海道でカラマツの大規模造林が行われた際に、若齢カラマツに先枯病が蔓延し、その被害の出方も猛烈さを極めるほどであった[8]。先枯病を引き起こす原因は風で、やわらかい新梢が生育する途上で、強風にあって傷ができると、そこから病原菌となるカビの侵入によって引き起こされる[8]。そのための対策として、強風地域に植えることを避けて、防風帯を列状に設けてその間に植栽するということが行われた[8]。
苗木から幼齢木にかけては、動物による食害に遭いやすい。日本ではノネズミの被害が著しかった時期があり、「カラマツ造林は、ネズミのエサを山に植えているようなもの。」という林家もいた。今日では、必要に応じて殺鼠剤の利用が行われている[46]。
注釈
- ^ トドマツ(Abies sachalinensis)とエゾマツ(Picea jezoensis)という和名を持つ樹木もあるが、それぞれモミ属(Abies)とトウヒ属(Picea)に属しマツでもカラマツでもない。
出典
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