オートマチックトランスミッションフルード ATFの交換

オートマチックトランスミッションフルード

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/13 15:33 UTC 版)

ATFの交換

ATFの補給

ATFは今日では変質しにくい化学合成油が主体であり、エンジンオイルのようにブローバイが混入せず、ギアオイルのように極端な極圧が掛かることも少ないため、これらの油脂ほど急速に酸化やせん断による劣化をする事は稀である。但しATのトルクコンバーターのスリップなどによる熱負荷は極めて大きく、ATF冷却用の水冷式オイルクーラーがラジエータータンク内に装備されるのが一般的だが、熱負荷により次第に劣化する。ATのオイルパン内部には遊離した鉄粉をキャッチする強力なマグネットが置かれている場合も多い。

ATFも新しい方が性能は良いが、長い間無交換だったATFを交換すると、清浄分散能が高いために壁面についたスラッジが遊離してバルブボディーなどの狭い通路に詰まる可能性がある。従ってATF交換とともにフィルターの交換やオイルパンの清掃などを行うのが望ましい。あるいは一度にスラッジが遊離するのを防ぐために必要量の半分程度を新しいATFに交換することを複数回行い、次第に新油の割合を高める方法がある。

メーカーによってはその車両の寿命が尽きるまで無交換でもよいとしている例もあるが、それは新しいATFに交換したときにスラッジが遊離してトラブルを起こすことを考えての方針である。熱負荷による劣化、多板クラッチやブレーキバンド摩耗、あるいはギアやベアリングなど金属部品の摩耗によるスラッジの堆積、それに伴うオイルフィルターの詰まり等も発生するため、下記の事項に注意したうえで、やはり数万キロ程度の適度な間隔で交換することが望ましい。

  • ATFの状態を判断する基準は、ATFの色調および走行距離である。通常は透明で明るい色(赤系であればおおよそ赤ワイン色)だが消耗するにつれて黒くなり透明度が低下する。
  • ATの構造上、一度の作業でATFをすべて交換することは極めて難しい。特にオイルパンを外したりドレーンボルトから排出する程度では、大量のATFがトルクコンバーター内に残っている。 それ故にライン充填と異なるATFを使用することは推奨されていない。
  • ATFチェンジャーは所謂圧送方式による交換をする場合、オイルパン側に一切アクセスせず直接オイル配管に接続して大半のATFを入れ替えられるのが利点であるが、この際の外部から油圧でAT内、特にオイルパン内に沈殿したスラッジが浮き上がってATに不具合を起こす可能性は指摘されている。
  • 一方でチェンジャーを用いエンジンをアイドリングさせレベルゲージ穴から古いATFを吸い取り新しいATFを注入を繰り返す方式では圧送方式ほどはスラッジが浮きにくいものの、新しいATFを注入するたび循環させる時間を要することと新しいATFの比率を高めるために必要量以上のATFを必要とする欠点がある。
  • ATFを交換する場合には、同時にバルブボディーのフィルター、オイルパンのスラッジ清掃や、マグネットからの鉄粉除去を行うことが望ましい。
  • オイルパン内に明確な非金属性の破片や粉じんが見られる場合、あるいはATFが極端に黒ずみ、異臭を放っているような場合には、ATFのみの交換で終わらせるのではなく、ATのリビルド品への交換やオーバーホールなども検討すべきである。

なお、ATのロックアップ多用化によって油圧による劣化よりも潤滑による劣化の方が割合は大きくなった。これはロックアップすることでトルクコンバーターによる増幅作用が働かないことによる。ロックアップ領域の増加に伴いクラッチやブレーキバンドの摩耗粉も比例して増えていく傾向にある。一方で新しいAT用のATFでは低粘度化が進み負荷に対する劣化はしやすくなっているため、ATFとしてはまだ使えるもののATの変速時の衝動などの感覚的な劣化を感じるようになるまでの距離は短くなる傾向にある。そのため低粘度ATFを使用する車種の増加に伴いアフターマーケットにおいては低粘度でありながら高粘度指数を持つと謳うATFや添加剤が普及しつつある。


脚注

  1. ^ 当初は共用されるのが主流であったが、後年ATFに類似した専用油が設定され、パワーステアリングフルード(PSF)と呼ばれる。
  2. ^ なお、FN4A-EL型はフォードでの型式は4F27E型であるが、マツダのATF M-VはMercon系準拠ではないのに対し、フォードではMercon系を指定している。またATF M-Vの方がMercon系より低温時の粘度やアンチジャダー性能が高い。
  3. ^ 極端な例としては航空機用作動油を使用するいすゞ・NAVi5など。ただしNAVi5の場合は一般的なATに多いトルクコンバータ式ではなくクラッチを用いた方式である。
  4. ^ 主に多板クラッチやブレーキバンドの摩耗限界や損傷などで、通常よりも大きな摩擦損失が発生しているなど。

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